カジノ運営を合法化するための、日本版カジノ法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)の審議入りは、早くても6月18日となった。推進派は、今国会でも成立と意気込んでいるが、反対派との交渉に、時間がかかっている。

カジノ解禁に期待する企業はたくさんある。コナミはその筆頭だ。今国会で法案成立になれば、国内のカジノ施設への投資を目的とした子会社を設立すると発表している。

かつて、日本ではパチンコ・パチスロ産業が巨大な成長産業であったが、既にパチンコ人口はピークアウトし、徐々に縮小を始めている。パチンコ・パチスロ機器を開発・生産してきた企業群は、収益の多様化を図らねばならなくなっている。

そうした企業に、カジノ解禁は大きなビジネス機会と映る。カジノができれば、パチンコ・パチスロに入ってこなかったファミリー層の取り込みに加え、外国人観光客の呼び込みにも効果が見込まれる。コナミも、パチンコ機器の開発・製造事業の成熟化にともない、カジノ事業への展開を考えるようになった。

ただし、パチンコ機器を作っていたから、カジノ機器も作れるというほど、ことは単純ではない。カジノ機器に求められる基本的な仕組みや性能は、パチンコ機器よりもはるかに難しい。新事業参入を始めるのと同等の困難が伴う。

パチンコ機器は一発当たると、全国に同じ機器を大量に出荷できるが、日本で始まるカジノ向けに機器を出荷するだけでは、多品種少量生産となり、十分に開発費を回収できないリスクも伴う。

コナミは、早くから海外向けのカジノ機器の開発・生産を行い、ノウハウを積んできた。既に、全世界で365のカジノライセンスを取得している。日本でカジノが解禁されれば、機器を出荷するだけでなく、自らカジノ事業の運営主体となることまで視野に入れている。準備万端ととのえ、カジノの実現を待つ状況だ。

安倍首相は、観光立国を目指す成長戦略の1つとして、カジノ解禁に積極的だ。日本株に投資している外国人投資家も、規制緩和による成長を目指す目玉政策としてカジノに期待している。

ただし、反対派の意見にも耳を傾ける必要がある。ギャンブル依存症が広がらないか、カジノ周辺の住環境が悪化しないかなど、懸念されることは多々ある。東京都は、かつてカジノ特区を招致することにきわめて積極的だった。カジノ特区実現を、観光客呼び込みと東京再開発推進の目玉とする考えであった。

ところが、最近は東京都のカジノ誘致熱は、やや低下している。2020年のオリンピック招致が実現し、オリンピックを目指して東京再開発を進めることができるようになった、という事情もある。住環境悪化への懸念から都民にあまり評判がよくなかったことも影響している。

果たして、日本でのカジノは実現するか。今後の展開が注目される。

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執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。