酒類総合研究所と日本酒造組合中央会は17日、東京・池袋のサンシャインシティにて日本酒イベント「日本酒フェア2009」を開催した。同イベントは「平成20酒造年度全国新酒鑑評会公開きき酒会」と「第3回全国日本酒フェア」から成るもので、日本酒業界の現状を踏まえつつ、イベントの注目ポイントを紹介していく。

全国日本酒フェアでは約800種類の利き酒のほか、セミナーも開催されていた

会場は2カ所に分かれており、手前の会場では全国新酒鑑評会で入賞した約500点の吟醸酒を利き酒することができる。奥では全国日本酒フェアが開催されており、45の都道府県酒造組合や長期熟成酒研究会といった任意団体がブースを出し、それぞれの取り組みを紹介していた。

同イベントは、規模が大きいため、自分なりのテーマを持っていないととっかかりがつかみにくいかもしれない。そこで、ここでは全国新酒鑑評会の全容や日本酒業界の現状を踏まえ、このイベントの注目ポイントを取り上げていく。

明治44年に始まる全国新酒鑑評

全国新酒鑑評会の歴史は明治44年にまで遡る。清酒の品質・酒造技術向上を目的の一つとしており、ほぼ毎年開催。今回が第97回となる。昭和55年次より賞を出すようになり、その年は出品数588点に対して110点が金賞を受賞した。

杜氏をはじめとする蔵人は、技術者集団である。製造技術に太鼓判を押す金賞はまさに名誉であり、蔵人たちの自信に繋がった。今年の出品数は920点で、金賞受賞は249点となっている。同じ蔵元が常に金賞を受賞しているわけでもなく、吟醸酒造りの難しさがうかがえるところだ。ではいったい、どのような日本酒が金賞をとっているのだろうか。

全国新酒鑑評会の公開利き酒会。早い時間帯は空いている

審査は予審と結審の2回行われる。予審では「香り」と「味」、「総合評価」で審査される。「香り」については吟醸香や移り香(ゴム臭やカビ臭)などがないか、「味」については濃淡や後味・軽快さ等々をチェックする。最終的には「総合評価」で5段階評価されることになる。結審では改めて「総合評価」を問い、最終的に受賞酒が決まる。

酒類総合研究所は、今回の全国新酒鑑評会について総評を出している。要約すると、「酒造最盛期の1~2月は全国的に暖冬傾向。原料米の作柄はほぼ良好。一部の酒は暖冬や軟質な米質のために米の溶解が進み過ぎ、味が重く、だれた酒質のものも見られた。山田錦を50%超使用した第2部はふくらみのある酒質。一方、50%以下の第1部はすっきりとした切れの良いタイプとなる傾向がある」とのことだった。

使用する酵母にもブームが

参考に平成18酒造年度までの分析データを元にして、出品酒の傾向を見てみよう。米は山田錦が群を抜いての人気で、大きく引き離されて美山錦、千本錦が続く。酒造米の作付面積では山田錦と1位を争う五百万石だが、全国新酒鑑評会向けの酒造には殆ど使われていない。複数の酒造家から言われたのは、「山田錦は設計図を描きやすい米。その年の米の出来不出来に左右されず、目指す酒を造れる」のだそう。

酵母については平成2年酒造年度で協会9号が約80%も使用されていたが、平成18酒造年度で1.9%に激減。複数の酵母を混合使用するケースが「その他」に分類されるという事情もあるようだが、この期間で明利酵母や秋田今野酵母が合計20%以上のシェアを獲得している。この2つの酵母はリンゴ香の由来となるカプロン酸エチルが比較的多く生成される特徴があり、そのバランスの良さが人気の秘密かもしれない。

日本酒にはバナナやリンゴだけでなく、メロン、マンゴーのような吟醸香を生成する酵母も開発されている。今回、全国日本酒フェアの秋田県ブースではバナナ香の秋田酵母No.12と、メロン香の秋田酵母No.15が紹介されていた。

多様な酵母が開発され、新しい地元の味(香り)が生まれている