ニコニコ動画、ニコニコ生放送などの動画サービス「niconico」を運営するドワンゴは18日、六本木のライブハウス・ニコファーレで記者発表会を行い、「ニコニコ町会議 全国ツアー2012」の詳細、および今年4月28日、29日に開催した「ニコニコ超会議」の最終赤字金額が4億7,081万25円になったことを報告した。
また、来年の4月27日、28日に幕張メッセにて「ニコニコ超会議2」を開催するという重大発表も行われた。ではそれぞれの発表内容を詳しく紹介していこう。
まずは「ニコニコ町会議 全国ツアー2012」だ。これはニコニコ超会議で発表された企画で、町(ちょう)会議と読む。無論、超会議にかけたダジャレであり、おそらくこの言葉の響きから話が盛り上がった結果の思いつき企画だと思われる。これがいつもの"ドワンゴ流"だ。
しかし、どんなにスタートがバカバカしいものでも、その思いつきを本当に実行してしまうところがドワンゴのドワンゴたる所以。ちなみに町会議とは、超会議の縮小バージョンで、日本各地の「町」にニコニコカー(ニコニコ動画のイベントで使われることがピンクのワゴン。もちろん元ネタはアレ)でお邪魔し、そこで開催されているお祭と併催することで地方を盛り上げようという趣旨の「移動式文化祭」。行き先となる町はユーザーからのメール応募で決定したとのことだが、「町」というところがポイントで、あまり大きな都市は最初から対象外となる。
その結果、4,400通ものメールから選ばれたのは次の5つの町である。
7月29日(日) 鳥取県 八頭町 「きらめき祭」
8月5日 (日) 佐賀県 唐津市呼子町 「水光呼子港まつり」
8月11日(土) 北海道 長万部町 「飯生神社例大祭」
8月16日(木) 福島県 三春町 「三春盆踊り」
8月30日(木) 東京都 八丈島(八丈町) 「離島甲子園」
ではそれぞれの詳細を紹介していこう。
鳥取県 八頭町
町会議の出発地点となる鳥取県 八頭町は甘柿の里として知られる人口1万8,000人ほどの町だ。近くにある鳥取市の白兎海岸には、神話に語り継がれる「因幡の白兎」伝説が残っており、その関係で八頭にも白兎に関係する寺社仏閣が多い。中でも成田山青龍寺の白兎神社社殿に彫られた「波うさぎ」は有名だ。
この八頭町で開催されている夏祭、「きらめき祭」にニコニコ町会議がお邪魔することになる。なお鳥取県は日本一ニコニコ動画ユーザーの少ない県で、その会員数は8万人とのこと。夏野氏は「この人数は台湾はもちろん、香港のニコニコ動画ユーザーよりも少ない。今回の町会議でニコ動ユーザーの掘り起こしを狙う」との意気込みを示した。
ここではニコニコ動画の人気ユーザー、じゅん☆じゅん、ぽこた、まっくす、てぃ☆イン、AKINA、うー、百花繚乱が参加する。
佐賀県 唐津市呼子町
続いては8月に突入して最初の町会議となる佐賀県 唐津市呼子町だ。
漁業が盛んで、日本三大朝市の一つに数えられる「呼子朝市」で知られる呼子町は、特にイカの産地として有名だ。毎年「水光呼子港まつり」を開催しており、約1万2,000人を集客する。祭りのフィナーレを飾る花火大会ではイカの形をした花火が打ち上がるなど、他の祭りにはないユニークさが売りだ。ニコニコ町会議が参加するのはまさにその最終日。花火大会と共に呼子町を盛り上げる。
ここではニコニコ動画の人気ユーザー、ぶいら、よーらい、めろちん、町田とし子、百花繚乱が参加する。
北海道 長万部町
その6日後には、一気に場所を北海道へと移し、北海道 長万部町で 「飯生神社例大祭」にニコニコ町会議が参加する。酪農と漁業が盛んな町だが、インターネットユーザーにとってはゆるキャラ「まんべくん」の印象の方が強いかもしれない。夜みこしや長万部太鼓の演奏で派手に盛り上がる飯生神社例大祭には、そのまんべくんも姿を見せるという。ニコニコ町会議とまんべくんという、見るからに危険なコラボレーションが北の大地で実現する。
