矢内理絵子女王に岩根忍女流二段が挑戦する第2期マイナビ女子オープン(毎日コミュニケーションズ、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会主催)の五番勝負第1局が6月18日、東京・将棋会館にて行われる。挑戦者の出産日が2週間ほど早まったことを受け、当初4月17日に倉敷芸文館で行われる予定だった第1局が延期するなど、話題の多いタイトル戦となった今回、お忙しい両者にインタビューを敢行。対局への意気込みから私生活に至るまで、普段は語られることの少ない貴重な話も伺うことができた。
矢内理絵子女王
――まずは、五番勝負第1局が決まっての今の心境を教えてください。また、延期が決まってから現在まで、どのように過ごされてきたのでしょうか。
矢内女王 : タイトル戦が始まるまでに気持ちを盛り上げたり、自分なりに準備をする期間がありますので、ようやく日程がはっきりして自分のペースが作れるかな、といった感じでしょうか。第1局が3日前に延期になってしまったことについては、拍子抜けした部分もありましたが、1局指してから期間が空くよりかえって良かったかな? という思いもありましたし、その辺りはあまり意識をしていません。
本当に将棋のことだけを考えてやってきた期間だったので、対局まであと少し時間がありますけど、いい状態で臨めるように整えていきたいな、と思っております。
――普段、対局前にすることはありますか?
矢内女王 : 特にはありませんが、あえて言うならばストレスをためないということでしょうか。
――ストレスをためないよう、心がけていることはありますか?
矢内女王 : 聞く人によっては非常に我侭な印象になってしまうかもしれませんが、対局の前日は自分のやりたいことをやって過ごしています。たとえば、前日に「今日は将棋の勉強がしたいな」と思えば、盤に向かいますし、「いや、今日は映画を見たいな」と思えば、映画を見るといった感じですね。
――パソコンとかピアノなどご趣味も多彩ですよね。最近、ハマっていることはありますか?
矢内女王 : それがね、ないんですよ。他のアンケートにもマイブームを書く欄があって、結局空欄で出したんです。ただ、1年前からお休みの日は5km、50分程度は歩くようにしています。自宅の近くにすごくきれいな散歩コースがあるので。最初のころは雨が降っていても傘をさして歩いていたんですけど、最近では雨が降ると「今日は歩かなくて済む!」と思って寝てますけどね(笑)。晴れている日は頑張って歩いています!
――アクション映画やドライブがお好きと伺っています。ご自身の性格もアクティブなんですか?
矢内女王 : 全然アクティブじゃないんです。すさまじいインドア派なので。
――矢内女王の結婚観について教えてください。何歳までに結婚したいという希望はありますか?
矢内女王 : 私は元々結婚したがりな人なんです。10代の頃から「何歳までに結婚しよう」というのが常にあって、そこを過ぎて伸びて、過ぎて伸びて……と来て現在に至ります。とりあえず、今のところは30歳までに「決着」を付けたいと思っております。30歳までにといっても、来年の1月には30歳になってしまうので、どうなるかは分かりませんけれども。
――理想のタイプは?
矢内女王 : 普段、こういった場で聞かれて答えているのは「面白くて、優しくて、男気があって、一本筋の通った人」で、理想が高いと言われるんですが、最近それに「私の話を最後までちゃんと聞いてくれる人」というのが付け加わりました。
――昔、聞いてくれないという体験があったんですか!?
矢内女王 : 私、頭の回転が多分悪いんだと思うんですよ(インタビュアー一同「そうですか!?」との疑問の声が上がる)。言いたいことが言えないうちに言い負かされてしまうんですよね。それで「ちょっとまって、私がまだしゃべっているから!」ってなった時に我慢強く聞いてくれる人がいいなぁと思います。それと、私も趣味のあう人がいいですね。
――趣味と言いますとドライブとか映画でしょうか?
