「とことこトレイン」は清流に沿って大自然の中を時速7~10kmの速度で走る

日本三名橋のひとつに数えられ、世界的にも知られている「錦帯橋(きんたいきょう)」が有名な山口県岩国市。その錦帯橋の下を流れる錦川の上流に沿って、錦川鉄道の錦川清流線が通っているのをご存じだろうか。そして、その終点の錦町駅から、“とことこトレイン”と名付けられたトロッコ列車が走っていることを。

地元の熱意によって、1987年に再スタート

とことこトレインは、錦川清流線と同じく錦川鉄道が運営している。社長の清水晃一さんによると、同社はかつて経営状態が芳しくなく、国鉄廃止対象の路線だったが、地元の熱意により、昭和62年(1987)4月、第3セクターとして新たに運営をスタートしたという。

ちなみに「第3セクター」とは、国および地方公共団体が経営する第1セクター、私企業による第2セクター以外の方式で経営されているものを指す。

錦川鉄道の車両のひとつ「せせらぎ号」

愛知万博で使用された電気自動車を再利用

とことこトレインが走るのは、錦町から雙津峡(そうづきょう)温泉までの約6km。なぜこのような短い距離を運行しているかというと、国鉄時代に、錦町駅の先まで路線を延ばす計画があったことが関係している。

「後はレールを引くだけのところまで整備が進んでいたのですが、結局錦川清流線の終点は錦町駅に。未成線となってしまった部分を有効活用するために、専用の乗り物を走らせるアイデアが生まれたんです」と清水さん。

トンネルや高架橋などは完成していたことから、自走式の列車を導入すればすぐに運営できる。そこで、平成14年(2002)7月に博覧会「山口きらら博」で使用された車両を無償譲渡してもらい、運行を開始した。清水さんは「車両はLPガス車でしたので、ガタゴト揺れました。それで列車の名前も、“ガタくん”と“ゴトくん”と名付けました」と話す。

その後、平成17年(2005)の愛知万博「愛・地球博」で使用された電気自動車「グローバル・トラム」2編成を、平成21年(2009)9月に2代目として導入。「電気自動車でゆっくりと走行する姿は風景とピッタリ合います」(清水さん)。なお、名前に関しては、初代から受け継いでそのまま“ガタくん”と“ゴトくん”なのだそう。

スマートになった2代目の“ガタくん”と“ゴトくん”

沿線の豊かな自然と「きらら夢トンネル」が見どころ

とことこトレインは、岩国市の緑豊かな山中を走る。「錦川支流の清流である宇佐川に沿って走行していますので、美しい川の流れをゆっくり見下ろすことができます」と清水さん。深い谷間を縫うように走る列車のオープンになった車窓からは、のんびりと大自然の風景が楽しめる。

その沿線の中でも最大の見どころと言えるのが「きらら夢トンネル」。これは、錦町駅を出発してから300mほどの場所にある全長1,796mの「広瀬トンネル」の通称だ。トンネル内は赤・青・黄・緑・白・桃の光る石を使って装飾されており、ブラックライトによって幻想的に輝く。

ファンタジーなトンネルの中をかわいい列車が走る

トンネルに入ると思わずため息が出る!

トンネルのイルミネーションを制作したのは、山口県内の大学に通う学生や地元小学生、幼稚園児など。「トンネル内の600mほどを子どもたちが描いた壁紙で飾り、そのうち大学生が製作した2カ所は360度装飾されています。列車はトンネルの真ん中あたりで一時停車するので、存分に楽しめますよ」(清水さん)。

そう聞いて、すぐにでも乗車したくなった方は多いだろうが、とことこトレインは期間限定運行なので要注意。2013年は3月23日~11月24日の土曜・日曜と祝日に走る予定だそうだ(春休みや夏休み、GWはほぼ連日運行)。

なお、錦町駅まで錦川清流線を利用すれば、とことこトレインの乗車券が割引される(大人:100円、子ども]50円)。錦川清流線も自然豊かな観光スポットがたくさんあるので、行くなら断然列車がおすすめだ。