伊藤忠商事は2日、日本経済の成長率見通しを、2014年度は従来の0.2%から0.5%へ、2015年度は1.2%から1.3%へそれぞれ上方修正したと発表した。2014年4月の消費税率引き上げを受けた経済対策等の影響を反映した。

政府は、消費増税に伴う景気の落ち込みを防ぐため、5兆円規模の経済対策および減税策を策定。経済対策のうち補正予算により予算措置が講じられるのは、公共事業2兆円、住宅購入者向けの現金給付0.3兆円(このほかローン減税0.1兆円)、低所得者向け現金給付0.3兆円などとなる。また、減税策としては、投資促進税制の延長拡大0.7兆円などが予定されている。

なお、経済対策の財源については、「前年度決算剰余金や国債費の不用分の本予算減額、復興特会の不要分に加え、2013年度の税収上振れ分を充当し、新発国債の追加発行を回避する」と同社は推測している。

「経済対策等の概要と影響」(出典:伊藤忠商事Webサイト)

同社は、これらの経済対策等が公共事業や住宅購入者向け対策を中心に、2014年度の成長率を押し上げると予測。現時点で、経済対策等による成長率への影響を、2014年度がプラス0.7%ポイント程度、2015年度はプラス0.1%ポイント程度と試算した。

なお、2015年度の押し上げは、復興特別法人税の廃止前倒しによるものが中心となる。また、2014年度の成長率への影響0.7%ポイントのうち、公共事業の追加による押し上げ分0.4%ポイント程度は従来からの見通しに反映済みであることから、新たに反映した経済対策等の効果は、2014年度0.3%ポイント、2015年度0.1%ポイントとなるという。

これらを踏まえ、同社は日本経済の成長率見通しを、2013年度は従来と同じ2.9%、2014年度は0.2%から0.5%、2015年度は1.2%から1.3%へ修正。なお、成長率見通しの上方修正は、需給ギャップの縮小を通じてインフレ率を押し上げるが、「今回の修正は小数点第1位未満にとどまり、インフレ見通し計数の上方改訂には至らなかった」としている。

「経済の推移と予測(年度)」(出典:伊藤忠商事Webサイト)

景気シナリオについては、経済対策等を勘案後も大きな変更はないと予想。「日本経済は、昨年度補正予算に盛り込まれた公共工事の執行や、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に支えられ、内需主導により2013年度に2.9%と高めの成長を達成する」と見ている。

2014年度は、経済対策等により落ち込み度合いは軽減されるが、「駆け込み需要の反動や増税による所得目減りを映じて個人消費や住宅投資が大きく落ち込み、消費税率引き上げ後の2014年4~6月期に日本経済は大幅なマイナス成長を余儀なくされると考えられる。7~9月期以降はプラス成長へ復帰し、後退局面入りは回避するものの、2014年度の成長率は0.5%へ低下する」と予測している。