"オーストラリア"ではないのでご注意を

数年前だったと思うが、オーストリア大使館商務部が日本における「オーストリア」というカタカナの表記が「オーストラリア」と紛らわしいとのことで、「今度から我々のことは『オーストリー』と呼んでください」と宣言したはずなのだが、このほど開かれたテイスティング会の案内状発送元には「オーストリア大使館」と印刷されていた。「オーストリー」と呼ぶのはどうやら任意であるらしいので、ここからは「オーストリア」を使わせていただく。

「オーストリアワイン」。そうい聞いても日本人の多くはピンと来ないかもしれない。しかし、このほど、オーストリア人なら誰でも知っているという著名な9つの造り手が来日し、ワインをテイスティングする機会に恵まれた。せっかくのチャンスだ。皆さんに、少しでもオーストリアワインを理解してもらえるよう、ここからは紹介していきたいと思う。

白ワインが70%以上

オーストリアの国土は、日本の北海道とほぼ同じ面積。周りを8つの国に囲まれているが、そのうち主にワインを生産している地域は、チェコ、スロヴェキア、ハンガリー、スロヴェニアに隣接しているニーダーエスタライヒ州、ブルゲンラント州、シュタイヤーマルク州と首都ウイーンで、16の栽培地域がある。

ぶどうの栽培面積は約5万haで、32,000軒の造り手を有し、造られるワインは70%以上が白ワインである。言語を同じくするドイツと造られるぶどう品種もワイン法も似ているのだが、大きな特徴は「グリューナー・フェルトリーナー」というオーストリア固有の白ブドウ品種があるということだ。オーストリアワイン全体の実に36%がこの品種から造られている。特徴としては、ペッパーやハーブといったスパイシーな香り、そしてリッチなアロマで、オーストリア料理によく合うといわれている(残念ながら私はオーストリア料理を食べたことがない)。

最も大きい栽培面積を有するニーダーエスタライヒ州

ニーダーエスタライヒ州は、前述の4つの州の中でもっとも北に位置し、栽培面積は約3万haと最大である。先のグリューナー・フェルトリーナー種やリースリングといった白ワインがメイン。同州に8つある栽培地区のうち、ヴァッハウ地区だけがオーストリアワイン法とは別の、独自の品質基準を設定して格付けを行っている。シュタインフェーダー→フェーダーシュピール→スマラクトの順に糖度が上がり、したがってアルコール度数も高くなっていく。特にスマラクトは、豊かな果実味とバランスのよい酸味が調和したワインだけに与えられる。ニーダーエスタライヒ州からは、5つの造り手が来日していたので、以下で説明しよう。

造り手 栽培地域
イベントでテイスティングしたワイン名と造り手の特徴
シュタイニンガー カンプタール
「グリューナー・フェルトリーナー ゼクト2006」 / ゼクトというのはドイツ、オーストリアで造られるスパークリングワインのこと。1989年よりゼクトを造り始め、現在は全生産の40%に
ユルチッチ ソンホフ カンプタール
「グリューナー・フェルトリーナー ケーファベルグ2007」 / 主にリースリングとグリューナー・フェルトリーナーを栽培。いいワインは健康な土壌からということで、1972年から無農薬栽培
ヒルツベルガー ヴァッハウ
「グリューナー・フェルトリーナー ホニフォーグル スマラクト2007」 / ヴァッハウ地区最高の格付けスマラクト。白ワインでありながらアルコール度数14.6%!! ワイナリー主のフランツ・ヒルツベルガー氏はこのヴァッハウ独自の格付けを決める生産者団体「ヴィネア・ヴァッハウ・ノビリス・ディストリクス」の創立者で現会長
F.X.ピヒラー ヴァッハウ
「リースリング ケラーベルグ スマラクト2007」 / ヴァッハウ特有のテラス状急斜面にある畑のため、収穫はすべて手作業。品種はグリューナー・フェルトリーナーとリースリングが半々
ブリュンデルマイヤー カンプタール
「リースリング ツェービンガー ハイリゲンシュタイン2003」 / リラ方式という1本のブドウの樹をY字型に上方に伸ばすことで、光と空気の通りをよくし、高品質のブドウを育てる栽培方法・リラ方式をオーストリアで初めて実践。無農薬栽培も実施

「グリューナー・フェルトリーナー ゼクト2006」

「グリューナー・フェルトリーナー ケーファベルグ2007」

「グリューナー・フェルトリーナー ホニフォーグル スマラクト2007」

「リースリング ケラーベルグ スマラクト2007」

「リースリング ツェービンガー ハイリゲンシュタイン2003」