内閣府が15日発表した1-3月実質GDP(速報値)は、前期比年率で5.9%増と、大方のエコノミストの予想(4%台の成長)を大幅に上回る数字だった。そんなに景気がよくてよかった、と喜べない面がある。

4月1日の消費税引き上げ前に、自動車・家電などの販売が伸びたことがわかっている。個人消費は前期比年率で2.1%増。これは、ほぼ事前の予想通りだった。

予想以上に強かったのは、設備投資だ。前期比年率で4.9%増と急伸している。いよいよ国内の設備投資も本格回復してきた、と単純に喜ぶことはできない。消費税引き上げ前の「駆け込み設備投資」が含まれている可能性があるからだ。

増税前の駆け込みというと、家電量販店で消費者が買い物する姿など、消費の押し上げばかりが話題にされる。ところが、現実には設備投資にも駆け込みがある。「消費」税は消費者だけでなく、モノやサービスを購入するすべての人にかかる「付加価値税」であるからだ。企業は、4-6月に設備投資する予定がはっきりしていれば、1-3月に前倒しして実施した方が消費税は安くて済む。そうは言っても、景気が悪ければ前倒しの設備投資をするゆとりなどないが、今回は景気が上向きで企業業績も伸びていたので、設備投資を前倒しするゆとりがあったと考えられる。

心配されるのは、4-6月のGDPの落ち込みだ。1-3月が強すぎた分、4-6月の減少が大きくなる可能性もある。4-6月は、増税前の駆け込み消費の反動で、消費が落ち込むことがわかっている。ただし、これまでにわかっている小売データから4月の消費の落ち込みは総じて想定範囲内で、そんなに心配することはない。ところが、設備投資の落ち込みが予想以上に大きくなる可能性が出てきた。

今回発表された1-3月GDPは速報値である。設備投資の伸びについてはまだ正確なデータとは言えない。6月に発表される改定値で修正される可能性もあるので、改定値も注目される。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。