魚などに多く含まれる成分「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と「EPA(エイコサペンタエン酸)」をたくさん摂取する習慣が、脳卒中や心疾患など心血管疾患の死亡リスクを低減させることが分った。
これは2014年2月に報告された最新の研究成果で明らかになったもので、厚生労働省の研究班が1980年から24年間にわたり約9,000人を対象に追跡調査を行った結果、魚をたくさん食べてDHAとEPAを多く摂取している人には、心疾患や脳卒中など心血管疾患の死亡リスクが有意に低下する傾向がみられたという。
現在、日本では40歳以上を対象とした「特定健康診査(特定健診)」いわゆる"メタボ健診"が行われており、『特定健診=肥満の診断』というイメージが強くなっているが、特定検診の本来の目的としては、メタボリックシンドロームを起点とする心疾患や脳卒中、糖尿病の合併症などを未然に予防することがあるのだという。この心疾患や脳卒中の原因となる動脈硬化を引き起こすのが、内臓脂肪の蓄積による肥満をベースとした高血圧、高血糖、脂質異常だといい、これらの因子が1つ増えると、心疾患を発症する危険性が大幅に高まることが知られている。これらの疾病に対して、日本人の食生活に深く根付いた"魚"に含まれるDHAとEPAの摂取が予防的に働く可能性があることが、先述の研究成果により明らかにされたのだ。
その一方でDHAとEPAは酸化を起こしやすいという弱点もあるため、抗酸化作用を持つ成分と一緒に摂取することが不可欠とも指摘されている。抗酸化作用を持つ代表的な成分には、ゴマに含まれるセサミンやワインのアントシアニンといったポリフェノールをはじめ、ビタミンCやE、βカロテンなどのビタミン、亜鉛やセレンなどのミネラルなどが挙げられるといい、これらを上手く組み合わせた食生活が予防のカギとなる。
なお、DHAとEPAの重要性を広めるDHA・EPA協議会は、両成分を効率よく摂取できる魚料理の例として、料理研究家の浜内千波氏による「簡単お刺身チラシ」と「ツナの春サラダ」の2品を挙げている。「簡単お刺身チラシ」は刺身の盛り合わせとゴマを豊富に取り入れた料理で、きゅうりのしゃきしゃき感とさっぱり感が楽しめるといい、「ツナの春サラダ」はオレンジのビタミンCや人参のβカロテンに加え、ツナ缶のオイルも使うことで、DHAとEPAをさらに多く摂ることができるという。