──『はやぶさ』Amazon限定のメッキバージョンや、萌え擬人化フィギュア『はやぶさたん』など、派生商品への展開が非常に素早かったのも見逃せない動きでした

長谷川 イケる、となったらテンポよく突っ走ってしまう、アオシマらしさが存分に発揮された結果かと(笑)。『はやぶさたん』も、当社のカラーが遺憾なく発揮された好例でしょう。他のメーカーさんだと、こんな企画はまず通らないと思います。

こちらもすばやく商品化が実現した『擬人化フィギュア はやぶさたん イトカワ台座ver.』(手前)

『はやぶさたん』は、記念アイテム的なニュアンスが強い商品だと考えています。無事に「はやぶさ」が戻ってきたら、当然みんなで「よく頑張ったね」と称えて、労うような盛り上がりもあるだろう……といったことは、ニコ動やそこから派生した「はやぶさ」関連のムーブメントを見て予想が付きました。擬人化イラストを描いたりして共感しあうような場面もあるはずだから、そんなムードを盛り上げてくれるアイテムのひとつとして、擬人化フィギュアを出せばウケるだろう、と読んでいたんです。そして実際、予想したような盛り上がりが起きた。おかげさまで、この商品もなかなかご好評をいただきました。

このフィギュアは『現代萌衛星図鑑』の著者・しきしまふげんさんの描く擬人化はやぶさをモチーフに、しきしまさんに監修していただきながら造形したものです。『現代萌衛星図鑑』が話題になっていたことも、この商品を具体化するにあたって追い風になったところがありますが、これは狙っていたわけではなく、たまたまタイミングに恵まれた感じです。しきしまさんの描く「はやぶさ」と折よく出会えたのは幸運でした。

──それにしても、実質半年でまったくの白紙から市販にこぎ着けるのは容易なことではなかったと想像します。それも、これまであまり経験のないジャンルの商品ですよね

長谷川 そうですね。まあ、商品設計の段階で、なるべく短いスケジュールで進められるよう、割り切れるところは極力割り切った形で企画を詰めたところはあります。それにしても、6カ月間でリリースしてしまったのはありえないスケジュールだったと、振り返ってみて自分でも感じます。

高橋 版権のことも、なかなか大変だったよね。

長谷川 『はやぶさ』のパッケージにはJAXA(宇宙航空研究開発機構)のロゴが入っています。このロゴは、たとえ版権使用料がかかろうとも絶対に盛り込みたかったんです。「はやぶさ」自体は国の持ち物なので、商品化するに当たってどこかに許諾を取ったりする必要もなく、やろうと思えば誰でも商品化できるのですが、やはりJAXAから正式に許諾をいただいてロゴを掲げた公式商品として出したかった。そのことに、どれほどの意味があったのかは、正直よくわかりません。単に私の自己満足だったのかもしれませんが……。

──ユーザーからするとJAXAロゴが入ったことによるオフィシャル感はある種の安心感に繋がったと思いますし、パッケージを見た瞬間の納得度も違ったのでは

そういっていただけると、頑張った甲斐があります。でも、実際の交渉はタイトロープを渡るような感覚でしたね。JAXAの皆さんはとてもよい方たちだったんですが、最初は「はやぶさを市販の模型に……ですか?」と戸惑うような反応だったんです。それも当然のハナシで、これまで前例のないような相談が、日ごろあまり接点のないプラモデルメーカーから突然舞い込んできた状況ですから。

いまだからこそ笑いながらお話しできますが、実はJAXAさんから正式にOKをいただく前から、パッケージなどにはロゴが入る前提で進めていました。つまりは見切り発車で商品づくりを進捗させていたわけです。結果、JAXAさんからご快諾いただけたのでよかったのですが、仮にNGだった場合はいろいろなところに迷惑をかけることになるから、辞表を書いて『はやぶさ』のサンプルを割り、去っていたでしょうね(苦笑)。

それもこれも、すべては「はやぶさ」の地球帰還前までに商品をリリースしたい、そのためのスケジュールを守りたい、という思いから無理を承知で進めた感じなんです。……つづきを読む