ここではニコニコ動画の人気ユーザー、ゆうこりん、恭一郎、恐怖。、町屋、悪の組織『ekot』が参加する。
福島県 三春町
続いて8月16日、お盆にニコニコ町会議が訪れるのは福島県 三春町 「三春盆踊り」だ。夏野氏によると「福島県で開催したいという強い思いがスタッフにあった」という。そんな三春町は人口約1万人。国の天然記念物指定を受けた日本三大桜の一つ・三春滝桜をはじめ、数多くの史跡を有している。ここで8月15日、16日の2日間にわたって開催される「三春盆踊り」は、やぐらを組み、笛や太鼓の音色に合わせて甚句をうたい踊る昔ながらの盆踊り。明らかに雰囲気の異なるニコニコ町会議が併催されることでどんな化学反応が起こるのか楽しみだ。
ここではニコニコ動画の人気ユーザー、ナオキ兄さん、ドグマ風見、AO、浅井さん、百花繚乱が参加する。
東京都 八丈島
そして8月30日、最後の開催地である東京都 八丈島(八丈町) へ。東京から南方の海上へ約300kmほどの場所に位置する八丈島は、豊かな自然と温暖な気候、温泉などの癒しスポットが人気の観光地だ。そして今回ニコニコ町会議がお邪魔するのは「離島甲子園」。これは元ロッテ投手の村田兆治氏が提唱して創設された離島の学校限定の野球大会で、開催地は毎年持ち回りとなっている。今年は過去最多となる21の自治体が参加するとのことで、ニコニコ町会議が参加する30日は決勝戦が行われる最終日にあたる。全国の離島から参加した子どもたちがニコニコ町会議でさらに盛り上がってくれることを願いたい。
ここではニコニコ動画の人気ユーザー、みうめ、事務員G、ガッチマン、せら、てっぺりんP、百花繚乱が参加する。
以上が、ニコニコ町会議が開催される全5カ所の"町"となる。ニコニコ動画に限らず、ネットサービスの多くはどうしても首都圏や都市部にユーザーが集中しがちで、地方の掘り起こしが弱いのが現状だ。ニコニコ町会議でそれほど多くのユーザーを獲得できるとは思えないが、しかしこれまでネットサービスの課題とされてきた地方へのアプローチを、今回のようなアナログな力技で行うという姿勢は、実にニコニコ動画らしい無駄にあふれていて個人的には好感が持てる。
なおニコニコ町会議では「町ステージ(のど自慢開催予定)」や「ニコニコフード」「射的・ゲームコーナー」「グッズ販売」「ユーザーマーケット」「ニコニコカー神社」など、超会議を限りなく縮小した会場が用意される。また、ユーザーマーケットの出展者やボランティアスタッフ、射的で使用する輪ゴム銃などを募集するという。
ニコニコ町会議会場への入場は無料。当然、またしても大赤字だが、超会議に比べれば何てことはない額だろう。……そう思えるくらいに超会議のインパクトはすごかったということだが。
さて、そのニコニコ超会議の最終赤字額についても報告があった。
もともとは「1~2億と見込んでいた」というが、ふたを開けてみると何と赤字総額は4億7,081万25円。川上会長と夏野氏はその理由について「ドワンゴは大規模なイベントを開催した経験がなく、どれくらいのお金をかければどれくらいのものができるのかを把握していなかった。イベントを成功させるにはあれもこれも必要だとやっていたらこうなった」と分析。しかしながら「ほぼすべてのテレビ局に報道されるなど、メディアに露出したPR効果はかなり大きいものだった」(夏野氏)と数字に表れていない部分での成果を強調した。
そんなニコニコ超会議だが、なんと来年2013年の4月27日、28日にまたしても幕張メッセを貸し切って開催するという驚きの発表があった。次回は協賛してくれる企業を募ることで赤字額を抑え、「もう少し計画性をもってできると思う」(川上会長)ということだ。