――話は変わりますが、物語の冒頭、清子が涼しげな顔でヘビの皮を剥ぎ、捌くシーンがとても印象的でした。

「映画を見られた方の中で、特に男性があのシーンに食いつきますよね(笑)。あれは実は本物ではなく、美術スタッフさんが作ってくれた偽物です。でも、捌きながら『私、きっと、普通にヘビを捌けるだろうな』って思ってました(笑)」

――圧倒的ともいえる島のさまざまな自然に触れて、感じたことはありますか?

木村 : 「今回は自然も一人の出演者なんだ、という感覚がすごくしました。自然と共鳴し合って一つの作品を作り上げていく感覚と言っても良いでしょうね。実はクランクイン直後の3日間、台風で撮影が中断してしまったんです。その時は自然の脅威を感じましたが、その後、敬意を払って撮影に臨むと、出てほしい位置にぴったり月が出たり、雨が降って急に止んでほしいシーンではその通りになったりしたんです。まさに自然の恩恵とも言える不思議な体験をしました」

――定番の質問で恐縮ですが、もし、無人島にひとつだけ持っていくとしたら?

木村 : 「モノじゃなく人がいいですね。特にサバイバル能力の高い人がいいです(笑)」

――では、木村さんの中で「必要なモノ」「必要でないモノ」の判断基準って何でしょう。

木村 : 「私、最近は特になんですが、過去にこだわらない人間になってきたんです。卒業アルバムと卒業証書を捨てようとして、母親に怒られたことがありますし(笑)。でも、モノがモノを超える瞬間って確実にあって、それに触れた時、自分の中のかけがえのない思い出がよみがえったり、心の温度がちょっと上がったりするモノ、それが自分にとって必要なモノですね」

――その意味では、今回の作品は木村さんにとっても得るモノが大きかったと言えますね。

木村 : 「今まで薄幸な役が多かったので(笑)、最初は『何で私にこの役が来たのだろう?』って不思議に思いましたけど、振り返ってみると、新しい自分を解放する力を島にもらったような気がしますね。原作とはまた違った形で、とてもエンターテイメントな作品に仕上がっていますので、ぜひ単純に、気楽に見ていただければと思います」

確かに、これまで彼女が演じてきた役を想像してこの映画を鑑賞すると、意外な印象を抱くかもしれない。しかし、実に自由で、のびのびかつイキイキとした彼女の笑顔を見ると、今までにないポジティブな力強さと、コメディエンヌとしての才能をきっと感じることだろう。

映画『東京島』は8月28日よりシネスイッチ銀座ほかで全国公開

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