2010年3月13日に公開された『東のエデン劇場版II Paradise Lost』。そのBlu-ray&DVDが8月4日にリリースされるが、"初回限定生産"の「BDプレミアム・エディション」には、特典として神山健治監督書き下ろしドラマCD『No.7』が同梱される。
ドラマCD『No.7』は、『東のエデン』のTVシリーズをはじめ、2本の劇場版にも登場しなかった謎のセレソン「No.7」の物語が描かれる。「セレソンNo.7」こと篁(たかむら)カオルの職業は「詐欺師」。そんな彼と、滝沢朗、物部大樹、ジュイスとのストーリーははたしでどのように語られるのか? そこで今回は、ドラマCD『No.7』の収録後に、セレソンNo.7の篁カオル役を演じる神谷浩史と神山健治監督が語った作品の概要などを紹介しよう。
神谷浩史×神山健治監督が語るドラマCD『No.7』
――まずは監督にお伺いしますが、「No.7」とはどんなセレソンなのでしょうか?
神山健治監督「まず詐欺師ということが決まっていまして、当初は出さない予定だったのですが、けっこうカッコいいヤツで、クールに何かをやりおおせていたら逮捕されちゃったヤツという設定だったんですね。ある意味、滝沢朗の裏と表みたいなキャラクターで、"黒い滝沢"みたいなヤツだよねっていう話もしていたのですが、やはり本編中に出すメリットがあまりなく、結局出すことができないままペンディングになっていたんですよ。それがこのたび、Blu-rayを出すにあたって、ドラマCDを作る機会をいただいたので、せっかくだから隠し玉のキャラクターをちょっと登場させてみようかということになったのが、今回『No.7』が出てきた理由ですね。それで、羽海野(チカ)さんとビジュアルをどうしようかという相談をしていたときに、声のイメージだと神谷(浩史)さんかなという話をしたら、先生が『それならビジュアル的にも神谷さんに似せたい』ということをおっしゃって、ラフスケッチを何点か作っていただいたんですよ。それに今回は着彩までしていただいて、こういったキャラクターができあがったという感じです」
――今回のドラマCDは、本編でいえばどのあたりのストーリーになっていますか?
神山監督「エピソード的には、滝沢がまさにワシントンD.C.に向かおうとした直前のエピソードになります。なので、TVシリーズでいえば"エピソード0"という感じで、滝沢君が記憶を消す前に、ワシントンD.C.に向かおうとした成田空港での出来事が中心になっています。ドラマCDは4章に分かれていて、まさに第4章で滝沢と接触するのですが、いったいワシントンD.C.に行く前の滝沢はどうだったのか、記憶を消す前の滝沢に直接会った唯一の男というカタチで『No.7』は登場します」
――羽海野さんが描いたイラストを最初に見たときの印象はいかがでしたか?
神山監督「カッコいいヤツで、でも詐欺師で、女の子も騙しちゃうようなヤツなんですよという話をしたところ、非常に羽海野さんの琴線にふれた部分があったみたいで(笑)、『メガネも掛けさせちゃいましょう』とか、打ち合わせをしているうちに徐々にカタチになっていった感じです。"黒い滝沢"という風には言っていたのですが、滝沢君は黒髪なので、『私、白い髪も好物です』ということで、髪の毛の色はグレーっぽい感じに。とにかく、滝沢とは相反するような感じがいいのかなということで、こういうイメージになっています。先生もやはり神谷さんを意識されたという風には言っていました」
神谷浩史「そういった経緯で生まれたキャラクターだったんですね。まずは先に台本が僕の手元に届いたんですよ。その後に羽海野先生がお描きになったという、"マル秘"と書かれた原画のコピーをいただきました。もともと僕は羽海野先生の絵が大好きなので、羽海野先生が描かれたキャラクターを演じられるということが非常にうれしかったです。絵を拝見させていただいて、ドラマCDにしか登場しないキャラクターにも関わらず、本当に先生も気合を入れて描いてくださったんだなと思いました」
神山監督「かなり思い入れていただいたようです」
神谷「メガネをかけて、革ジャンをはおって、電話を片手に話している彼の姿や表情は、やはり詐欺師然としているんですけど、実はメガネを外している絵もありまして、それは若干幼さというか、あどけなさの残った表情になっていました」
神山監督「ただの悪いヤツではなくて、ちょっと優しさもあるような感じですね」
神谷「そうですね。そういった印象は伝わってきました」
――実際に声をあてられた感想はいかがでしたか?
