電力10社はこのほど、燃料費の値動きをこれまでより迅速に料金に反映させる新しい制度の導入により、5月の標準的な家庭の月額が4月に比べ600~200円程度値下がりするとの試算を発表した。この見通しのままなら、10社ともに96年の「燃料費調整制度」導入以降最大の下げ幅となる。

今回の値下げの要因となっているのが「燃料費調整制度」の改定。同制度は原油などの燃料価格や為替レートの変動を電気料金に反映させるためのものだが、従来の方式は3カ月間の燃料の平均価格を、3カ月の間をおいて電気料金に反映させ、見直しは3カ月ごとと"タイムラグ"が大きかった。この制度では、例えば今年4~6月期の電気料金には、昨年10~12月の燃料価格が反映されることになる。

5月に導入される新しい制度では3カ月の燃料の平均価格で2カ月後の電気料金を算出し、料金見直しも毎月とする。燃料費などの値動きがより速やかに料金に反映されることになる。大幅な値下げ見通しが明らかになった5月の電気料金については、昨年12月から今年2月の燃料価格が反映される(5月の正式な電気料金は3月末に発表)。

国際原油相場は、昨年夏、ニューヨーク市場で1バレル=147ドルの最高値を付けるなど急騰したが、世界的な景気の後退などを背景にその後急落し、現在は40ドル前後で推移している。今年1~3月期の電気料金をめぐっては、昨年7~9月の高い原油価格などが反映されて大幅な値上がりとなる予定だったが、すでに原油価格が下がり、消費者の負担感も大きいとして、電力各社が値上げ幅を当初の計画の半分に圧縮した経緯がある。

なお、大阪ガスと東邦ガスも、液化天然ガスや液化石油ガスといった原料価格をより迅速にガス料金に反映させるため新しい「原料費調整制度」を5月から適用するとして、3日に約款変更を経済産業省に届け出た。燃料費調整制度同様、3カ月の原料の平均価格で2カ月後のガス料金を算出する。東邦ガスでは「平均的なガス使用の家庭の場合、5月のガス料金は4月(6,663円)に比べ、300円前後値下がりする見通し」としている。経済産業省によると、ガス大手4社のうち東京ガス、西部ガスも近く約款変更の届け出を提出する予定。

各社発表による5月の電気料金下げ幅の試算(標準的な家庭の月額で試算。試算の前提は各社で異なる)

電力会社 4月の料金 5月の下げ幅見通し
北海道電力 6,562円 300円台後半
東北電力 6,812円 290円程度
東京電力 7,061円 500~600円程度
中部電力 7,331円 200円程度
北陸電力 6,667円 200円程度
関西電力 6,871円 200~300円程度
中国電力 7,436円 300円程度
四国電力 6,898円 200円程度
九州電力 6,727円 200円程度
沖縄電力 7,975円 500円程度