前回紹介した通り、大学卒業後、大手電機メーカーの一般事務として入社したA子さんは5年間勤務したのち大学時代の先輩と結婚し、1年間の産前産後休業・育児休業を経て、復帰した。しかし、育休あけに配属された営業企画部の上司は、日本には「男女雇用機会均等法」という法律があることを知らないのでは? と思うような男性。時短勤務するA子さんは戦力外とみなされ、部署内の定期会議などにも呼ばれず、電話番。職場で頼りになるのは、同年代で独身のB子さんしかいなかったという。
同僚B子の本当の気持ち
仕事と育児の両立は、思った以上に大変だった。例えば、これまでは自分の体調のみを管理すれば良かったが、仕事が忙しいときを狙ったかのように「子供が熱を出した」と保育所から電話がかかってくる。そのときは、恐縮しなからも有休を利用し、会社をあとにした。
A子さんは、「子育てをしながら正社員として働くのはずうずうしいのか」「自分は会社のお荷物なのか」と迷ったこともあったという。しかし、協力してくれている家族や、部署の人たちのためにも仕事を継続することで恩返しをしたいと考えていた。
また、子供の寝顔や笑顔に励まされることもたくさんあったという。「保育所にお迎えに行ったときに、自分を見つけるとうれしそうに駆け寄ってくる子供の顔が一番の励みです。また、夫も3日間の育休を取得し、『1日、ゆっくり外出してきたら? 』と私を休ませてくれました」。
職場復帰から1年がたとうとしたとき、隣席でフォローしてくれていたBさんが退社することになった。理由は、結婚したあとすぐに出産を考えているので、専業主婦になろうと思ったからとのこと。A子さんは、育休を利用して仕事を継続したらとすすめた。するとBさんは浮かない顔つきになりポツリと、「私は、会社や他人に迷惑をかけるような子育てはしたくない」とA子さんに向けて言ったという。忙しいときも笑顔でフォローしてくれたBさんが内心そんなふうに感じていたのかと思うと、ショックでトイレで泣いてしまったそうだ。
働くお母さんと言えば聞こえはいいが、世の中みんながワーキングママに好意的なわけではない。A子さんは次のように考える。「自分も子育てを盾に、業務を軽くしてもらうことを当たり前のように考えていたのは事実。子供が幼いときは、自分の労働時間が制限されることは仕方がないと思っています。でも、仕事を継続したいし、それが生きがいにもなってきています。今は、自分にできる最大限の仕事は何かを考え、ワーキングママとして頑張っていこうと考えています」。
育児、仕事、どちらも重要。たとえ制度を上手に活用したとしても、他人に甘え過ぎてはいけない。とはいえ、無理も禁物だ。いろいろな考え方があることを理解し、自分の軸をしっかり持ちながら、一歩ずつ前進していくことが大切なのではと、著者は考える。
(文: エフスタイル 青山みなみ)