──タイミング良く、というか、悪くというか、小沢一郎氏の秘書が逮捕されました。賞を取ったエントリー「小沢一郎氏の初当選からの言動を振り返る・その一」にも注目が再度集まりそうです。

阿比留氏 捜査の話は私に独自情報はありません。政界で「こんな話が出てるよ」というエントリーは書く予定でいます。たいした本筋じゃないですけどね。このエントリーがウケた理由は――本当にウケたかどうかはわかりませんが――次期総理となる人に注目が集まったからでしょうか。今回の事件の件で、総理になるのは難しくなったようですが。ただ、読者からの反応は小沢さんのネタだと凄いですよ。とくに小沢批判に対しては賛否いろいろと。

──逆に麻生首相について書いたときの反応は?

阿比留氏 私は親・麻生の人からも、アンチ・麻生の人からも叩かれています(笑)。私がブログで麻生批判をあんまり書いていないこともあって、一方(小沢氏)を批判するなら麻生首相も批判して当然だろう、とね。ブログは非常に有意義だと思うし、いろいろ学べましたけど、楽しいことばかりではないですね。基本的には自由に書いていて、書きたくないことは書いていないのですが、「書きたくないことを書かない」ことについてまで責められる。マスコミ不信が個々の記者ブログに対して、批判というカタチで反映されているのでしょう。政治記者だったら、特定の政治家と癒着しているんじゃないか、とか。そういう裏読みが当たっている可能性もありますけど、そればっかりかと言うとそうじゃない。だけど、いちいち説明してたら大変なこと労力になる。

──相当な時間をブログに傾けなければならない。

阿比留氏 ただ、私の個人的な意見ですが新聞記者は全員、自分のブログを持ったほうがいい。そうすれば、たとえその人がブログを更新しなくても、新聞で署名記事を出したら、その記者のブログのコメント欄から読者反応が返ってくることも考えられる。フィードバックを得れば読者のニーズがわかる。それには意味があると思うんです。今は記者ブログ自体が少ないから、私なんかのところに反感や過度の期待が集まってしまうのでしょう。記者が皆ブログを持てば逃げられると思っているんですけど(笑)。でも、ほとんどの記者は嫌がるでしょうね。

──反応が返ってくることが、記者ブログを持つメリットなわけですね。

阿比留氏 ネットユーザーと一般の新聞読者とは違うのかもしれないですが、(ブログを通じて)読者が興味を持っていることがわかるというのが記者にとっては一番有益だと思います。私は現在、外務省担当ですが、ブログ読者からのニーズがあまりにも強かったことから、本来は法務省担当がやるはずの国籍法に関する記事を紙面で書くことになりました。そういう(読者の)声がなかったら、担当外だから手は出さなかった。また、小泉(純一郎元首相)さんが靖国神社に参拝する前ですが、首相参拝に関して小泉さんと記者団とのやりとりを全部掲載したんです(「小泉首相の靖国関連ぶらさがり全文」)。当時は画期的だったらしく「やっと真実がわかった」という感謝の言葉がブログに書き込まれた。マスコミのフィルターというのは、いかに毛嫌いされて警戒されて、情報遮断をしていると思われているのか実感しましたね。それで「MSN産経ニュース」もそうですけど、ブログじゃない場所でも一問一答を載せるようになった。

──ブログからのニーズに新聞側が応えたわけですね。

阿比留氏 上層部も納得してくれたんでしょう。当社も経営状況は厳しい面もありますし、おそらく今後はマスコミは淘汰されていく。そのなかで新たなメディアの、というか、記者の生き方、生計の立て方の新しいモデルがこれから作られてくれるんでしょうね。

──新聞記者の立場はどんどん厳しくなる?

阿比留氏 今はマスコミ不信が強い。ですから、ものすごく難しいですよね。取材して記事を書いても、誘導するような意図はないのに、深読みされて批判される。そのまま(取材の)やりとりを全文掲載すれば問題は起こらないかもしれませんけど、それでは新聞の意味がない。現実問題として(どうしていいかわからず)立ち尽くしています(苦笑)。

ただ、世間でのマスコミ批判というのは一方では「もっとマスコミはまともであってほしい」という願いですよね。批判されるとへこんだり、落ち込んだりもしますが、厳しい声にも耳は傾けていきたいと思います。ただ、ブログはマスコミ批判の窓口になりやすいので、ひとりで背負っていくには少々キツイなとも感じていますが。周囲は私がいかに辛い思いをしているか、気づいていないと言いますか(笑)。

──(小沢一郎の発言を時系列に並べてコメントを添えていく)受賞エントリーは一読者として便利、というか機能的だと思いました。

阿比留氏 あのエントリーだけじゃないんですけど、ブログを通じて読者の間でもっと情報が共有されてほしいとは思っています。今以上に、政治家などに関する基本知識が共有されれば、もっと(社会に対する)共通理解が深まっていくだろうという思いがあって、それをブログをやる過程で考えています。

──これからもブログでしか読めない記事に期待しています。