一般社団法人「生活サポート基金」(東京都中央区)をご存知だろうか? ノーベル平和賞で有名になったバングラディシュのグラミン銀行が実施しているマイクロファイナンス(小額融資)の考え方を生活再生ローンに取り入れ、生活が困窮した人などへ無担保、小額融資を行っている法人だ。

「生活サポート基金」が入っている建物は、歌舞伎座のすぐ近くにある

「自分には関係ない」と考える人は少なくないかもしれない。しかし、経済不況などの影響などから「生活サポート基金」への相談者は増加しているだけではなく、その相談内容も大きく変化してきているという。

もともと「生活サポート基金」は多重債務の問題への取り組みを目的にして設立され、2006年から貸付事業を開始した。だが、貸金業法の改正や経済状況の悪化により、2009年度は多重債務よりも、家賃滞納、公共料金・税金未払いなど生活困窮による相談が中心となってきた。

貸金業法改正によって、消費者金融などからの借入れがそもそも困難となっており、また過去に債務整理を行っていれば、当然どこからもかりることはできないのが現状だ。さらに、雇用不安定、収入減、離職などが原因で、生活費の不足に苦しむ人々が急増している。ニュースでは見聞きしている問題が、ここではひしひしと実感することができる。

「なんとなく、どうにかうまく改善できると考えている人は多いのではないかと思います。しかし、現実はかなり厳しいと言わざるを得ません。今、高収入を得ている人であっても、いつどうなるかわからない、という時代です」。理事の横沢善夫氏はそう指摘する。

2008年度の相談者を年収別に見てみると、300万円以下が全体の半分を占めているが、500万円以上も20%近いのが目を引く。年齢別では、40代が36%で最も多く、50代(25%)、30代(19%)と続いている。借入れの動機の主なものは、低収入(29%)、収入減少・失業(13%)、借金返済・保証債務(12%)、教育費(9%)などだ。相談内容としては、月々の返済額の軽減(27%)、融資希望(21%)、生活費の不足(17%)が中心となっている。

「生活サポート基金」での融資は、収入力に応じて判断される。これまでの消費者金融などのように簡単な審査で貸出しをしてくれるわけではない。基本的には、返済できる定収入があったり、家族などの応援があることや本人の意思がしっかりしていることなどが重視される。

しかし、融資が厳しいからといって、無視してはいけない。融資が難しいとしても、あらゆる角度から生活の相談に応じ、改善のための道を提案してくれる。適切な関係機関の紹介も行っている。お金のことはもちろん、さまざまな生活に関する相談ができる場所が「生活サポート基金」なのである。

相談者とは必ず面談を行い、専門相談員が親身になって、改善策を探してくれる。生活上の問題は、まず何よりも話を聞いてもらうことが重要だ

今は関係なくても、このような場所があることを知っているだけで、将来、大きな助けとなることはあるかもしれない。同基金のサイトで、より詳しい活動を確認しておくのは決して無駄ではないだろう。

なお、「生活サポート基金」は市民の出資から成り立っており、「個人再生ファンド」への出資を応募している。金融機関などから排除された人々の生活再生のため、マイクロファイナンスの構築を目標としているこの社会的な事業に対する支援は、海外に比べると、日本では不足しているのが実情だ。政府の動きも見えてこない。「生活サポート基金」が取り組んでいる活動は、今後、さらに大きな問題となるのではないだろうか。