先週末のストレステストの結果に関しては、賛否両論でしょうか。欧州当局筋としては、懸念される金融機関は想定内で、他も多少の資本増強ですむとみているようですが、市場関係者の方では、ストレステストの審査内容において国債に絡んだ線引きが甘いとみているようです。

ヘアカット部分でも少ないとみていますし、デフォルトの危険性もないそうですが、リスク管理という点では、最悪シナリオにはなっていない? というところでしょうか。今回のテストの結果において資本不足と指摘された金融機関は7行。ただ、そのうち、ドイツ及びギリシャの金融機関はすでに国有化されており、それ以外はスペインの貯蓄銀行、と以前から話題になっていた名前ばかり。保有国債に対してのシナリオもなく、その上今後の景況感においても強気なのか緩やかな景気減速が基本シナリオになっており、去年行われたアメリカのストレステストと比較すると、かなり甘いシナリオではないかという意見は市場関係者からも多く聞かれます。

いずれにせよ、週明けのアジア及び欧州市場の展開を見るまでは、ユーロおよびリスクの方向性は出にくいかもしれません。

こういった中、ユーロ側の話題としては各金融機関の今後の業績発表の中で、どのようなスタンスを取るのか(今週は欧州系金融機関の発表があります)が注目される中、別のリスクシナリオとして米経済の話題はチェックしておきましょう。

今週は来週に向けての地ならし状態ともいえ、週前半の住宅関連の数値において、FRB議長が示した追加的な措置の可能性がるのかどうか。また、現状懸念されている米消費に加え、労働環境も絡んで、週後半の新規失業保険申請件数、GDP、雇用コスト指数、さらに、シカゴ購買部協会景気指数と来週以降の雇用に向けての数値内容の積み上げの週となりそうです。よって、米経済に関しては、NY時間は意外と一喜一憂しやすいのではないでしょうか。

これらの注目材料の中で、週中に地区連銀経済報告が発表されます。先週のバーナンキFRB議長の議会証言を受けて、地方経済の状態ならびに格差に関してどのような環境にあるのか。また、今朝発表されたFDICによれば、地方の金融機関が新たに7行破たんしたことが明らかになり、今年ですでに103行になっています。先週の米金融機関の業績発表においては、不良債権引当金の減少に伴って黒字にはなっていますが、新規融資額の伸びが頭打ち状態になっています。

融資においては、新規需要の方が後退しており、需要者側においても現状の債務返済を優先させる傾向になっていることを考えれば、慎重にならざるを得ない状態でしょうか。はたして、景況判断がどのように出るかにも注目しておきたいです。

そして、ドル軟調という展開の中、ドル円の水準で見れば、介入警戒感という話題も多少出てきています。日銀及び政府の金融政策の可能性はあるのか?と思いますが、現状の超低金利水準、前回の日銀の発表、そして財務状態を考えれば、どちらもほぼ手詰まり状態。

また、ホワイトハウス側のスタンスとしては、対中国のスタンスも含めて、アメリカの輸出を伸ばすことを目標に掲げています。その上、米経済に対する警戒感をFRB自体が持っていることからドルの地合いは弱い状態になっており、ドルの地合いにおいて日本側が単独に動くことはかなり厳しい状態にあると思います。

むしろ、円売りの可能性があるとすれば、日本側のかなりネガティブな話題(株式市場にとっては良くないが)か、外部要因として地政学上リスク(北朝鮮?)、もしくは、リスク思考の展開・ドルの地合い回復といった不美人投票の中で、円が最下位になる状態に転じなければ、難しいのでしょうか。

その上、欧米の景況感に対する不透明感がある状態では、本邦輸出筋からの為替ヘッジの動きも上値で出てくる可能性があり、リスク思考回復が今週の地合いでどの程度円売り要因として働くかどうか。ドル円の水準が84-85円に近付くにつれて、市場の警戒感は高くなると思われますが、仮に日銀(介入権限は財務省側にありますが)の動きがあったとしても、アメリカおよびドルの地合いに変化なければ、スムージングが限度ではないかと市場ではみています。