神谷「いやもう必死ですよ(笑)。本当にビックリするぐらいのセリフ量がございまして、ドラマCD全体の8割ぐらいがカオルのセリフだったといっても過言ではないぐらいの量だったんですけど、それだけの量を一人で喋ったというのは初めての経験でしたね。最初に台本をもらったときは冗談かと思うくらいの量でした。」
神山監督「セレソンを担当された方は皆さん、主役以上に、各ドラマでちょっと大量に喋っていただくという、そういう企画になっちゃいまして(笑)。ちょっとうれしくなっちゃうんですね、こっちも」
神谷「(大爆笑)」
神山監督「この人にやってもらえるのかと思うと、僕なりのサービス精神で、もうちょっと欲を出して紹介したいなとか、もうちょっと皆さんの声を聴きたいなとか、迷惑を顧みずに、ついついセリフを増やしちゃうんですよ。実は今回5ページぐらい減らしているんですけど……」
神谷「え、5ページも減っているんですか?」
神山監督「いや、5ページ減らしたんですけど、2ページ復活しちゃって(笑)。それでちょっとやばいなと思いつつも、やはりうれしくなってお願いしたという感じです」
神谷「そのようにおっしゃっていただくのは僕としてはすごくありがたいことなんですけどね。『東のエデン』はTVシリーズから拝見させていただいていて、とっても好きな作品だったので、台本を読めば当然、『ああ、そういうことだったんだ』って思えるような内容になっているのですが、それが逆にものすごいプレッシャーになりました。アニメーションとちがってドラマCDには絵がないので、絵に助けてもらうということができないじゃないですか。なので、自分の中からすべてを出さなければならないということがプレッシャーになって、かなり手こずりました」
神山監督「すばらしい出来になっていると思いますよ」
神谷「いえいえ。とりあえず収録も無事終了して、こうして取材を受けているわけですが、早く帰りたいです(笑)」
神山監督「終わった直後はやっぱりキツイですよね(笑)」
――神山監督と神谷さんが一緒にお仕事をなさるのは今回が初めてということですが
神谷「何か妙な縁だと僕は一方的に思っているんですけど」
神山監督「いや僕もそうですよ。初めてお会いしたのは、実は仕事とはまったく関係ないところだったんですよ。神谷さんはお仕事だったんですけど、ちょうど試写会イベントで豊洲に神谷さんがいらしたときに、たまたま僕も羽海野先生と豊洲にいて、ご挨拶させてもらったのが最初ですね。僕も勝手に『これはもしかしたら何かの縁かも』と思っていたんですけど、なかなかお願いできるスケジュールがなくて……。今回ダメ元でお願いしたのですが、こういう機会を持てて本当に良かったと思っています」
神谷「本当に偶然でしたよね。ちょうどイベントの一部と二部の間に休憩時間があったのですが、その間は豊洲の映画館の中にある、いわゆる"VIPルーム"でお待ちくださいといわれまして……」
神山監督「"滝沢の家"と呼ばれていたところですね」
神谷「『すげえ、アニメで観たところだ』って思いまして(笑)、それで僕は『今、東のエデンのモデルになった豊洲のシネコンにいますよ』ということを羽海野チカ先生にメールさせていただいたんですよ。そうしたらすぐに電話がかかってきて、『今、神山監督と一緒にエデンカフェにいたんですよ』って(笑)。『今、僕はVIPルームにいますけど』って言ったら、『VIPルームは見ていない』とおっしゃられたので、『時間があるので、もしよろしければいらっしゃいますか』ってお誘いしたんです。そのときに一緒にお話したのが初めてでしたね」
神山監督「そうですね。そんな縁だったんですよ」
神谷「それが最初で、今回3回目なんですけど、2回目は今年の3月末にあったアニメアワードの授賞式のときに、たまたま隣の席に神山監督が座っていらっしゃったんですよ」
神山監督「あれもたまたまの偶然でしたね。神谷さんがいらっしゃるというのはわかっていたんですけど、席が隣になるとは思っていなかったです」
神谷「僕も神山監督がいらっしゃるのは存じ上げていたんですけど、まさか隣の席だとは思わなかったです。そんな妙な縁ですね」
――神谷さんは『東のエデン』が好きだったとおっしゃっていましたが、作品についてはどのような印象をお持ちですか?
神谷「神山監督の作品は以前にオンエアされていたものから拝見させていただいていたので、若干ファン目線のようなコメントになってしまいますが……、神山監督の新作で、しかも以前からお世話になっている羽海野チカ先生との組み合わせということもあって始まる前から注目していました。本当にいろいろと面白い要素があって、言いたいことは一杯あるのですが、その中でも特にエンディングが好きでした。オープニングやエンディングは毎回同じものなので、たとえばビデオなどで観る場合は飛ばしてしまったりするじゃないですか。でも『東のエデン』に関しては、オープニングとエンディングもちゃんと観ちゃうんですよ。そこまで含めて、ちゃんと世界観が構築されている。キャラとしてはパンツ君が大好きです(笑)」
神山監督「パンツは、愛されていますね(笑)」
神谷「あいつは絶対的に愛されるに決まっているだろうっていうキャラですもんね。1枚しかもっていないズボンが風に飛ばされたから引きこもりになったという設定が素晴らしい!(笑)」
神山監督「根はいいヤツなんですけど、強がったりしていて」
神谷「そして檜山さんの声がまたすばらしくて、車にはねられたときはどうしようかと思いましたが、最終話で生きていてよかったです」
神山監督「羽海野さんからもそういわれました。『ひどすぎます』って(笑)」
神谷「溝にボタって落ちて、最後に花が落ちるみたいな」
神山監督「どうみても死んでますもんね」
神谷「絶対に死んだみたいな演出になっていたんですけど、最後に病院で横たわっている姿を観て安心しました」
――篁カオルというキャラクターがいつかアニメになって動いてほしいと思いますか?
