「B-1グランプリ」はいわずと知れたB級グルメの祭典。出品されたB級グルメは投票され、富士宮やきそばや厚木シロコロ・ホルモン、横手やきそばといった有名メニューがグランプリに輝いてきた。2006年から毎年開催され、5回目となる今回は9月18日、19日に神奈川・厚木にて開かれた。

小田急が走らせる「B-1グランプリ号」でGO!

会場の最寄り駅が小田急小田原線の本厚木駅ということで、小田急電鉄も万全の輸送体制を整えた。もともと本厚木に停車する特急ロマンスカー「さがみ」の他に、普段は本厚木を通過する「はこね」「メトロはこね」も臨時停車させた。極めつけはB-1グランプリのために設定された「B-1グランプリ号」だ。この列車は新宿と本厚木を1日1往復。途中停車駅は成城学園前駅のみ。「B級グルメにまっしぐら! 」な列車である。

30000系EXEで運行された「B-1グランプリ号」

前面にヘッドマークを掲示

その「B-1グランプリ号」に乗車。新宿駅は09:49発。休日の午前中と言えば、箱根・江の島方面のロマンスカーが次々と発車する時間帯。そこに臨時特急のダイヤを組み込むなんてすごいぞ小田急! と思ったら、実はこの列車、普段の休日も回送列車として走っているとのこと。新宿駅に09:38に到着する「えのしま20号」が車両基地に帰るためのダイヤである。ちなみに本厚木発新宿行きの「B-1グランプリ号」は、新宿駅15:20発の「えのしま29号」で使用する車両を回送するダイヤを使っている。鉄道ファンにとって、回送列車のダイヤで列車に乗れるとは貴重な体験だ。

使用する車両は30000系「ロマンスカーEXE」。ロマンスカーの中では異端児で、ビジネス特急の性格が強い。なぜなら、ロマンスカーの代名詞ともいうべき先頭車展望席がないからだ。そして車両の構造も違う。歴代のロマンスカーは「連接車体」構造といって、車両の連結部分に台車を配置しているけれど、「EXE」は車体の両端に台車を配置する一般的な「ボギー車」になっている。連接車体は急カーブの高速走行に適する反面、1両あたりの長さは小さくなる。これに対してボギー車は急カーブは苦手な反面、1両の長さは大きくなり、空間にゆとりができる。

一部を除くロマンスカーを本厚木に停車(上)、B-1グランプリ号の発車案内は「臨時特急」

30000EXEは分割併合に対応した電車

つまり、展望室付きのロマンスカーはスピード重視、EXEは室内の快適性を最優先した車両というわけだ。天井が高く、登場当時はロマンスカーの中でもっともシート間隔が広かったという。ゆったりとくつろぎたいビジネス客や、4人向かい合わせの席にしたグループ旅行に最適な車両である。

EXEの特長はもう1つ。10両編成を6両+4両に分割できること。新宿から小田原行きの「さがみ」と江の島行きの「えのしま」を連結して走り、相模大野で分割してそれぞれの方向に走っていく。逆も同様で、それぞれの方向から来た列車が相模大野で併合し、1本になって新宿駅に向かうのだ。新宿駅付近は列車の本数が多いので、多方面への特急をたくさん走らせるには分割併合式のEXEが便利。「B-1グランプリ号」は併合状態の10両編成で運行した。

静かで乗り心地バツグン! 厚木で戦う準備ができた!?

新宿駅を発車した「B-1グランプリ号」は代々木上原までゆっくりと走り、高架の複々線区間を快走する。この区間は中央の線路が特急・急行用、端の2本が各駅停車用になっている。各駅停車を走行中に追い越す場面が楽しい。成城学園駅は地下になるが、他の高架区間は見晴らしも良い。快晴なら、多摩川を渡る鉄橋付近では富士山が見えるはずだが、残念ながら今日は夏の雲に隠れてしまった。今年は猛暑が続き、9月半ばでも真夏日の連続記録を更新しているという。

ゆったりした室内が特長

車いすスペースも用意。ベビーカーにも嬉しい設備だ

複々線区間を快走。展望座席はないけれど、運転席との仕切りはガラス張りで景色がよく見える

成城学園駅に停車

多摩川を越えたあたりで「B-1グランプリ号」のスペシャルサービスが行われた。厚木の名物「鮎の塩焼きせんべい」とウェットティッシュのプレゼントだ。B-1グランプリのフライヤーや厚木の観光パンフレットも添えられていた。そのパンフレットによると、「鮎の塩焼きせんべい」は、鮎の形を整えるため、石と石の間に挟んで焼くという。塩味、海苔味、ザラメなどが入っていて、どれも香ばしい。これから始まる「食の巡り逢い」への期待が高まってくる。

多摩川を越える。もっと晴れていれば富士山が見えるポイント

車内で特別プレゼントが配られた

(写真上)登戸 - 向ヶ丘遊園間は珍しい3線区間。上り線のみ2本あり、通勤ラッシュに対応する。 (写真左)プレゼントの中身は「鮎の塩せんべい」やウェットティッシュなど

ウェットティッシュは、フィンガーフードも多いB-1グランプリでは大活躍するだろう。気が利いてる。この他、車内では子ども向けに車掌さんの帽子を被って記念撮影するイベントも行われた。なんと、現役の車掌さんが帽子を被せてくれて、シャッターも押してくれる。鉄道好きの子どもに嬉しい催しだった。

車内メニューのお弁当で朝食をとって、会場での戦闘(?)に備える!

左が「ロマンスカーMSEランチBOX」、右が「ロマンスカーVSE弁当」。共に1,000円

本厚木駅到着は10:40。乗車時間は50分で、あっという間に到着したという印象。特急に乗らなくても、新宿から本厚木までは急行電車で約55分。所要時間は5分ほどしか変わらない。しかし、この日の本厚木行き急行は、B-1グランプリ目当てのお客さんが大勢乗って通勤電車状態だ。立ったまま、あるいはロングシートに詰めて座っての55分は体力が要る。ロマンスカーに乗ったおかげでB-1グランプリ会場まで疲れ知らず。これなら特急料金550円は安いと思う。

海老名車両基地を通過。箱根登山鉄道仕様の電車があった

厚木駅手前で見かけた「本厚木かかし祭り」の風景