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今季J2で3位~6位に入った4チームがトーナメントでしのぎを削る、J1昇格プレーオフ。12月8日(日)の15時半から国立競技場で行われる決勝には、3位の京都サンガF.C.と、4位の徳島ヴォルティスが名乗りを上げた。

J2優勝を果たしたガンバ大阪、2位のヴィッセル神戸の自動昇格はすでに決まっており、このプレーオフは残り1つの昇格の椅子を争うサバイバル・マッチだ。京都が勝てば4年ぶりのJ1昇格。徳島が勝った場合は、史上初となる四国のJ1クラブが誕生する。

実はこのプレーオフの試合、普段のサッカーにはあまり見られないルールが設定されており、一つの見どころになっている。それは、90分を戦って引き分けに終わった場合、リーグ戦上位である京都が勝者になるというルールだ。つまり徳島がJ1に上がるためには、引き分けではダメ。勝つしかない。

ちょっと聞くと、「京都がめちゃくちゃ有利じゃん!」と思うかもしれない。たしかにその通り。サッカーはロースコアのスポーツなので、そもそも引き分けが多い。引き分けでも勝ち進めるのなら圧倒的に有利なのだが、ところが、実は去年のプレーオフでは、6位の大分トリニータが準決勝・決勝と、勝つしかない2つの試合で2連勝を上げ、見事な下克上でJ1昇格を決めている。

「勝つしかない」という状況は、突き進むしかないので意外とシンプル。「引き分けでもOK」と言われると、人はリスクを冒しづらくなったり、メンタルが守りに入ったり、なかなか試合運びが複雑になってくるのだ。

そういう意味で、今回ちょっとマネージメントが難しくなるのは京都だろう。指揮を執るのは、南アフリカワールドカップでベスト16に輝いた岡田ジャパンの元ヘッドコーチ、大木武監督。ポンポンとリズミカルにつながる速いパスワークと、素早い攻守の切り替えを武器に、攻撃的でエンターテイメント性に満ちたサッカーを目指している。"ロマン派"の監督と言えるかもしれない。

ただ、それだけにプレーオフのようなノックアウト戦でも"京都らしさ"という鎖をつながれてしまうところもある。たとえば準決勝のV・ファーレン長崎戦では、相手の勢いに押されて持ち前のパスワークが影を潜め、GKオ スンフンの好守にも助けられながらの渋い0-0で決勝へ進出。引き分けの優位性が生きたわけだが、試合後には「いつもの京都らしいサッカーではなかったよね」という評価がチクチクと刺さってくる。

なんだかんだ言って、京都は去年の大分戦、今年の長崎戦と、実はプレーオフの2試合で1得点も挙げていない。引き分けの優位性ゆえに、どうしてもチャレンジしづらくなっているのは事実だろう。この流れのまま0点で抑えられればいいが、仮に徳島に先制を許すと、イヤ~な感じになってくる。

一方、徳島の指揮を執るのは小林伸二監督。細かいポイントを分析し、相手の弱点を突いたり、あるいは味方選手の力を伸ばしたりすることに長けている。2008年に指揮を執ったモンテディオ山形では、元日本代表の豊田陽平にFWのポストプレーを教え込み、現在の豊田の礎にもなっている。ちょっとしたステップや踏み込みのずれ、ボールの持ち方の誤りなど、細かいところを見逃さない。

勝つしかない試合で、どのようにして相手の隙を突くか。ジェフユナイテッド千葉に勝利した準決勝の記者会見では、「京都は守るチームじゃない。攻撃をしてくると思う」との発言もあった。当然、勝つしかない徳島にとっては、打ち合いは望むところ。これも京都への揺さぶり…というのは考えすぎだろうか。

大木監督はヴァンフォーレ甲府を、小林監督は大分と山形を、どちらも過去に指揮したクラブをJ1昇格に導いた経験がある名将だ。2人がどのようにチームを導き、勝負どころの采配で差をつけるか。この辺りも要注目のポイントだ。

気になる試合の詳細は公式ページを確認してほしい。