東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大選手が12月17日、新ポスティングシステム(入札制度)を用いてのメジャー挑戦を正式に表明した。NPBとMLBが交渉を重ねた末に決まった新制度は、旧ポスティングシステムとどこが違うのだろうか。
新ポスティングシステムの概要は
日米間で新たなポスティングシステムが締結された17日、田中選手は来シーズンのメジャー挑戦の意向を表明した。ポスティングを認めるかどうかは楽天球団が判断することになるため、球団サイドが「NO」を突きつければ、来シーズンも田中選手は日本でプレーすることになる。
楽天が田中選手のメジャー移籍を認めるかどうかの判断材料となるのが、今回日米で合意した新ポスティングシステムの内容だ。概要は以下の通り。
(1)MLBからNPBへの譲渡金は上限2,000万ドル(約20億円)とする
(2)交渉期間は公示翌日から30日間で、譲渡金を支払う意思がある全MLB球団が交渉可能
(3)譲渡金は分割で支払う
(4)申請期間は11月1日から2月1日
(5)新制度の有効期間は3年間
選手のメリットは
選手側からすれば、(2)が最大のメリットとなる。旧制度では、最も高い入札金を支払う意思を示した球団のみが該当選手と独占交渉をすることができ、選手には他の球団と交渉する余地がなかった。そのため、「東海岸よりも暖かい西海岸の球団がいい」「今いる選手のバックアップ要員ではなく、レギュラーを確約してくれる球団がいい」などの選手の希望が通らない可能性もあった。
だが、新制度では獲得意思を示した全球団と交渉が可能になるため、複数の球団が獲得に名乗りをあげた場合、選手は最も自分の希望に合った球団を選ぶことが可能となる。いわば、「移籍金付きのフリーエージェント制」のような形になった。
楽天側にはデメリットか
一方で、選手を保有する球団側には(1)がネックとなる。旧制度にはなかった入札金額の上限が設定されてしまったからだ。
過去には、2006年にボストン・レッドソックスが松坂大輔選手との交渉権を獲得するのに5,111万ドル(当時レートで約60億円)を投資した。2011年にダルビッシュ有選手がテキサス・レンジャーズに移籍を決めた際の入札金額は、5,170万ドル(当時レートで約40億円)と報じられていた。MLB側には、この莫大(ばくだい)な入札金額を少しでも抑えたいとの思いがあった。
田中選手は、順調にいけば2015年には海外FA権を取得する。すなわち、新ポスティングシステムを行使しなければ、あと2年は日本でプレーすることになる。今や球界を代表する選手となった田中選手を観るため、球場に足を運ぶファンの数は計り知れない。その2年間に田中選手が楽天にもたらす金銭的価値はどれだけになるだろうか。
先ごろ、ダルビッシュ選手が「ポスティング20億で合意なら楽天は田中出せないですよね。。」とツイートしたように、楽天は田中選手がもたらす"無形の価値"も踏まえた上で、解答を出す必要があるといえそうだ。