自動車検査登録情報協会の調査によれば、愛知県の自動車保有台数(軽自動車含む)は497万7,051台(2010年9月末現在)で全国一。名古屋周辺はまさに「クルマ社会」と言っても過言ではない。一方の鉄道は、「自動車の邪魔にならないように……」という意図があるのかどうか、高架の路線が多く存在する。ここで紹介するのは2つとも全線高架だが、他の都市なら存在すらしていなかったのでは? と思うくらい、全国的に見ても珍しい路線だ。
名古屋のど真ん中に巨大な鉄筋コンクリートの"壁"出現!?
その1つが、枇杷島駅(JR東海道本線)から勝川駅(JR中央本線)を結ぶ東海交通事業城北線。全線高架で複線と立派な設備を持ちながら、ディーゼルカーによるワンマン運転。日中は1時間に1本しか列車が来ないという、典型的な「都会のローカル線」である。
筆者は先日、名古屋を旅行した際に枇杷島駅から城北線に乗車した。早朝だったこともあり、乗客は筆者の他におじさんが1人だけ。枇杷島駅を出るとすぐ高架になって東海道本線をまたぎ、小田井駅付近では名鉄犬山線の高架をまたぐため、城北線はそれらの線よりさらに高い場所を走る。
小田井駅でいったん下車し、エレベーターを降りて地上から駅を眺めてみた。目の前に立ちはだかる鉄筋コンクリートの高架線は、まるで町を分断する巨大な壁のようだ。ちなみに近くには名鉄犬山線と地下鉄鶴舞線が接続する上小田井駅もあるが、小田井駅からは徒歩で10分程度。乗換客はさほど多くはないように思われた。
城北線の高架線は、中央本線の高架線とはつながらず……
小田井駅から勝川駅の手前まで、城北線は東名阪自動車道と並んで走る。終点の勝川駅は中央本線との接続駅だが、開業から20年近くもの間、2つの路線はつながっていない。中央本線の勝川駅が高架化された後も、城北線の線路とは分断されたままだ。
枇杷島駅と勝川駅を含めても全6駅しかなく、20~30分もあれば乗り通せてしまうほど短い城北線。ただ、全線高架なので車窓から名古屋の市街地を一望でき、まるで"空中散歩"をしているような気分を味わえる。
この長所を生かし、同路線では毎年1月1日に「初日の出号」を運行している。2011年も名古屋地区の日の出予定時刻(7時1分頃)に合わせて運転される予定で、乗客には干支の「卯」をあしらった陶器の置物がプレゼントされるという。