ししとうといえば、夏野菜の代表格。さっと焼くだけでもおいしく、栄養満点なので食卓にのぼる機会も多いことでしょう。でも、ちょっとご用心。ししとうは"食べるロシアンルーレット"ともいわれ、時に猛烈に辛いものにぶち当たって口の中が大火事になることも……。

辛いものと辛くないものを見分ける方法ってあるのでしょうか? シニア野菜ソムリエとして講演やセミナーなどで活躍するKAORUさんに聞いてみました。

水分不足など生育過程のストレスがししとうを辛くする

――ししとうを食べると稀に猛烈に辛いものに出くわして、口の中が火の海になることがあります。なぜ、辛いもの辛くないものがあるのでしょうか?

「ししとうは唐辛子の仲間ですが、辛みの出にくい、甘く食べられる種類の野菜です。それでも辛み成分がゼロというわけではなく、生育の過程でストレスがかかると、それが原因で辛み成分が増えてしまうことがあります。こうして時に『激辛ししとう』が誕生するというわけです」

――ししとうのストレスってなんですか?

「一番は水不足ですね。日照りが続いたりして十分な水分が得られないと、ししとうは大きなストレスを感じて、辛み成分を増やしてしまうと言われています。他にも熱帯夜が続いたり、肥料が与えられず極度に栄養不足に陥ったりした場合などにも、ししとうにストレスがかかるとされます。

こうした辛み=ストレス説はきちんとデータで実証されたわけではないのですが、農家の方などの経験から今ではほぼ定説化しています」

――なるほど。では、そのストレスで激辛になったししとうですが、それは食べてみないと分からないのでしょうか? 見た目では分からないものですか?

「見た目でも、ある程度の識別はできます。強いストレスを受けたししとうは、辛みを増すだけではなく、形状にも変化が生じることが多いんです。いびつだったり、不自然に細長かったりするししとうは要注意。辛みが強い可能性が高いです。

でも、農家の収穫時や流通の過程でそうしたししとうは排除されますから、市場に出回っている商品なら、まず安心して食べて大丈夫だと思います。農家が袋詰めで直売しているものとかには、ひょっとしたら辛みの強いものが混じっていることがあるかもしれません」

――そんなときは、さきほど教えていただいたように、いびつだったり細長すぎるものに注意すればよいわけですね。

「そうですね。それと、家庭菜園やプランターで自家栽培したししとうも要注意です。農業のプロではないので、知らず知らずストレスをかけてしまっている可能性もあるので、調理する前にちょっと味を確かめてみるとよいですね」

栄養満点で夏バテ予防に最適。でも、加熱による破裂にご用心

――でも、ししとうの軽い「ピリッ」は、大人の味でもありますよね。

「そうですね、辛みの成分であるカプサイシンには、新陳代謝を促し脂肪を燃焼させる働きがありますので、適度な辛さだったら敵視する必要はないと思います。

ししとうには細胞の老化を防ぐカロテンやビタミンCなどの栄養素も豊富に含まれています。ビタミンCは免疫機能を高めて疲労を回復させる働きをしますので、夏バテ対策にもぴったり。まるごと食べられるので調理に手間がかからず、無駄がないのもいいですよね」

――辛さに注意すれば、いいとこだらけの野菜なんですね。

「はい、ただ注意すべき点がひとつだけありますよ」

――注意すべきこと……。それはなんでしょうか?

「ししとうは小さいので、まるごと食べることが多いですよね。その場合、炒めたり揚げたりすると、パーンと破裂して火傷する危険があるんです。熱せられてししとうの中の空気が膨張し破裂するのです。なので、まるごとの場合は、軽く切れ目を入れて調理することをおすすめします。

それから、ししとうは果肉が薄いのであまり日持ちがしません。できるだけ早めにいただくようにしてください」

――それは知りませんでした、注意します。ところで、ししとうというと、一般的には天ぷらにしたりベーコン巻きにしたりといった食べ方がポピュラーですが、KAORUさんはどんな食べ方がおすすめですか? オリジナルなレシピなどあれば、ぜひご紹介ください。

「私のおすすめはししとうの肉味噌炒めですね。ししとうを細かく刻んでひき肉と一緒に炒め、お味噌で味付けをするだけ。ご飯にはもちろんですが、冷や奴にトッピングするもよし、素麺(そうめん)やうどんに絡めるのもよし、いろいろな活用ができます。作り置きしておくととても重宝しますよ。

それから夏野菜のカレーに加えたり、刻んでチヂミに混ぜ込んだりもいいですね。子どもも喜んで食べてくれるはずですよ。

繰り返しになりますが、ししとうは栄養満点の夏野菜です。旬のこの時期にどんどん召し上がっていただきたいものです」

●取材協力
野菜ソムリエKAORUさん
日本野菜ソムリエ協会