司法書士法人新宿事務所は、消費者金融やクレジットカードでキャッシングができる限度額を、年収の3分の1以下に規制する「改正貸金業法」が18日に完全施行されるのを受け、「自己破産手続のノウハウと作成書類のひな形等」をセットにした自己破産手続キットを、事務所受付及びインターネットで無料配布する。無料配布受付ページはこちらを参照のこと

同法の完全施行により、同事務所では3つの問題点を挙げている。一つ目が、景気へのマイナス効果。日本貸金業協会によると、2008年の消費者金融やキャッシングの個人消費者向け貸付残高は約18兆円で、現在の利用者の50%が総量規制に抵触するため、消費者金融は貸し出しを抑制すると回答。これにより、単純に18兆円の50%である9兆円が家計から消えて消費に回らなくなるとされている。

二つ目が、世帯年収の3分の1までしか借りられない配偶者貸付制度の問題。今後、主婦が借入を行う際には、夫の年収を証明する書類の提出が必要になる。さらに、ほとんどの消費者金融が、事務処理の煩雑化と不採算を回避するために、専業主婦への貸し付けを中止する方針を明らかにしているという。「つまり、今後、専業主婦はキャッシングが利用できなくなります」。

日本貸金業協会によると、現在、借金をしている専業主婦約150万人のうち、夫に借金を秘密にしている数が全体の約4割にあたる60万人と発表。これは日本の夫婦の50組に1組という割合だとしている。「事前の認知もセーフティーネットもほとんどなく突然キャッシングができなくなれば、すでに借金をしていた主婦の資金繰りが予想外に悪化して破綻に追い込まれ、60万人もの主婦の秘密の借金が夫に発覚してしまうケースが容易に想像されます」。また、妻の多重債務が発覚してしまうケースによって、夫婦の信頼関係が崩れ、自殺、離婚、DVの急増が懸念されるという。

三つ目がヤミ金被害の急増と「法律相談難民」の大量発生の懸念。日本消費者金融協会によれば、2009年度時点の消費者金融利用者の数は1,380万人で、国民の9人に1人の割合。その50%が総量規制に抵触するとなると、資金繰りに窮した約700万人の利用者のその後の混乱が懸念されている。

日本貸金業協会のアンケートによると、総量規制で新たな借り入れができなくなった場合にどのように行動するかという質問に対して、「債務整理手続きを行う」や「家族・親族・友人から借りる」といった回答が約18%(約126万人)。「ヤミ金融等非正規業者から借りる」といった回答も約2%(約14万人)あり、合計で約140万人もの人々が資金繰りに窮して債務超過状態に陥る可能性があるという。「これはあくまで最悪の想定ですが、2008年度の司法統計によれば、破産件数は14万件であり、その10倍近い140万人もの債務超過の人々が、合計でも4万人程度しかいない弁護士や司法書士に相談をしようと殺到した場合、とても対応できず、数十万人規模の債務整理に関する『法律相談難民』が発生する可能性があります」。

以上のような事態が懸念されるにも関わらず、政府及び各地方自治体は今のところ相談体制の拡充や緊急支援などのセーフティーネットの準備を整えていない状況。そのため、債務超過に陥り、すでに自己破産手続きを決意した人に対し、専門家を通さず、自分で早期・安価に自己破産手続を行うためのノウハウと必要書類を提供することにより、すみやかに経済的再生を果たしてほしいと考え、今回の無料提供に踏み切ったという。

同事務所は「改めて、報道関係各位に対して、総量規制の導入に伴う混乱を回避するための、国民への分かりやすい情報提供をお願いすると共に、政府によるセーフティーネットの拡充と、急激な景気落ち込みに対応する経済対策の準備を強く希望いたします」と呼びかけている。