「どうして私ばっかり」という不満が募ってケンカに発展したりもする

男は外で働き、女は家を守る……。そんな男女の役割分担は過去のものとなり、男性も女性も外で働き、お互いに協力して家庭を維持する世の中になりました。

とはいえ、それはまだまだ不十分で、「イクメン」が妙にありがたがられたりと、男性が育児や家事に参加するというのは少数のようです。仕事をもつ女性が結婚をしても、料理や洗濯、そして子育ても女性がしなくてはいけないのが、まだまだ日本の現実です。

「どうして私ばっかり……」――。

育児や家事だけではなく、職場など様々なシーンで女性はこの台詞を言ったり思ったりしがち。今回は、化粧心理学者の平松隆円さんに女性が不満や不公平を感じやすい理由について解説していただきます。

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あたりまえの話ですが、私たちは公平に扱ってほしいと思います。例えば、仕事では自分の努力や成果に見合う報酬を願います。つまり、自分の行ったことと結果にバランスがとれていないと不公平だと感じ、不満となるのです。

「相手にたくさんのことをしてもらっている」というのも実は不公平

この公平か不公平かという問題は、実は人間関係にもあてはまります。自分が誰かに何かをしてあげたら、同程度のお返しがほしいと思いますよね。これは、心理学的には「公平理論(equity theory)」と呼ぶ考え方で説明されます。

公平理論では、自分の行った(=投入)と得られたもの(=結果)が、相手のそれと等しい場合を公平、等しくない場合を不公平と呼んでいます。そのため、「自分はこんなにしているのに、相手は何もしてくれない」というのは、不公平となるのです。

恋人や夫婦というのも、人間関係です。お互いの投入と結果のバランスがとれていないと不公平となり、不満につながります。ですが、どうしても従来の役割分担のままで男女関係を維持しようとすると、女性の方が不公平になってしまいます。男性と同じように仕事をしているのに、そのうえ家事や育児までしなくてはいけない。女性には、やらなくてはいけないことが多すぎてしまい、不満を感じやすくなります。

ですが、ここで注意が必要です。公平理論では、お互いにバランスがとれていることが大事です。つまり「自分はこんなにしているのに、相手は何もしてくれない」というのも(=過小)、その反対に「自分は何もしていないのに、相手がこんなにもたくさんのことをしてくれる」というのも(=過大)、実は不公平なんです。そのため、女性は実際に行動を行うことから過小として不公平になりやすいのですが、男性は男性で不満とは感じていなくても、過大として不公平となっています。

では、不公平だったら人はどうするのでしょう。当然、公平にしようと思いますよね。仕事だったら、がんばっても評価されないならやるだけ無駄だからやめておこうとなります。じゃあ、恋人や夫婦の場合なら……。それは次回お話しすることにしましょう。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。大学では魅力をテーマに恋愛心理学も担当。 NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。