鮮度抜群な魚介類が水揚げされる、北のシーフードパラダイス・釧路漁港。この漁港近くにあるのが、北海道三大市場のひとつと言われる「釧路和商市場」だ。釧路市民のおなかを満たしてきた市場は創業60周年を迎え、今も鮮魚店を中心に惣菜店や青果店など60以上の店舗がひしめき合っている。この和商市場の名物が「勝手丼」だ。

有名な北海道は和商市場の「勝手丼」をレポート(写真はサンプルイメージ)

勝手丼とは、ご飯の上に自分の好きな刺し身のネタを乗せて海鮮丼にできるというシステム。それにしてもこのネーミング、なんと魅惑的な響きだろうか。魚好きにはたまらない魅力に誘われて、実際に"盛り体験"をしてみることにした。

まずはご飯をゲット!

勝手丼の作成フローは、まず惣菜店や飲食店でご飯を盛った丼をもらい、それから鮮魚店などを回って好きな具材をトッピングしてもらう。誤解しちゃいけないのは、そのシステムは市場の中にある店すべてで通用する訳じゃないということ。下調べした情報では、ご飯を買える店は5店。具材の買える店は7店だった。

新鮮な魚介が整然と並ぶ、魅惑的な空間が広がっている

まずは勝手丼のベースとなるご飯をゲットしよう。向かったのは、惣菜店の「岩崎惣菜食品」。天ぷらやトンカツ、スパゲティなどの各種惣菜を取り扱っている。

「勝手丼のご飯かい? サイズはいろいろあるよ。小盛りは120円で一番大盛りは300円と4種類。どれにするかい?」と教えてくれたのは店主の岩崎幸夫さん。聞けば、女性は200円、男性は250円のオーダーが多いそう。というわけで250円のものを注文すると、「ハイよ!」 とご飯を盛ってくれた。ここからが勝手丼ゲームの始まりだ。

高級魚も1切れずつ盛っていく

ハンターのように具材という獲物を求め、市場という荒野をゆっくりと歩く。そもそもこの勝手丼、おもしろいことに、北海道をツーリング中の貧乏ライダーを哀れんだ市場の店主が、ご飯だけ買ってこさせて海産物を上に載せてあげたことが始まりだという。イージー・ライダーのようなバイカーが丼を持ってウロウロするなんておもしろいし、店主のアイデアにも愛がこもっている。

目をつけた店は、刺身専門店の「矢部商店」。「何がオススメでしょうか」と聞くと、「釧路で揚がったハッカク(トクビレ)なんてどうだい? 刺し身2切れで150円だよ」と店主の矢部守さん。何だこのでっかい背びれ!

そして「メヌケ、 食べるかい? 深海魚でキンキをでっかくしたような魚だ」。1切れ200円とは少し高いような気もするがそれもそのはず。「高級魚だから、東京の築地に 行ったら1本2~3万円するもんだよ」と。じゃあそいつももらっとこう。「うちは極力、冷凍もんは扱ってないからね。うまいよ!」。

もう1軒回ろうかな。そう見回して目についたのは塩干しを多く取り扱う「さとむら」だ。ココはとにかく珍品やら珍味やらが豊富な店だ。

釧路産の高級鮭の「トキシラズ」は、春から夏にかけてとれる貴重な鮭で1切れ200円。「トキシラズは幻の魚。うちはシーズン中に急速冷凍して、そのままの鮮度で出してるよ」と店主の鈴木政司さん。「羅臼産のブドウエビも幻だね。そら、ブドウみたいな色してるだろ? これがうまいんだ」。ちなみに1匹800円だ。

そして、「ああ、もうひとつあった幻シリーズ。鮭のケイジ(1切れ500円)もいいよ」と、次から次に登場する幻たち!

「さとむら」のブースも目だっていた

お味噌汁もお忘れなく

その他、釧路のししゃもやド定番のウニ、そして大トロなども盛ってもらい、ご飯の上をてんこ盛りにして再び岩崎商店に戻る。やっぱり味噌汁がほしくなる。「味噌汁は、カニ、ワカメ、ほうれん草、とろろの4種類。どれも150円だけど、ご飯を買ってくれたから100円だよ」。

「だいたい、みんな7~10種類くらいの具材を載せてくね。外国人のお客さんも増えたねえ」と岩崎さん。上からタレをかけてもらい一気にかぶりつく。刺し身はどれも身がぷりっぷりで弾力がすごい。どれも味が濃いぞ!

自分だけの海鮮丼、その名も「勝手丼」なのだ!(写真はサンプルイメージ)

何よりも自分で選んだネタだってのがいい。しかも、予算も平均1,500円程度ととってもリーゾナブル。釧路に来たら勝手丼はぜひ食べていただきたい!!

※本文中の情報・価格は2014年3月取材時のもの。海鮮の種類や価格は時期によっても変動するため、必ず事前にお問い合わせください