「マヌルネコ」という動物をご存じだろうか? イランから中央アジア、モンゴルなどの荒野に棲息する小型の野生ネコで、「モウコヤマネコ」の別名を持つワイルドなにゃんこだ。先ごろ、埼玉県にある「こども動物自然公園」でこのマヌルネコのベビーが誕生したことで、一躍注目が集まっている。
「マヌル」とは、モンゴル語で「小さいヤマネコ」という意味だという。大きさはイエネコ程度で、他のネコ科動物に比べて足が短く、ずんぐりした印象だが、知性を感じさせる神秘的な面持ちには思わず息を飲んでしまう。
事実、こども動物自然公園によると、マヌルネコに詳しい研究者が少なく、生態などに関しても不明な点が多いため、ミステリアスな猫だといわれているのだそう。
国内での飼育園館も少なく、同園を含めて4館のみ(他は上野動物園、名古屋・東山動植物園、神戸市立王子動植物園)。
「当園では、平成16年12月に上野動物園から1ペアお借りして飼育を開始しました。その後、平成19年にオランダの動物園からさらに1ペアを譲り受け、繁殖を目指してきました。平成24年には母親の育児放棄によって人工哺育をおこなうことになり、1頭が育っています」とのことだ。
俊敏な3頭とのんびり屋の1頭
そして、今年4月18日にはめでたく4頭のニューベビーが誕生した。しかし、育児放棄の前例があったため、動物園側は、母親の神経を刺激しないようにそっと子どもたちの成長を見守り続けた。その後、ようやく赤ちゃんたちが巣箱から出て自力でごはんを食べるようになったことを確認し、6月4日から一般公開することに決めたのだという。
4頭の性別は、オス2頭とメス2頭。名前はまだ決まっていないという。うち3頭は用心深い性格で、飼育係が舎内に入るとすぐに巣箱に隠れるが、1頭だけはボーっとしていていつも逃げ遅れているため、のんびり屋な性格だと踏んでいるのだそう。
母親のタビー(現在6才。平成23年に上野動物園から来園)は、現在は落ち着いていて、子どもたちの面倒をよくみているというが、時には自分だけ巣箱に戻って休憩することもあるのだとか。父親のオスカー(オランダ・ロッテルダム動物園出身の8才)は温和な性格で、飼育係もさほど心の距離は感じないとのことだ。
マヌルネコの展示には、猫好きもカメラ好きもこぞって集まってくる!
赤ちゃんたちがお披露目されてからというもの、マヌルネコの展示スペースの前には老若男女さまざまな人が訪れるという。同園によれば、「かなり本格的なカメラを抱えた大人が長時間張り付いていたこともあった」とのこと。また、4頭がじゃれあう姿を見た人たちは誰しも「かわいい!」と連呼せずにはいられないのだとか。
赤ちゃんたちは来園者を気にしている様子はないというが、飼育係がのぞきにいくと、母親が威嚇してくることもあるのだとか。
「ネコだけに気配を消すのが上手なため、舎内に隠れるとどこにいるのか分からなくなることもあるんですよ。母ネコが妊娠中だったので、巣箱の様子は気にしていたのですが、赤ちゃんを産んでいても巣箱の中に気配がなかったので、開けたところ親子を発見して驚きました。もちろん、すぐに蓋を閉めましたけどね」(同園)。
また、同動物園によると、園内ではその他にも様々な愛らしい動物たちがお出迎えしてくれるという。「うちの動物園の魅力は、野生動物たちに手を伸ばせそうな距離まで近づけるところです。コアラ、オオカンガルー、カピバラ、ペンギン、マーラなど、フォトジェニックな動物がたくさんいるので、お友達や家族とぜひ遊びにきてください」(同園)。
加えて、ヤギやウサギ、モルモット、ミニブタなどの小動物とのふれあい体験や搾乳体験、ポニーの乗馬などといった魅力的な体験がそろっている点も魅力。愛らしい動物たちと存分に触れ合えば、心身ともにリフレッシュできるに違いない。
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写真提供:埼玉県こども動物自然公園