新聞紙面とブログ、記者はどう使い分ける?
「アルファブロガー・アワード2008:ブログ記事大賞」。例年はインターネット上で発言力を持つとされる「アルファブロガー」を選出するものだが、2008年度はブロガーではなく、"エントリー(記事)"が選考対象となった。ここに興味深い受賞者がいる。受賞エントリーは、最近世間をお騒がせ中のあの政治家について書かれた「小沢一郎氏の初当選からの言動を振り返る・その一」(2008年10月11日投稿)。執筆者は阿比留瑠比氏。産経新聞の政治部に所属する現役記者だ。既存マスメディアとインターネットとの対立が叫ばれるなか、新聞はネットから批判を受けている最たるメディアである。その記者が、エントリーが受賞対象とはいえ、ある意味、ネット世論に影響力を持つとアルファブロガーに選ばれたということでもあり、なんとも不思議な現象ではないだろうか。ネットから認められた数少ない新聞記者であろう阿比留氏。そのブログ『国を憂い、われとわが身を甘やかすの記』への姿勢について語っていただいた。
――新聞記者には新聞紙面という記事を書く場所がある。ブログで記事を書くことに対して抵抗はありませんでしたか?
阿比留氏 最初は産経デジタルが『イザ!』(2006年開始のニュースブログサイト)を始めたときに、「お前、暇そうだから書け」という上からの指名でブログを書き始めました。自分で率先して始めたわけではありません。ただ、どうしても新聞紙面は狭いんですよね。(掲載できる文字数が)ものすごく限られていて、取材して書いてもほとんど削らなければいけない、ということも少なくありません。だから、その時は「チャンスだ」と思いました。
――ブログを紙面からこぼれたネタを書く場所にしようと?
阿比留氏 あるいは伝えたいこと、伝えきれないことを伝えるチャンス。そういう期待感は持っていました。どうしても新聞記事には定型があって、一定の条件が揃っていないと記事に――商品にならないということがある。ブログの場合は取材をしたけれど中途半端な結果に終わったことでも「こんなことがありましたよ」と書けるのでありがたいところだと思っています。
──内容は記者個人の裁量に任されているのでしょうか?
阿比留氏 まったく個人の裁量ですね。これまで770ちょっとのエントリーを書いていますけど、書く前も書いた後も、(会社から)文句を言われたことは一度もないです。私はいろいろと書いてきましたが、社内の人はあんまり読んでくれていないのかな、と思うほどの無反応ぶりですね。放任されています。もしかしたら、相手方も(記者ブログの存在に)気づいていないのかもしれませんが。
──新聞の紙面とブログとでは内容も書き方のテイストも異なりますが、記者として両者の間の"ずれ"が問題になることはありませんか?
阿比留氏 難しいですね、それは。ただ、読者の反応を見ていると、"新聞記者が書くブログだから"ということで、ブログ内容も"記者であること"を求めてくる人はいます。一方で、記者である以前に、あくまで私の個人ブログなのだから思ったことをそのまま書けばいいという人もいる。表現ひとつとっても、私がいわゆるネットスラングを使うと「がっかりした」とコメントを寄せる人もいれば、逆に「それがいい」と言ってくる人も。反応は千差万別。読者の反応が気にならないわけじゃないのですが、なるべく気にしないようにしています。(ブログは)自由な枠なんだ、ということですね。それが正しいのかどうかはわかりません。(ブログの書き方について)教科書があるわけではないし、(産経新聞社内に)前例があるわけでもない。読者からダメだって言われたら、そのときは「ごめんなさい」と反省しよう。そう思って好きにしています。