矢内女王 : 車を運転してくれる人がいいですね。人を乗せて運転すると緊張するので。あと、将棋ができる人がいいです。私の仕事を理解してもらえる人でないと困りますから。対局前に「料理したくない」と言ってもそれを受け入れてくれる人でないと。
――昨年のマイナビ女子オープンと今年のマイナビ女子オープン、気持ちの上で違いはありますか?
矢内女王 : 今回は防衛戦ですが、気持ちの上では挑戦者といいますか、改めて女王のタイトルを取りに行くという感覚でいます。ただ、このマイナビ女子オープンに関しては、昨年は甲斐さんで今年は岩根さんで、どちらも奨励会に同じ時期にいて、タイトル戦にも初めて出てくる人が相手なので、その辺りのプレッシャーは今年も多少はあります。
――タイトル戦では和服で臨まれているそうですが、今回はどのようなご衣裳を用意されているのでしょうか。
矢内女王 : 今まで女流棋士のタイトル戦が夏に行われることがなくて、私も夏の着物を持っていなかったので、今回改めて新調しましたし、そのためにも対局頑張ります!
――どのようなお色ですか?
矢内女王 : 新調したのは薄いグリーンと薄い紫っぽかった気がします(笑)。とりあえず4局目までの着物を用意したのですが、5局目は2局目ぐらいの着物でいくと思います。1局目は6月なので普段の着物です。マイナビカラーのブルーを選びました。その後は適当です(笑)。
――女流棋士のタイトル戦が大阪で行われるのも初ですね(第2局は7月2日、大阪府・料亭 芝苑にて行われる)。
矢内女王 : そうですね。私自身も、芝苑に行くのは初めてなのですが、そこで対局された棋士の先生から「非常にお料理も美味しいし、対局に集中できる素晴らしい場所。頑張ってください」とお言葉をいただきましたので、楽しみにしております。ただ、(岩根女流二段が大阪出身とのことから)私にはちょっとアウェイな感じはするんですけど、その辺は気にせず頑張りたいですね(笑)。
――岩根女流二段とは10代のころからのお知り合いでいらっしゃるんですよね。記者会見で「目がキラキラして、対局中は目を合わせないようにしています」とおっしゃっていましたが!?
矢内女王 : 彼女と初めて会った時に目が光っていて、「こんなマンガみたいな子がいるんだ~」と思ったのが第一印象でした。本当にいつも「うふふふ~」って笑ってて。気合を吸い取られちゃいそうな気がしちゃうので、なるべく対局の時には、目を合わせないようにしています(笑)。
――岩根さんの出産を受け、労働基準法で定められている8週間以上の産休期間が設けられました。女流棋士にとって、産休を認められたことについてはどのようにお考えですか。
矢内女王 : 仕事を持っていて、出産しようという女性が不利にならないといいますか、マイナス要因にならないような配慮を今回していただけましたし、非常にいいことだと思います。それに今回は岩根さんでしたけれど、今後若手の女流棋士達も不安が少し和らいだかもしれませんよね。ただ、今後具体的にどうしていくか、まだまだクリアしていかなければならないことがいろいろあります。極端な話、岩根さんの出産があって、その後の第一局の3日前に私が盲腸になっちゃったらどうするんだろう、とか。それはまた追々、連盟の理事の先生や運営の方々にきっちりと詰めていただければいいなと思っております。
――最後に読者にメッセージをお願いいたします。
矢内女王 : 今まで、自分が積み上げてきたものを存分に出し切れるように、ベストな状態を作って臨みたいですね。また、毎日コミュニケーションズから3月に『矢内理絵子の振り飛車破りを出版して、挑戦者の岩根さんが振り飛車党ということですので、そういった(戦法)も、出すとは宣言しませんが、出せたらいいなぁと思います。また、マイナビ女子オープンに関しては、インターネット中継で、写真や動画もたくさん配信されると思いますので、「将棋の内容が今いち分からない」という人もこういうタイトル戦の雰囲気や、女流棋士がどのように将棋を指しているのか、いうところも見ていただければ。
次ページは、岩根忍女流二段のインタビュー。出産後の状況や挑戦者としての意気込みを語っていただきました。