一見お好み焼だが具材は豚・キャベツではなく牛すじ・青ネギ、味付けはソースではなく醤油の「すじねぎ焼(1,150円)」(撮影地:やまもと本店)

大阪の名物フードとして誰もが真っ先に思い浮かぶものといえば、恐らく「お好み焼き」か「たこ焼き」だろう。しかし、この2つに負けず劣らず大阪でポピュラーな存在として「ねぎ焼」というものがある。

関東圏では「ねぎ焼」というものになじみがない人も結構おり、そういう人はもしかしたら、焼き鳥屋で出てくる白ネギの串焼きのようなものを想像するかもしれないが、この「ねぎ焼」は全く違うものだ。

刻み青ネギたっぷりをダシ醤油で

「ねぎ焼」で使われるネギは青ネギだ。小麦粉を溶いた生地に、細かく刻んだ青ネギをたっぷり混ぜて焼いたもの、つまり大ざっぱに言うと、お好み焼きのキャベツがネギに変わったものである。

やはりこれまた、大阪人の大好きな粉もんの一種というわけだが、「ねぎ焼」はソースではなく薄口醤油やダシ醤油、若しくはレモン醤油につけていただく。だから、お好み焼きのようなコッテリ感ではなくさっぱりとした味わいで、特に青ネギの風味が好きな人にはたまらない一品なのだ。

また多くの場合、具材として青ネギのほかに、牛すじとコンニャクを入れるのも「ねぎ焼」の特徴で、「すじコンねぎ焼」とも呼ばれる。この牛すじのうまみとコンニャクの食感も、「ねぎ焼」の大きな魅力のひとつだ。

大阪の下町発のまかない料理

「ねぎ焼」の発祥はもちろん大阪。大阪市の十三(じゅうそう)にあるお好み焼き屋「やまもと」というお店で生まれた。

昭和40年(1965)頃の創業以来、元祖ねぎ焼の店として愛され続ける「やまもと」

開業して間もない頃、同店の女店主はスタッフを雇う余裕もなく、ひとりで店を切り盛りしていた。店の仕事の傍ら、学校からおなかをすかせて帰ってくる子供たちに何か作ってあげようと、幼いころに食べた一銭洋食をヒントに“お好み焼き”風のものを考案する。

そのうち客の中に、店内の片隅で子供たちが食べている“それ”を、おいしそうだからとリクエストする人が現れ始め、“お好み焼き”風まかない料理は好評を得る。ここから少しずつ改良を重ね、3年後には「ねぎ焼」という名で店のメニューに加えられることとなった。これが元祖「ねぎ焼」である。

「ねぎ焼」はまず、たっぷりのネギと具を盛って焼いていく(撮影地:やまもと本店)

以来、「ねぎ焼」は評判が評判を呼び、「やまもと」は大人気店に。現在定番の「すじねぎ」を始め、約9種類の「ねぎ焼」メニューをそろえ、大阪市内に4店舗を展開。十三の本店を筆頭に、いずれのお店も度々行列ができる盛況ぶりをみせている。

●information
元祖ねぎ焼 やまもと本店
大阪府大阪市淀川区十三本町1-8-4

「ねぎ焼」を食べに訪れたい2点

今ではどこのお好み焼き店でも、「ねぎ焼」は定番の品のひとつとしてメニューに名を連ねているが、中でも大阪ミナミの千日前に本店がある「福太郎」は、「ねぎ焼」がうまいことでも評判のお好み焼き店のひとつだ。「ねぎ焼」メニューは11種類あるが、人気は鹿児島産の最高級豚肉を使って作る「豚ねぎ焼」(960円)。なお、先ごろ、東京ソラマチに東京店もオープンした。

東京ソラマチにも出店しているお好み焼き店「福太郎」

●information
ねぎ焼 お好み焼 鉄板焼き 福太郎本店
大阪府大阪市中央区千日前2-3-17

また、京都市の祇園にある「祇園ねぎ焼 かな東店」というお店も「ねぎ焼」で有名。「お好み焼き」「ねぎ焼」など粉もんメインの居酒屋で、すじ、ミックス、豚など約8種類の「ねぎ焼」メニューが用意されている。中でもトロトロのすじが入った「すじねぎ焼」(800円)が人気だ。また、ここは石川県金沢市で評判のお店「祇園ねぎ焼 粉」の主人が、学生時代に修行していたお店としても知られている。

京都でねぎ焼を食べるならココと評判の高い「祇園ねぎ焼 かな東店」

●information
祇園ねぎ焼 かな東店
京都市東山区東大路通月見町13

ソースではなく醤油でいただくあっさり和風テイストの「ねぎ焼」。「お好み焼きやたこ焼きは何度が食べたけど、『ねぎ焼』はまだ」という人には、是非一度食べていただきたいおすすめ粉もんである。