ただ、テクニカル的に84円台から下は、主だったサポートがないことから、不美人投票とはいえ、円が好感された場合には要注意です。

こういった不透明感が漂う中で、資本の動きとしては好調な市場に流れやすくなります。アジア時間でのイベントとして、今週RBNZが政策金利を引き上げる予想はすでに織り込まれている中、オーストラリアの物価指数がどのような数値になるか。前週のRBA総裁のコメントでは比較的ポジティブなコメントにはなっていますが、外部要因、特に中国経済に対する見通しに加え、欧米経済の状況次第でのリスク許容度次第という一面もあり、かなり明るいとは言い切れない状態です。

アジア時間の話題としては、日本側の話題よりは注目しておいた方が良いでしょう。堅調な数値となれば、来月への思惑が出てきそうですが、中国の経済指標も最近やや頭打ち傾向になっています。オーストラリアも総選挙を控えていることから、RBAとしても今後の判断として今週の物価指数には注目していると思います。

また、ブラジルでもCPIは3年ぶりに前月比でマイナスに転じたことで、じわじわと欧米経済の後退という地合いが需要後退+過剰設備、などのマイナス面が出てくるとなると、資源・新興国からの回避の動きが出やすいかもしれません。

市場ではニ番底があるのかないのか、リスク思考に転じるべきか否か、など市場・当局者の間でも賛否両論な状態では、あえて方向性を持つのは週明けの欧州市場が開いての地合いを確認した上で考えておきましょう。また、IMM通貨先物ポジションにおいては、AUD(豪ドル)がネットロングポジションが増加したぐらいで、主要はどちらかというと縮小傾向。市場においても方向感がなくなりつつあるという見方もありますが、夏休み前のポジション縮小の動きという見方もあります。

ストレステストの後に、欧州系企業の業績発表も相次ぎますので、欧州時間序盤からの株式市場の展開をにらみつつ、リスクの許容度の展開がどうなるかを見ておきましょう。ドル、ユーロ、そして、円の不美人投票の順位の変動次第で、右往左往しやすいので、方向を決めつけずに、着実にポイントを積み上げていきましょう。

IMM通貨先物ポジション(7月20日時点)

7/20/10 week 7/13/10 week
Net 40,911 47,359
ユーロ 7/20/10 week 7/13/10 week
Net -24,251 -27,050
ポンド 7/20/10 week 7/13/10 week
Net -26,767 -34,671
CAD 7/20/10 week 7/13/10 week
Net 16,424 22,038
AUD 7/20/10 week 7/13/10 week
Net 32,886 23,480

今週の主な予定

7月26日(月)
(日)6月貿易統計
(豪)第2・四半期PPI
(米)6月シカゴ連銀全米活動指数
(米)6月新築1戸建て住宅販売
<企業決算>花王
7月27日(火)
(日)6月企業向けサービス価格指数
(ユーロ圏)8月独消費者信頼感指数
(ユーロ圏)6月M3
(米)5月S&Pケース・シラー住宅価格指数
(米)7月消費者信頼感指数
(米)財務省2年債入札
(その他)インド金融政策決定会合
<企業決算>Canon、JFEホールディングズ、JR東日本、UBS、DuPont,
7月28日(水)
(豪)第2・四半期CPI
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)6月耐久財受注
(米)財務省5年債入札
(米)地区連銀経済報告
(ユーロ圏)7月独消費者物価指数速報値
(ユーロ圏)ECB 3カ月物長期リファイナンス・オペ実施
<企業決算>NEC、コマツ、Boeing
7月29日(木)
(NZ)ニュージーランド中銀、政策金利発表
(日)6月商業販売統計
(ユーロ圏)6月仏生産者物価指数
(ユーロ圏)7月独失業率
(ユーロ圏)7月景況感・業況感指数
(米)新規失業保険申請件数
(米)財務省7年債入札
<企業決算>Volkswagen、Exsson Mobil、Sharp、Sony、Nintendo、Softbank
7月30日(金)
(日)6月全国コア消費者物価指数
(日)7月東京都区部コアCPI
(日)6月有効求人倍率
(日)6月完全失業率
(日)6月家計調査
(日)6月鉱工業生産速報
(ユーロ圏)7月消費者物価指数 速報値
(ユーロ圏)6月失業率
(米)第2・四半期雇用コスト指数
(米)第2・四半期GDP速報値
(米)7月シカゴ地区購買部協会景気指数
(米)7月ミシガン大消費者信頼感指数 確報値
<企業決算>Honda、MUFJ、ANA、Hitachi