洋菓子やドリンク類に使われることの多いカシス。日本で栽培されているというイメージはあまりないかもしれないが、青森では和名である「黒房すぐり」として親しまれており、生産量も日本一を誇る。
カシスの生育条件である夏季に冷涼な気候であること、そして何よりおいしかったことから、1970年代にドイツより苗木を導入して以来、長く育てられてきた。「あおもりカシス」の名前でブランド化し、5年ほど前から急成長。平成23年は6.9tを出荷、10年前の3倍以上にもなった。今後もさらに増産される見込みだという。
注目されるきっかけとなったのは、カシスに含まれる高い抗酸化成分だ。ポリフェノールはブルーベリーの約2倍、アントシアニンは約3倍。さらに、ビタミンCはレモンの約2倍だというから、アンチエイジングや美肌を気にする女性には見逃せない。
摘み立てのカシス、そのお味は?
あおもりカシスの旬は、7月中旬から8月の上旬。強い陽射しが照りつける中、最後の収穫作業に精を出す、林キクエさん・博美さん親子のカシス畑を訪れた。収穫はひと粒ひと粒、手摘みである。1時間に収穫できる量はわずか1kgというから、重労働だ。キクエさんは、カシス栽培歴17年。「昔はあんまり知られてなかった。でも、おいしいから細々と育ててきたの」と笑顔で話す。
摘み立てのカシスを味見すると、酸味のなかにほのかな甘み。ブルーベリーを思わせるが、もっと皮がしっかりとしていて、酸味もずっと強い。アイスクリームにトッピングしてつぶしながら食べると、乳製品との相性は抜群で、ベリーのフルーティーな風味と共に甘さを引き立てる。また、「砂糖を加えて煮ただけ」というキクエさんの自家製カシスジュースは濃厚なのに爽やかな甘酸っぱさ。炭酸やアルコールとの相性もよさそうだ。
鮮度保持が難しいことから、果実の販売は冷凍品のみとなっている。通販も行っており、大玉のものが1kgで3,150円(送料別)。その他、業務用としてピューレや果汁なども販売する。ジャムやジュース、お菓子などの加工品も好評だが、果実のピュアな味わいはまた格別である。