伊豆のローカル温泉を少し細かく見ていくと、温泉郷によって湯の効能が異なり、雰囲気も異なる。年間350万人以上の宿泊客が訪れる熱海温泉のみならず、時間が許す限り温泉を巡れば、心身ともに良いリラクセーション体験ができるだろう。西から来ても、東から来てもアクセス便利、泉質も良いという静岡伊豆のオススメ温泉郷を5つご紹介しよう。
■(1)熱海温泉
伊豆、温泉とくればまず名前があがるのが熱海。ひかり号で東京駅から40分足らずの近さが、東京の奥座敷として長く利用されてきた第一の理由だ。海から熱い湯が湧き出ていて「熱海」となったというほどに、温泉とは縁が深い。
明治以降は小説家を始め著名人が多く訪れ、尾崎紅葉の小説「金色夜叉」で、一躍熱海は全国区となった。老舗の旅館やホテル、リゾートマンション、日帰り温泉など、温泉を楽しむ色々な施設が一番充実している。館内(たてうち)にエステやリフレクソロジー施設が充実している宿も多い。泉質は弱食塩泉や含塩化土類・含石膏弱食塩泉で、リウマチ・神経症・皮膚病・創傷・婦人病に良いとされる。
■(2)畑毛(はたけ)温泉
新幹線三島駅からすぐの伊豆箱根鉄道伊豆仁田駅、JR東海道線函南駅が最寄り駅。ラドン含有の弱アルカリ性単純泉という伊豆では異色の泉質を持つ。江戸時代のけが人湯療の記録が残るように、いわゆる「湯治場」のイメージが強い。ラドンのお湯はガンに効くという説まである。リウマチ・神経痛・高血圧症に効能ありとされ、環境省指定の国民保養温泉地にもなっている。
温度は低め。湯冷めしにくいのも、このお湯の特徴だ。温泉街とはいえ、熱海のような華やかさはない。こぢんまりとした旅館数軒からなる小規模な温泉郷である。周辺は雄大な富士山の眺めが楽しめ、石畳が残る旧東海道や、牧場体験、乳製品、地ビールまで楽しめる「酪農王国オラッチェ」などがある。
■(3)修善寺(しゅぜんじ)温泉
三島から伊豆箱根鉄道で30分。終点が修善寺である。伊豆半島で最も古い歴史を持つ、山に囲まれた静かな温泉郷。鎌倉幕府の2代将軍源頼家が幽閉され暗殺された地としても知られ、歌舞伎「修禅寺物語」はその話を題材にしたものだ。また、皇族を始め、著名人が多く訪れることでも有名。
街の中央を流れる桂川には、弘法大師が独鈷(どっこ)という仏具を突き刺したらその岩からお湯が吹き出したといわれる修善寺のシンボル「独鈷の湯」がある。他にも竹林の小径など、観光名所が盛りだくさん。歴史マニアにはたまらない温泉郷だ。
泉質は神経痛や胃腸病に効能があるアルカリ性単純温泉。温泉街の名前のもととなったお寺・修禅寺と独鈷の湯には飲泉所があり、飲むこともできる。源頼家が入浴したという伝統の名湯・筥湯(はこゆ)は、昔からの修善寺温泉の外湯。レトロということではなく、和テイストの上品な雰囲気が漂っている。
■(4)韮山(にらやま)温泉
観光客というよりも地元民に愛されているローカル色あふれる温泉地だ。三島から伊豆箱根鉄道で20分乗って伊豆長岡で下車。雰囲気は伊豆長岡温泉と言うより、伊豆長岡駅に近いとでも言おうか。ごく普通の街並みの中に、数件の旅館と韮山温泉館、高齢者の福祉施設「高齢者温泉交流館」という公営の温泉施設がある、ちょっと変わった温泉「街」。
肌にやさしい弱アルカリ性単純温泉が噴出する。周辺では、冬期にはイチゴ狩りが楽しめる。また、北条政子産湯の井戸や、源頼朝の恋人だったという八重姫の菩提寺・真珠院など、源氏ゆかりの史跡が多く残っている。歴史散策にも最適な場所である。
■(5)戸田(へだ)温泉
伊豆西海岸の最北にある温泉郷。JR沼津駅からバスで沼津港へ行き、高速船で30分。清水港からフェリーで一時間強という手もある。今回紹介している5つの温泉の中で唯一、駿河湾に面し、遠洋漁業も盛んな港町の温泉だ。つまり温泉だけでなく、新鮮な魚介類を存分に楽しむことができる。タカアシガニなど駿河湾の深海魚料理も味わえる。
泉質はナトリウム・カルシウム硫酸塩泉、効能は慢性皮膚病や動脈硬化症など。旅館は1人1泊2食付きで4,000円台からあり、民宿やオートキャンプ場などもある。釣りやダイビングなどマリンレジャー目当ての人には特にお勧めの温泉だ。
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