ブラジルで見つけた「すき家」

「すき家Vergueiro」。地球の裏側で見る「すき家」の文字。胸が熱くなる

肉大好きブラジル人。もちろんベジタリアンの人も多いというが、ブラジルを旅行すると、とにかくいつもいつも「肉肉肉肉豆肉肉」という具合に肉(と豆)ばかり食べることになる。ブラジル版バーベキューのシュラスコ、粗挽きでジューシーなソーセージ・リングイッサ、豆と一緒に肉を煮込んだフェイジョアーダなど、国民食が肉肉しているのである。そんなブラジルにおいて我らが「すき家」がオープンしたのは2010年。わずか2年で9店舗がサンパウロを中心に展開されているという。そこで、ブラジル1号店の「すき家Vergueiro」に行ってみた。

すき家Vergueiroはかつて「日本人街」と呼ばれ、今では「東洋人街」と名を変えた「リベルダージ」という町にある。地下鉄サン・ジョアキン駅から歩いて数分、サンパウロの中心にも近いエリアだ。

日本語や漢字表記の看板も多いこの町では、すき家の看板も違和感がない。訪れたのは夕方近く。昼食には遅く、夕食には早いという時間帯だったため、店内はガラガラ。だが開店当時は店外まで続く行列ができるほどの人気だったというので、今日の空きっぷりは単に時間のせいなのだろう。我々の他には日本人とおぼしき男性の一人客と、奥のカウンター席で従業員がまかないらしいカレーライスを食べているのみである。

すき家Vergueiro店内

注文をとりにきた従業員は日系人ではなく、日本語はメニューにある単語以外はわからない様子。日本語の「いらっしゃいませ」こそなかったが、にこやかでフレンドリーなところは好感が持てる。牛丼が運ばれてくるまでの間、店内を見回すと……。人気メニューを紹介するポスターの隣に、「牛丼とは? 」という説明書きを発見。図解もしてあり、かなり親切。でも、一番人気はネギ玉丼だそう。

店内にあった牛丼解説ポスター。ブラジルではクレジットカードやデビットカードが普及しており、こんなにたくさんのカードが使える

牛丼並が350円程度

注文してみたのは3種類。牛丼(レギュラー・7.90レアル=約347円)と新メニューで人気急上昇というきのこシメジ丼(10.90ヘアル=約479円)、そしてトマトチーズ丼(13.90ヘアル=約611円)だ。「ちょっと高くない? 」と思うなかれ。意外と物価の高いブラジルでは、この価格で一食がまかなえるなら安いほうである。ビックマックの単品が10ヘアル(約440円)であることを考えても、割安感があるのではないだろうか。小から特盛までのサイズ展開があり、他にはカレーライス、鶏丼、定食などが揃う。

牛丼(レギュラー・7.90レアル=約347円)。肉の味がしっかりしていて、肉肉天国ならではの牛丼

ちなみに、オープン当初は現地の嗜好を取り入れたと思われるカレー&フェイジャオン(豆の煮込みでブラジルの代表料理の1つ)なるものがあったというが、不人気だったそうでこのメニューはすぐに姿を消してしまった。観光客としては、一度食してみたかった。

味わい深いブラジルの牛丼

そんなこんなで10分ほど待った後に出てきた牛丼は、器も日本のすき家のと同じでサイズも同じ。米も「日本米」とは表記されてはいなかったが、きわめて日本でいただくライスに近い。ブラジル人は「このライス、ちょっとかたいよねぇ」と言っていたが、日本人の多くはきっとこの程度がおいしいと感じるのではないだろうか。牛肉の味わいは日本と比べるとタレの甘みが少なく、肉自体の旨みがストレートに伝わってくる感じで旨い。ブラジルではこういった肉肉しさでなければ生き残っていけないに違いない。

きのこシメジ丼は、がっつりにんにく味でピリ辛にソテーされたシメジがのせられており、これが牛肉と非常に合う。ごはんが進む味付けで、ブラジル人にも人気が高いそうだ。「ブラジル人はシメジが大好きなんだよ」とブラジル人が言っていたので、そこを見込んでの商品開発なのだろうか。

トマトチーズ丼(13.90レアル=約611円)

きのこシメジ丼(10.90レアル=約479円)

ユニフォームであるポロシャツも日本と同様

もう一方のトマトチーズ丼は牛丼とはまったくかけ離れた洋風の味。トマトとチーズという王道の組み合わせは、そこに牛丼が合わさってもやはりベストマッチ。肉が入っていなくても別にいいんじゃないのかというくらい濃厚な味わいだ。

ところで、ブラジルというと治安の悪さを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。さすがに真夜中に一人でぷらぷら歩いていると危ないこともあるだろうが、サンパウロやリオデジャネイロは昼間ならそれほど身の危険を感じない。夜でも町のところどころに警察官がいるのでこれも安心材料だろう。

話がそれてしまったが、「さて帰ろう」と席を立つと、日系人の店長がきれいな発音で「ありがとうございました~」と言ってくれた。応対してくれた従業員に「つゆだく」は通じなかったが、他の日系人の従業員は日本語も通じそうだ。地球の反対側へ行っても受けられる日本のサービスと味。やはりホッと安心する。