FXトレーダーは、時に"孤独"である。FXが理にかなった投資対象であることはもちろん分かっていて運用しているわけだが、一方で、世間では「FXはリスクの非常に高い投資」、場合によっては「ギャンブル」などといった偏見があることも知っている。そのため、相手を選んでFXの話をしている人も多いのではないだろうか。
また、FXのことが分かっている仲間同士であっても、あけすけに話ができるかというと、そうもいかないこともある。お金に絡むことなので、自分が運用している額でも、オープンにはしづらいものがあるし、大きく利益が出たときにあまりにはしゃいで喜びをあらわにするのも、なんだか自慢をしているようで落ち着かない。「まあ、損失を出しても痛くない程度の額でやっています」「少しばかり利益が出たけど、たいした額じゃないですよ」などと、FX仲間が集まっても、奥歯に物が挟まったような会話をやり取りすることになってしまうこともある。
このように他人の懐の中まで入りこんだ話を遠慮をするというのは、日本人の美徳の一つでもあるので、仕方のないことだが、本心を言えば、誰もが、他の人はどういう所でポジションを持ち、どういう所で決済するのか、そして利益を出したのか、損失を被ったのかというリアルな詳細を見てみたいという欲求は、あるのではないだろうか。
「他の人のトレードを見たい」という欲求を実現
このような願いを実現してくれるのが、FXコミュニティサイト『fx-on.com』である。「fx-on.com」には、「みんなのトレード」と「システムトレード」の二つの柱がある。このうち、きわだってユニークなサービスが「みんなのトレード」だ。
「みんなのトレード」は、誰もが参加できるデモ取引だ。会員登録は必要だが、費用は一切かからない。主要な通貨ペアはほとんど網羅しており、配信される価格も、ほぼリアルタイムの価格がそのまま使われる。これだけであれば、さまざまなFX会社が行っているデモトレードサービスと変わらないが、「みんなのトレード」のユニークな点は、他人のトレードの詳細を自由に見られることにある。もちろん、結果だけでなく、何時何分にポジションを入れて、何時何分に決済をして、どのくらいの利益が出たのか損失が出たのかまで、完全な詳細を見ることができる。つまり、デモトレードとはいえ、具体的に他の人がどんなトレードをしているかをすべて見ることができるのだ。
さらに、fx-on.comには専用のブログが用意され、Twitter(ツイッター)との連携もとられているので、気になるトレーダーが書いたブログを読んだり、ツイッターで質問をすることもできる(回答してくれるかどうかはトレーダー次第だが)。FXトレードを学ぶには、理論や技術といった基本を学ぶことも重要だが、上級者が実践したトレードから学ぶことで、"FX力"が高まるのではないだろうか。言ってみれば、"FX免許"を取るのに、参考書という「学科教習」や、デモ取引という「コース内技能教習」は、たくさんあるが、実践的に学べる「路上教習」にあたるものは、なかなか体験できなかった。「みんなのトレード」では、まさに仮免取得後の「路上教習」ができると言ってもいいかもしれない。
"集合知"を利用し、人気トレーダーが分かる仕組みに
といっても、厳しい目をお持ちの方は、デモ取引であることにひっかかりを感じるかもしれない。「デモ取引では、どんな大胆なトレード手法をすることもできる。一か八か好成績をあげるギャンブル的なトレード手法をとる人ばかりが上位に並んでしまうのではないか。それではあまり参考にならない」と言う人もいるだろう。確かにその考え方には一理ある。例えば、連勝記録をデモ取引で作るのは簡単だ。どれだけ含み損がでてもロスカットしなければいいのだ。長い時間かかるかもしれないが、いずれは含み益のでるところまで値は戻ってくる。
しかし、fx-on.comでは、このような問題は"集合知"によって解決されているという。ここがfx-on.comの最大のメリットといってもいいかもしれない。
「確かに、ちょっとこれはどうなのか? と首をひねるようなトレード手法をとられる方がいらっしゃるのも事実です。利益を上げるためではなく、目立つことによって、何かを期待されているような方です。でも、そういう方は、人気度のランキングでみると、上位には入ってこれないんですね」(fx-on.comを運営するゴゴジャン代表取締役の早川忍氏)。
fx-on.comでは、好きなトレーダーのシグナルを配信してもらうことができる(1トレーダー月額525円が必要)。トレーダーがデモ講座でポジションを入れる、決済をすると、そのシグナルが受けられるわけだ。それを利用して、リアルのFX口座で取引をするかどうかは本人次第。このシグナル配信を受信する人が多いトレーダーほど、人気度が上がっていく仕組みだ。
つまり、さまざまな方法で上辺だけの成績を作っていっても、結局多くの人の目によって、そのような人は排除されてしまうのだ。
「そこが集合知のいちばんのメリットだと思います」(早川氏)。人を騙して利益を得ようと企む人はどの世界にもいる。FX取引の世界でも、ブログなどで「500連勝中の驚異のトレーダーが教えるマル秘テクニック」とか、「100万円を1年で1億円にした驚愕のトレーダーが教えるマル秘テクニック」などと称して、高額の情報商材を売りつけようとする例は数多い。孤独に取引をしているトレーダーだったら、ついつい購入ボタンをクリックしてしまうこともあるかもしれない。しかし、fx-on.comの「みんなのトレード」では、そのようなトレーダーは、会員から無視されてしまい、浮かび上がってこれないのだ。
トレード手法を"惜しげもなく人に教える"雰囲気に
ところで、こうやって人気を得るトレーダーにはどういった報酬があるのだろうか。デモ取引なのだから、リアルな利益は得られない。しかし、fx-on.com内には、仮想通貨「On」が用意されていて、自分のトレードシグナルをだれかが受信すると、この仮想通貨がもらえるようになる。さらに、人気が高いと、fx-on.com側から投資顧問に選ばれ、FXオンライン講座を開設できるようになったりする。これも人気度によって仮想通貨Onがもらえる。この仮想通貨Onは、現金に換金することはできないが、他人の講座を受講したり、トレードシステムを購入する費用に充てたりすることができる。
ただし、投資顧問になるのは、そう簡単ではない。なぜなら、fx-on.com側がきちんと金融庁に投資顧問として登録するために、審査が厳格だからである。トレード実績が優れていなければならないのはもちろん、会員からの人気度も高くなければならない。そのためには、ただ好成績をあげるだけでなく。コミュニティ活動も重要だ。
「みなさん、自分のトレード手法を惜しげもなく人に教える空気ができあがっています。たとえば、ある取引規模の小さな市場が開いて、その1時間後に取引規模の大きな市場が開くという時間帯があるのですが、小さな市場の動きを見て、ポジションを入れると、ほぼ確実に利益があげられるというトレード手法を公開している方がいらっしゃいました。これなど、"教えてしまったらおしまい"ともいえるような比較的単純な手法なのですが、みなさんとても心が広いんですね」(早川氏)。
これがソーシャルネットワークの集合知効果だ。ソーシャルネットワークの世界では、情報は秘匿するよりも公開してしまった方が得になる。自分の知っている情報を公開すれば、それで人気が上がり、今度は別の関連情報が自然に入ってくる人のつながりができあがる。fx-on.comは、孤独な戦いを続けるFXトレーダーたちを結びつけ、トレーダーの底上げをしようとしているのだ。
次回は、fx-on.comのもうひとつの柱である「トレードシステム」をご紹介する。