中身がたっぷり詰まったアイスモナカが大人気(撮影:角屋)

下町にある昔ながらの飲食店と言われて思い浮かぶのは、大衆食堂、洋食屋、そば屋、そして喫茶店といったところだろうか。それらと並び、「甘味食堂」と呼ばれるお店があるのをご存知だろうか。甘味食堂とは、オシャレなカフェもスイーツ専門店もほとんどなかった昭和30~50年代頃、各地の商店街などで大判焼き(今川焼き)やおしるこ、ソフトクリームやかき氷などを提供していた店だ。

大阪市北東部に集中する6軒の“かどや”

そんな昭和の下町情緒を色濃く残す甘味食堂の代表格が大阪に5軒ある。大阪市旭区にある「角屋」「カドヤ東店」「赤一かどや」「赤三かどや」、そして大阪市東淀川区の「(淀川)カドヤ」だ。

もともと旭区赤川1丁目に「赤一かどや」が創業。そこから親族への暖簾(のれん)分けで、「角屋」「カドヤ東店」「赤三かどや」「淀川カドヤ」とお店が増えていったようである。

暖簾分けということは完全な独立営業であるから、チェーン店やフランチャイズと違ってそれぞれの店舗でメニューも値段も異なってくる。各店ごとに若干の違いがあるので、大阪の甘味好きやB級グルメ愛好家の中には、これら各“かどや”を巡っては、アイスモナカなどといった定番メニューの食べ比べを楽しんでいる人もいる。

ちなみに、大阪市旭区に隣接する守口市にも「かどや商店」という昔ながらのお店がある。ここは“甘味”専門というわけではないが、こちらでもアイスモナカ(90円)やかき氷(130円~)、昔懐かしいひやしあめ(90円~)などが人気を呼んでいる。

がっつり系は「角屋」「カドヤ東店」

これぞ大阪の下町といった風情の、千林商店街から少しはずれたところにある「角屋」

アイスモナカ(大)は140円でこのアイスの量。バニラ・ソフトクリーム・宇治・金時などがある

これら“かどや”の中で、現在特に人気の高いのが、「角屋」「カドヤ東店」「淀川カドヤ」の3軒。とりわけ、「角屋」と「カドヤ東店」は、夏場になると頻繁に行列ができるほどの人気ぶりだ。

この3軒で夏の一番人気のメニューと言えるのがアイスモナカ。中でも「角屋」「カドヤ東店」のアイスモナカ(大)はアイスの量がスゴイ。かぶりつくのも一苦労だ。

もちろんかき氷(210円~)も真夏の人気メニュー。「角屋」「カドヤ東店」ともに種類豊富で、そしてこれまた気前よく大盛りである。

「角屋」の壁にはかき氷をはじめ、ソフトクリーム、あんみつなどのメニューがズラリ。その数約50種以上

ちなみに「角屋」の店内にはメモ用紙とボールペンが置いてあるのだが、注文を紙に書いて渡すのがこの店のシステム。口頭で注文するよりこのスタイルの方が間違いがなくて、お店としてもありがたいようだ。

「カドヤ東店」では「角屋」にはない冷やしコーヒー(80円)も名物となっている。通常の喫茶店のアイスコーヒーと違ってかき氷状の氷が入っており、飲むとシャーベットのようなシャリシャリとした食感が楽しめる。もちろん珈琲店ではなくあくまでも甘味処なので、最初からシロップの入った甘いコーヒーだ。

細シャリシャリの氷の食感が心地よい「カドヤ東店」の冷やしコーヒー(80円)

ファンの多い「淀川カドヤ」のクリームコーヒーはソフトクリームがぎっしり

上質な印象の「淀川カドヤ」

一方、「淀川カドヤ」だが、何十種類ものメニューがズラリと並ぶ旭区の「角屋」「カドヤ東店」と違って、こちらのメニューは10種類弱とシンプル。また、アイスモナカが130円と、「角屋」「カドヤ東店」に比べるとやや割高となっている。しかしその分、アイスクリームも皮もどこか上質な印象を受ける味と食感だ。

「淀川カドヤ」では、アイスモナカのほかにクリームコーヒー(150円)も人気の品。アイスコーヒーの中に濃厚なソフトクリームが下の方までたっぷり入った一品だ。コーヒー自体かなり甘めなのだが、ソフトクリームの甘さによってやや苦味も引き立ち、いいバランスとなっている。

「夏になると必ずここのアイスモナカが食べたくなる」「一定の周期で無性にあのクリームコーヒーが飲みたくなる」と、地元民を中心に20代~中高年の女性、さらには男性まで、甘いもの好きをトリコにする6軒の“かどや”。昔懐かしい日本ならでは氷菓をお手頃価格でいただける、庶民にとって欠かせない甘味処なのである。

●information
角屋
大阪市旭区森小路2-8-22

カドヤ東店
大阪市旭区森小路1-8-14

赤一かどや
大阪市旭区赤川1-1-22

赤三かどや
大阪市旭区赤川3-13-33

淀川カドヤ
大阪市淀川区東三国1-19-3

かどや商店
大阪府守口市東光町1-9-4