神谷「それはありますね。やっぱりアニメーション監督でいらっしゃいますから、ぜひ篁カオルというキャラクターが動いているところを観てみたいです。先ほど、ドラマCDは自分の中から全部を出さないといけないと言いましたが、アニメーションは絵があり、それに助けられる部分があるので、より自信を持って音を提供できるのではないかと思っています。ぜひそういう機会があれば、トライしてみたいですね」
――その場合、どんなストーリーになると思いますか?
神谷「全然、想像もつかないです。でも彼は捕まっていたから、ちゃんと全部の記憶を持っているわけじゃないですか」
神山監督「そうなんですよ。あまり言ってしまうのもあれなのですが、"エピソード0"としても重要だけど、もしこの後に滝沢に何かがあれば、そこにも絡めるかなり重要なキャラクターでもあるんですよ」
――もし次があるとすれば、このドラマCDがその伏線になるのでしょうか?
神山監督「次の扉を開ける鍵にはなっていると思います、実は。なので、ぜひ聴いていただきたいですね」
――それでは最後に、ドラマCDを楽しみにしているファンの皆さんへのメッセージをお願いします
神山監督「本当に隠し玉のキャラクターで、設定はあってもこのまま埋もれていくのかなと思っていたのですが、こういう機会をいただきまして、ダメ元で、神谷さんをほぼ当て書きで書かせていただき、今回は本当に無理をいってお願いしたんですけど、神谷さんの持っているすばらしい部分をフルにキャラクターのほうに活かさせていただけたのではないかと思っています。是非このセレソンNo.7のドラマCDをBlu-rayの映像とあわせて聴いていただいて、さらに続くかもしれない『東のエデン』の世界観のイメージを膨らませていただけるとうれしいなと思っております」
神谷「『東のエデン』という、僕の大好きなタイトルにこのようなカタチで関わらせていただけて、本当に幸せです。非常に興味深いエピソードで、『裏ではこういうことが行われていたんだ』とか、『ここから第一話に繋がるんだ』とか、本当にいろいろなところで納得ができて、より本編に興味を向けられる内容になっていると思います。ただ残念ながら、本編に突入する前にカオルは逮捕されてしまうのですが、なぜ彼が逮捕されてしまったのかというところも描かれていますので、ぜひこの謎に包まれた"セレソンNo.7"の篁カオルのエピソードも含めて、『東のエデン』という作品を楽しんでいただけたらいいなと思います」
――ありがとうございました
ドラマCD「No.7」が特典として同梱される「東のエデン 劇場版II Paradise Lost BDプレミアム・エディション【初回限定生産】」は、2010年8月4日の発売予定で、価格は10,290円。
タイトル | 東のエデン 劇場版II Paradise Lost BDプレミアム・エディション【初回限定生産】 | ||
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同梱物 |
・神山健治監督書き下ろしドラマCD「No.7」 ・豪華100Pブックレット 「No.7」設定資料&美術ボード ・DVD「劇場版II Paradise Lost 特典ディスク」(世界初! ビジュアルコメンタリー&4/24オールナイトイベント模様収録) ・中村悟総作画監督描き下ろしイラスト 外箱 ・『劇場版II』本編フィルムブックマーク ・森美 咲が振り返る「東のエデン」完全年表 |
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2010年8月4日 | 価格 | 10,290円 | |
タイトル | 東のエデン 劇場版II Paradise Lost BDスタンダード・エディション | ||
同梱物 |
・『劇場版II』本編フィルムブックマーク(初回生産分のみの特典) ・森美 咲が振り返る「東のエデン」完全年表 |
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発売予定日 | 2010年8月4日 | 価格 | 7,140円 |
タイトル | 東のエデン 劇場版II Paradise Lost DVDスタンダード・エディション | ||
同梱物 |
・『劇場版II』本編フィルムブックマーク(初回生産分のみの特典) ・森美 咲が振り返る「東のエデン」完全年表 |
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発売予定日 | 2010年8月4日 | 価格 | 4,935円 |
発売元 | アスミック/フジテレビ | 販売元 | 角川映画 |
イラスト/羽海野チカ (C)東のエデン製作委員会 ※仕様などの詳細については変更される場合がある |