熊本県内にある一般的スーパーのお惣菜コーナーで、謎のちくわメニューがひそかな人気を博し、それが県下全域に広がって定番メニュー化していると聞いたのは半年ほど前のこと。その名も「ちくわサラダ」という。今回は、おそらく他県の人々は聞いたこともないであろう、この熊本の超ローカルお惣菜情報をレポートしたい。
定番惣菜を掛け合わせた一品
一言で説明すれば、これは「詰め物」だ。ちくわの穴にポテトサラダを詰め込み、からっと天ぷらに揚げた一品。
ポテトサラダとちくわをまとめて揚げるという、想像しただけでも重たげなこのレシピ、一体誰が考案したのか……。そのルーツをたどると、発祥地は熊本に本店を置く総菜専門チェーン店「ヒライ」の厨房(ちゅうぼう)だった。
それではと、市内から郊外へと抜ける国道沿いの「ヒライ」店舗へと確かめに行くと、あるわあるわ。入り口正面に「ヒライ名物おかず ちくわサラダ150円」との札まで掲げて、ジャンジャン並んでいるではないか。
ちくわは、手のひら大の大きさがあり、1個でもう十分よという存在感である。しかもポテトサラダを詰め込まれてパンパンにふくらんでいる……見るからに重そう。胃にずっしりきそう。
ヒライでは、イートインもできる。「ちくわサラダ」初体験。早速温めてもらって食べてみる。むむ! これはうまい。ポテトサラダの濃厚な味わいに、フライちくわのサクサク感が、絶妙にマッチしている。
おかずはもちろん、子供のおやつとしても通るし、父さんのビールでは間違いなくウケる味だ。バリエーションとしては、元祖ちくわサラダの他に、ちくわタママヨ、ちくわサラダミニ、アスパラちくわサラダなど詰め物の違いで数種があるとのこと。
「ヒライ」商品開発部の堀川さんに聞いてみると、「人気の定番総菜だったポテトサラダと、ちくわとを一緒にしたら、人気も倍になるのでは?」との実に単純な発想から30年くらい前にできたという。
家庭にポテトサラダがあれば、次はちくわサラダに
今では「ヒライ」以外の熊本市内のスーパーの総菜売り場にも、日常的に見るまでに広がっている。家庭でポテトサラダを残すと、ちくわサラダにしてしまうという奥さま方の証言もあった。
今や熊本を越えて、福岡エリアのスーパーへも進出している「ちくわサラダ」。確実に九州全域へと生息圏を広げてきているようだ。単純でうまいものは一気に全国区になる。そのうち東京の高級スーパーに「ちくわサラダ」が並ぶ日も、近いのかもしれない。