――神山監督の脚本は非常に密度が濃いと聞きますが、お読みになってみていかがでしたか

難しいものをテーマにしているなと思い、その難しさがとてもうれしかったというか。今の時代、簡単に答えが用意されがちだと思うんです。考えなくても調べれば簡単に分かってしまうとか、すぐに人に聞いてしまったりとか。そうではなく、この物語が何を言いたいのか、どこに向かって行くべきなのかということをとても考えさせてくれる脚本だったので。どこに真意があるのか、悪意がどこに向かって行くのか、その中での正義がどこにあるのか、というのを考えるのがとても楽しくて、うれしかった。それは登場人物たちが正義を求めていく姿とも重なりますし、簡単に見つからないからこそ最後に迎える答えがとても多様化して、それぞれの人の心に何か残るものがあるんじゃないかと思います。

――テレビシリーズ作品と異なり、収録期間が短かったと思いますが、現場の様子はいかがでしたか

収録が始まる前に、神山監督が今回の企画や作品の世界観・設定などを丁寧に説明してくださるなど、僕らがどういう方向で向かっていけば良いかという指針を示してくださいました。僕らの迷いをなくすために、監督ご自身が距離を縮めてくれたというか。作品の謎なんかを出演者同士でディスカッションするのも、とても楽しかったですね。『これは何なんだろう』『僕はこう思う』という話をして、それぞれの見解を知るのがとても楽しかったですし、それを監督に投げかけて『実はこうだ』とういう答えをくださったりするような、深いやり取りもできました。収録自体は2日間という短い間でしたけど、とても濃密で、シリーズ物をやっているようなチームワークでできたのが印象的でした。

――キャスティングは宮野さんと小野さん(002/ジェット・リンク役)の組み合わせを重視して決められたと聞きましたが、実際に二人のシーンを演じてみていかがでしたか

そうですね、いっしょに食べたこんな大きな(30cmくらいの高さを手で作って)ハンバーガーがおいしかったっていうのと(笑)……。ジョーもジェットも正義感をもって、それぞれに信じるもの、所属や決められたルールの間で対立してしまうことになるわけですけど、そこのぶつかり合いが本当に楽しかったというか。ジェットとガチでぶつかるシーンは、現場でも小野さんとの気持ちのぶつかり合いができて、ジョーとジェットが感じている仲間の絆というのを現場でも感じることができたと思います。(二人のシーンの)最後に(ジョーが)叫ぶセリフがあるんですけど、それを後ろで聞いていた小野さんが、『鳥肌がたった!』と言ってくれたのがすごくうれしかったですね。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします

本当に"RE:CYBORB"という名にふさわしい、新しい事にチャレンジしている作品だと思います。この映画でしか見ることのできない"009"があると思います。正義とは何か、悪意とはどこにあるのかなど、見た人それぞれに感じられる部分がたくさんある作品なので、ジョーたちが戦う姿を見て、皆さんもいろいろと考え、少しだけでも自分の世界を見つめ直してみたら、これからの人生に何かを発見できるのではないかと思います。ぜひ、じっくりと見ていただければうれしいです。

映画『009 RE:CYBORG』は、現在、全国公開中。

(C)2012『009 RE:CYBORG』製作委員会