『初音ミク(はつねみく)』は声優・藤田咲のキャラクターボイスを元に作られた、ボーカル・アンドロイド=VOCALOID(ボーカロイド)。音楽や効果音などの関連製品を販売するクリプトン・フューチャー・メディア(以下、クリプトン)生まれのバーチャル・アイドル歌手であり、音声を使って楽曲作りができる音楽ソフトでもある。誕生後5年を迎える今も大人気の初音ミク、その人気の理由とは? マイナビニュース会員1000人に聞いてみた。


◆キャラクターが素直にカワイイ!
 まず挙がったのは「オタク受けするキャラデザイン」(29歳/男性/その他/技術職)、「萌え系ビジュアルで、人間にはない良さがある」(39歳/男性/建設・土木/技術職)といった、“見た目”に関する意見だ。イラストレーター・KEIが描いたキャラクターは、エメラルドグリーンの長い髪をツインテールにした特徴的なヘアスタイル。そしてヘッドフォンや電光表示などといったバーチャル・アイドルらしい要素を盛り込みつつ、絶対領域(ブーツとスカートの間に生じる魅惑の素肌)を確保。このいでたちは瞬く間にオタクたちのハートをつかんだ。

 発売前は、“萌え”を前面に押し出した戦略に対して否定的な意見もあったが、ふたを開けてみれば「ニコニコ動画」を中心に大ヒット! 何だかんだ言っても“カワイイは正義!”なのである。


◆創作の幅が広がる自由度の高い環境
 人気キャラクターともなると、ファンの間ではイラストやマンガなどの二次創作が盛んに行われていく。こうしたファンアートの存在が公式に認められることはめったにないのだが、クリプトンは二次創作を認め※、さらにはユーザー間でより楽しめるように、作品の投稿や作者同士の交流、コラボが行えるサイトを提供。そのため「著作権者のユーザーに対する配慮」(32歳/男性/情報・IT/クリエイティブ職)を人気の理由として挙げる人も。

 また、初音ミクに関する公式設定は年齢、身長、体重、得意ジャンルというわずかな情報しか発表されていない。これにより「ファンたちの創作によってキャラクターが作られていくことが魅力だと思う」(26歳/女性/小売店/販売職・サービス系)、「アイコンとしてのキャラ付けがよかったのだと思う。特定の物語を持たないので、いろいろな場面で活躍できる」(27歳/男性/その他/その他)という声も相次いだ。自由度が高いからこそ、「自分たち(オタク)で育てたアイドルであるという一体感」(38歳/男性/団体・公益法人・官公庁/営業職)が生まれたのだ!

 ※ただし、二次利用にはガイドラインが定められています。詳しくはクリプトンが運営するコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」をご確認ください。


◆「音楽ソフト」として優れている!
 初音ミクはDTM(デスクトップミュージック)と呼ばれる電子音楽を制作するためのソフトでもある。ヤマハ開発の「VOCALOID2」を採用し、収録されている音声ライブラリを合成することにより、歌詞の乗ったボーカル音源が作れる。これによって実際の人間には難しい「どんな高い音もどんな速い歌も歌えるので、曲は作りたいけど歌えない、歌える人が近くにいないといった作曲者が抱える問題を解消することができた」(23歳/女性/情報・IT/営業職)。また、制作者の工夫次第でいろんな表現が可能で、「かわいいし、P(プロデューサー)によってまったく違う歌い方をする」(24歳/女性/自動車関連/秘書・アシスタント職)という喜びの声も上がった。


◆ネット文化との相性がよかった
 初音ミクによる楽曲は、多くのユーザーの手によって、日々、動画投稿サイトに投稿され続けている。閲覧者の立場から「自分と同じ素人が作った歌は、とても身近に感じてより共感できる」(24歳/女性/その他/その他) 、「プロでもない普通の人の、隠れた感性によって多彩な曲が生まれる」(22歳/女性/農林・水産/専門職)という感想も目立った。

 さらに、投稿された動画にはアニメーションがついていたり、MMD(3DCGソフトウェア、MikuMikuDanceの略称)を動かしていたり……とバラエティーに富んだものばかり。これをすべて一人で制作している人もいるが、初音ミクを通して知り合ったネット仲間と作業を分担している人も多い。「ネットを通じて複数の才能が一つの作品を作り上げる、というパターンができたこと」(50歳以上/男性/電機/技術職)は非常に革新的! 

 最後は、総合的な意見を出してくれた方のコメントで締めたい。「今まで表現する人には歌唱力・ビジュアルなどの複合的な才能が必要だった。しかし本当はもっと多くの人がいろいろな才能を持っている。作曲ができる人、作詞ができる人、歌がうまい人、楽器が弾ける人、動画が作れる人、絵が描ける人などが個々のポテンシャルの高さをいかし、才能をコラボレートして作品を公開できる。そういうツールとしての有効性が初音ミクの人気の大きな要因だと思う」(25歳/男性/自動車関連/事務系専門職)。うーん、納得!

 多方面に新風を吹き込んだ初音ミクだが、鏡音(かがみね)リン・レンなどの後輩ボーカロイドが次々に登場し、今や大物アイドルとしての貫禄をも感じさせるポジションだ。一方、2012年4月25日には“クリスタルヴォイス”と称される歌手「Lia」の声を起用した『IA(イア)』の公式メジャーコンピレーションアルバム『IA/01 -BIRTH-』が1st PLACEより発売される。このボーカロイドはミクにとってはライバル的存在といえるだろう。新たなバーチャル・アイドルの誕生により、ミクの歌姫としての地位は揺らぐのか!? それとも不動の人気を見せつけるのか!? ますます盛り上がるボーカロイド界の今後に目が離せない!

文●サンプラント

調査時期:2012年3月14日~3月20日
調査対象:マイナビ ニュース会員
調査数:男女1000名
調査方法:インターネットログイン式アンケート

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