静粛な雰囲気が漂う「明徳寺」。うわさでは多くの珍スポットがあるというが……

湯けむりたなびく伊豆の天城湯ヶ島温泉郷にある「明徳寺」。ここが今、あるご利益を求める参拝客で大変なことになっているそうだ。「天城の“珍”スポット」として人気を誇るこの寺を突撃取材してみた!

背中に炎を背負った「トイレの神様」

明徳寺は室町時代に創建された曹洞宗の古刹だ。守護神は烏彗沙摩(うすさま)明王という。この守護神、天台密教の5大明王とされていて、人間界と仏の世界の間にある炎の世界に住んでいるという。

そこで何をしているかというと、「人間の煩悩が仏の世界に広がらないよう焼き払い浄化している」というのだ。そしてあらゆるものを焼き清めることから、不浄とされる東司(トイレ)をキレイにしてくれる「トイレの神様」になったのだという。

かの大ヒットソング「トイレの神様」は、「掃除をするとべっぴんさんになるよ」という触れ込み。手作業できゅっきゅと丁寧に心を込めて掃除する様を想起させるが、この守護神はもっとワイルド。分かりやすく言うと、火炎放射器のような炎をボーボーと出し、あらゆるものを焼き払うというところだろうか。実際、炎を背負った姿をしている。

寺のあちこちにこのようなオブジェが

面白いのはそのあと。「トイレ」というキーワードは連想ゲームのように「シモ」を連想させ、いつ頃からかこの明徳寺は「下半身の病気」にご利益のあるお寺になってしまった。その結果としてご想像の通り、今やこの寺は下半身を想起させるオブジェがいたるところに設けられている。

男性のシンボルがご神体

石段を登った先にある明徳寺、まず目指すは「おさすり おまたぎ」という聖なる場所。ここにお寺のご神体が置かれている。ここで言う「おさすり」は男性のシンボルの形をしており、木や石などで作られている。もちろん女性のもある。これを自分や家族の健康を祈りながらなでるのだ。老若男女がここを目指してくるので、一見すると不思議な光景でもある。

「おさすり」「おまたぎ」は聖なる場所

本当にいいのかと疑ってしまうが、これが賽銭箱なのだ

そして更にシュールなのが「おまたぎ」。ご神体を前にして、床には和式トイレにも見える賽銭箱が設置されている。ここにまたがってご神体に祈りをささげるのである。賽銭箱にチャリーンと賽銭を落とす。「ああ。本当にこんなお祈りのスタイルでいいのか。神様、怒ってないかなあ」、そんな疑問も当然浮かんでしまう。

オムツやおねしょの不安を吹き払う

この寺に祭られている神様は、シモ以外にも様々な願いをかなえてくれるという

いまや未曾有の高齢化社会を突き進んでいる日本社会。シモの問題は、誰もが避けて通れない。「やっぱり、老後はシモの方のお世話になりたくないと参拝される方が多いですね」。そう話してくれたのは、売店の右原(うはら)美佐子さん。

ちなみに売店ではシモの神社らしく、男性・女性用のパンツやフンドシなども販売されている(700円~)。これをはけば、老後のオムツの心配が吹きとんでしまうかもしれない。ちなみに子供用もあり、「おねしょ予防にご利益があります」とのこと。実に、あらゆる下半身の悩みに対応している。

右原さんは「烏彗沙摩明王様は強い神様です。シモにまつわることだけじゃなくて、いろいろな願いをかなえてくれるんですよ。最近では子宝を授かりましたっていう人も多いんですよ」と、穏やかな表情で教えてくれた。なお、毎年8月29日には烏彗沙摩明王のお祭りがあり、伊豆3大奇祭のひとつとしてにぎわうという。お近くの方は是非足を運んでいただきたい。

●Information
明徳寺
静岡県伊豆市市山234