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来年のメジャー挑戦が正式に認められた東北楽天ゴールデンイーグルス・田中将大選手。2013年シーズンに24勝無敗という驚異的な数字を残した右腕は、メジャー1年目でどれだけ活躍できるのか。日本でのデータをもとに予想してみた。

セイバー・メトリクスとは

データはNPBの公式サイトで紹介されている、田中選手と現テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有選手の日本での成績(共に7年間)を用いた。そのデータをもとに、映画化もされた書籍「マネー・ボール」でも紹介された「セイバー・メトリクス」の観点から、田中選手の来シーズンの活躍ぶりを予想してみた。

セイバー・メトリクスとは、安打数や四球などの数字を統計にかけた分析手法で、オークランド・アスレチックスがその手法を用いて強豪球団へと変貌(へんぼう)をとげたことから、メジャーリーグでも重要視されている。なお、データ以外のすべての要素は無視しているため、あくまで一つの目安としてもらいたい。

安定感

投手の能力を表すセイバー・メトリクスは複数あるが、今回は比較がしやすくかつ理解しやすい3つの数値を用いてみる。なお数値は小数点第2を四捨五入している。

まずは、最もポピュラーなWHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)を調べてみた。この数値は「1イニングに何人のランナーを出塁させているか」を表している。数値が低い方がより失点を防げることを意味しており、安定したゲーム作りに結びつきやすい。

導くための数式は

(被安打+与四球)/投球回

WHIPの数値を見てみると、ダルビッシュ選手は7年間の通算で0.98、田中選手は1.11だった。参考数値として、今年WHIPが1.00を下回ったのは、田中選手(0.94)とセ・リーグの最優秀防御率のタイトルを獲得した広島・前田健太選手(0.96)のみ。そのため、1.00を下回ると「球界を代表する投手」と評してもよさそうだ。ちなみに、メジャー移籍直前の3年間の成績では、ダルビッシュ選手が0.91で田中選手は0.95となっている。

粘り強さ

次にLOB(Left On Base)%を算出してみた。この数値は「出塁させたランナーをホームに帰さない割合」を意味する。この数値が高いほど、「走者は出すものの、得点は許さなかった」という、投手としての粘り強さを意味することになる。

導くための数式は

(安打+与四死球-得点)/(安打+与四死球-1.4×本塁打)

LOBの数値を見てみると、ダルビッシュ選手は通算で81.2%、田中選手は78.8%だった。ただ、今シーズンに限ってみれば、田中選手は86.3%と高い数字を残しており、広島の前田選手が81.8%だったことを見ても、今シーズンの田中選手が突出していることがわかる。移籍直前の3年間の成績では、ダルビッシュ選手が82%、田中選手が84%となっている。

総合力

最後にK/BB(Strikeout to walk ratio)について調べてみた。この数値は「四球1つを出すまでに、何個の三振を奪ったか」を意味し、数値が高いほど「制球が良く、三振を奪いやすい」と評価されることになる。三振と四球は、味方に左右される勝利数や防御率と異なり、投手の能力に直結する割合がかなり高いために投手の総合力を示すとも言われている。

導くための数式は

三振/与四球

K/BBの数値を見てるみと、ダルビッシュ選手は通算で3.75、田中選手は4.5だった。一流投手の目安は3.5とされており、2人ともそれをクリアしていることがわかる。移籍直前の3年間の成績では、ダルビッシュ選手が5.2の一方で、田中選手が7.6と非常に高い数字となっている。

なお、2人の日本での7年間の主な数字は以下の通り。

ダルビッシュ有

勝敗数:93勝38敗/ 投球回数:1268と1/3/被安打:916 /四球(敬遠除く):333 / 奪三振:1250/防御率:1.99

田中将大

勝敗数:99勝35敗/ 投球回数:1315/被安打:1082 /四球(敬遠除く):275 / 奪三振:1238/防御率:2.30

ダルビッシュ級の活躍?

あくまでも数字とはいえ、メジャー挑戦直前の3年間のダルビッシュ選手と田中選手は、失点を防ぐための目安となるWHIPとLOB率がほとんど変わらない数字だった。上述のようにこの3つ以外にも投手の能力を表すセイバー・メトリクスはあるが、今回の3つの指標に限定してみれば、田中選手にはメジャー1年目からダルビッシュ選手と同程度の活躍(16勝9敗、防御率3.90)が期待できるのではないだろうか。