特殊な撮影効果が楽しめる、多種多様なトイカメラ

トイカメラの企画・製造・輸入などを行っているフーヴィの代表 宮武博之氏は、「トイカメラには安くて可愛いカメラが多いので、ぜひお気に入りの一台を見つけてほしい」という。最近では、Dianaやホルガをはじめとした歴史あるトイカメラ以外にも、様々な特殊効果を持ったカメラが販売されている。ここからは、安価で簡単に撮影ができ、デザインも特徴的なユニークなトイカメラをいくつか紹介する。

フーヴィは、現在3種類の連写カメラを販売している。宮武氏によると、連写カメラの魅力は、「動き」を記録できるところだという。コマ送りで写る写真は見た目も面白いが、後でアルバム等を見たときに撮影時の様子がうかがい知れ、「思い出話が弾むのも良い点です」(宮武氏)。付属しているレンズの位置が少しずつ異なるので、厳密には各コマの視点は同じではないが、それも独特な写真を生む一つの要素なのだそう。

どこか80年代のファミコンブーム時代を彷彿とさせるレトロなデザインの「twinkle2」は、1回のシャッターで2コマの撮影ができる2連写カメラ。宮武氏によると、2連写のカメラは、これまで無かったという。素早いアクションや激しい動作の撮影にオススメで、「ほんの一瞬の時間の差で、2コマの画が大きく異なる驚きの写真が撮れるかもしれません」。

1回のシャッターで2コマの撮影ができる2連写カメラ「twinkle2」(フーヴィ)。価格は1,880円。撮影写真のサンプルはフーヴィ提供

1回のシャッターで3コマの撮影ができる「ROBOT3」は、レンズ部分がロボットの顔のパーツになっている。緩やかにカーブしたフレームで、パノラマサイズ1コマとハーフサイズ2コマに区切られた写真が独特の味を持つカメラ。いつもの風景もこのカメラで写すと、まるでアートのような写真に仕上がるのが魅力なのだそう。

ロボットのデザインが可愛い3連写カメラ「ROBOT3」(フーヴィ)。価格は2,880円。撮影写真のサンプルはフーヴィ提供

4連写カメラの「Action4」は、2×2の4コママンガのような写真が撮影できるトイカメラ。時間の経過を記録できるので、走っている車や運動の様子などを写すと、動いていく様子がよくわかるという。また、「被写体ではなくカメラ自体を動かして撮影しても、予想のつかない写真が取れて面白いです」。それにより、思いもよらないアーティスティックな作品が生まれることもあるという。

なお、以上3製品はいずれも使い捨てカメラではなく、市販されている35mmフィルムが使用可能。

1回のシャッターで4コマを記録する、フーヴィの4連写カメラ「Action4」。価格は1,880円。撮影写真のサンプルはフーヴィ提供

またロモグラフィーからも、トンネルエフェクト以外の様々な効果を持ったトイカメラが販売されている。「Supersampler」は、4つのレンズを持つパノラマ連写カメラ。連写カメラでパノラマ撮影が可能なものは、同カメラが世界唯一のものだという。アクティブに撮影するカメラというのがコンセプトで、「動きながらでも楽に操作できるように設計されており、コードを引っ張ることでフィルムを巻くことができるのが特徴です」(浪上氏)。

世界唯一のパノラマ連写カメラという、ロモグラフィの「Supersampler」。価格は6,090円

「フィッシュアイ」は、およそ180度の視野角を持つ魚眼レンズを利用したカメラ。球面上に被写体や風景を投影したような、立体感のある写真が撮影できる。「奥行きのある写真にするには、被写体に極力接近して撮影するのがコツです」。また、撮影画像が円形になるので、写真を画像に沿って丸くくりぬいて飾ったり、ディスプレイ方法を考えるのも楽しさの1つ。

ロモグラフィの魚眼レンズカメラ「フィッシュアイ」。価格は6,090円。現像した写真は、写真画像に合わせて円形に切り取り、写真同士を繋ぎ合わせても面白い

「カラースプラッシュカメラ」は、赤や青、緑などの色彩光を発することができるフラッシュが付属したカメラ。同カメラは、ロモの愛好家達の間で、より面白い写真を撮るためにフラッシュ部分にカラーフィルムを貼る人たちが登場したことがきっかけで誕生したのだという。「色彩光を使うと、現実とは異なる色を持った風景が撮影できるのが魅力です。見慣れた景色も、色が変わることによって、全く違った印象の景色になるんです」。

ロモグラフィの「カラースプラッシュカメラ」。赤や青、緑などの色彩光を発することの出来る。価格は9,240円

トイカメラの魅力とは?

フーヴィの宮武氏もロモグラフィー・ジャパンの浪上氏も、トイカメラの撮影では「難しいことを気にせずに、気軽に楽しむのがコツ」と口を揃える。フレームを気にせずに撮影した写真の中から、偶然の(あるいは奇跡の)一枚を発見するのが、高度な技術を必要とするカメラによる撮影とは異なるトイカメラの面白さとのことだ。

また、デジタルカメラと違って、撮影時にすぐにどのような写真が撮れているかわからないのも楽しさの1つだといえよう。トイカメラでは、ファインダーを覗いた画像と現像した写真が全く異なっていて、思いもよらなかった驚きや感動に出会うことがよくあるのだそうだ。

さらに、「ディスプレイにもこだわってみることで、新たな魅力が広がります」(浪上氏)。東京・青山にある「ロモグラフィー・ギャラリーショップ・トーキョー」店内の壁は、遠目に見るとまるでモザイク壁画のようだが、実は無数の写真が貼り付けられている。これは「ロモウォール」と呼ばれるもので、ロモ愛好家から送られてきた写真をコラージュしているのだという。

ロモグラフィー・ジャパン代表 浪上大輔氏。背景の壁には、実はロモ製のカメラで撮影された写真が貼り付けられている

また、壁に貼ったり写真立てに飾るだけでなく、写真同士をクリップで繋いで暖簾のようにしたり、円筒形などの立体的な形にして、鉛筆立てにするなど工作的な楽しみ方もある。トイカメラを買ったなら、写真を撮るだけでなく、よりクリエイティブに、ユニークなディスプレイを楽しんでみるのも良いのではないだろうか。

写真立てに飾るだけではなく、クリップで留めて円筒形などの立体にしたり、暖簾のようにしてみたり、様々なディスプレイを楽しむのも、トイカメラによる写真の楽しみ方の1つ