第5文型で考える
――『Evernote』利用者の多くが最初にとまどうのはノート・ノートブック・タグの理解だと思いますが、アドバイスをいただけますでしょうか
英語の第5文型(SVOC)に当てはめるとわかりやすいと思います。
自分を主語(S)とすると、ノートブックは動詞(V)、ノートは目的語(O)、タグは目的語の意味をおぎなう補語(C)の位置づけになります。
僕は連絡先を書いたノートを「参照する」というノートブックに入れているのですが、
僕=(S)は
「参照する」という名のノートブックに格納する=(V)
山田さんの連絡先情報を記したノートを=(O)
(そのノートには)Aプロジェクトというタグがついている=(C)
つまり、
僕はAプロジェクトのメンバーである山田さんの連絡先情報が書かれたノートを「参照する」というノートブックに入れている、ということです。
おわかりいただけたでしょうか。
『Evernote』の「ノート」はテキストをはじめ画像・音声ファイルにも対応できるWord、テキストメモのようなものです。「ノートブック」はそれらをまとめて入れるフォルダと考えればいいでしょう。
「ノート」は一つの「ノートブック」にしか入れられません。「タグ」は「ノート」の細かい分類や属性を表します。「タグ」は「ノート」に複数つけることができます。
あとで特定のノートを探し出したいときは、まずノートブックを指定し、タグで絞り込むと目当てのノートが出てきます。
仮にたくさんのノートの中から「四国の温泉に旅行したときのノート」を探し出すとします。まず「旅行」というノートブックを指定します。すると「旅行」ノートブックの中にあるすべてのノートが表示されますから、さらに「四国」「温泉」というタグを追加して一つのノートに絞り込む。これが基本的なノートの検索方法です。
ただ、これはあくまでも一例ですし、どんなノートブックやタグをつくるかも個人のアイデア次第です。
タグをつくるポイント
――ついタグを作りすぎてしまいます。何かコツはありますか?
『Evernote』のタグは階層化できるので、子タグを活用すると整理できると思います。とはいえどうしてもタグは多くなってしまうので、僕はタグの頭に日付を入れ、処理が終わったらさらにアルファベットの「Z」をつけるようにしています。
「0610 Aプロジェクト」 ⇒ 「Z0610 Aプロジェクト」
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そうするとタグが一番下に移動するので、必要なタグだけが上に表示される。タグを探してスクロールする手間がはぶけます。
僕も始めは試行錯誤で、タグをつくっては消すを繰り返しました。タグをつくるときは、あいまいさや重複を極力排除するといいと思います。例えばタスクを管理するときに「すぐにやる」や「次にやる」といったタグをつけるとまぎらわしいので、僕は1か月分の日付をタグにしています。
今日が3日だとしたら、「3日対応」というタグのついたノートに取り組めばその日の仕事ができるようにしています。メールをはじめたくさんの情報をやりとりしますから、「何」を「いつやる」かと先に決めておくと安心です。ノートをつくったらすかさず日付のタグをつけています。
余談ですがGmailのラベルをこれと同じように使うこともできます。このメールには何日に返事をしようと決めて割り振っていけば、返信し忘れることもなくなります。
特に『Evernote』を使い始めたばかりのときは、ノートはそっちのけでタグをいろいろと考えこんでしまいます。本当はノートに書くことが大切なはずなのに、タグに気を取られてしまう。
そうした状況に陥らないためにも、僕はひんぱんにiPhoneからで『Evernote』へメールを送っています。メールにはアイデアだけを書いて、すぐに送信。タグやノートブックをどうするかは考えません。『Evernote』にはあらかじめメールで送られてきたものを入れる「ようこそ」というノートブックを用意しておき、あとで適当なノートブックに振り分ける。こんな考え方を身につけておくと、快適に『Evernote』を使うことができます。
「ノート」は女の子の電話番号?
――細かい分類はあとで考えればいいのですね
一生懸命タグをつけても使わなかったり、単にメモするだけですんでしまったりすることも多いんです。ちなみに僕はそういうノートでも、削除しないで「探さないでください」というノートブックに放り込んでいます。あとで「あのとき何か書いたな」と思ったときに見られるようにです。削除してしまうと検索ができませんし、そのうちに重要なことを忘れているような気がしてきて落ち着かないですから。
ノートはいわば合コンで出会った女の子の電話番号です(笑) 本命は別にして、それ以外もとりあえず持っておく。すぐに使わないからといって消してしまうと、あとで後悔するかもしれない。僕の「探さないでください」というノートブックはその防止のためにあります。
――無料から有料サービスに切り替える基準はありますか?
実際に使ってみて、サービスに納得したらすぐに切り替えればいいと思います。無料サービスは容量がいっぱいになるのも早いですし、だからといってちびちび使うのもどうかと。『Evernote』の目的は個人の知的生産性の向上なのに、もったいないことです。それくらいなら有料に切り替えたほうがいい。月額5ドル、年額だと割引がきいて45ドルですから、思う存分『Evernote』を使ってほしいですね。
次回は「Evernoteのウェブクリッピング活用術」についてうかがいます。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
中国新聞社記者、全国紙系編集プロダクションのライターを経て入社した企画会社で2008年、良書の著者へのインタビュー音声を無料で配信するポッドキャスト番組「人生を変える 一冊」をスタート。配信後2カ月でiTunes store podcastビジネスランキングで21日間連続1位を獲得、月間20万DLの人気番組に成長する。独立起業した現在は、インタビューやライティングに加え、ポッドキャストを軸にしたコンサルティング、コンテンツプロデュースなどを行っている。
KIQTAS(キクタス)ウェブサイト
早川洋平ブログ
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