まずテントに入って驚かされるのは、その計算された建物の造り。

3,000人が収容可能だという巨大テントの内部は、円形の劇場部分を囲むように観客席が設けられていて、なるほどこれならどの場所からでも公演がよく見えます。

邪魔な柱などもないので、最後列でも見やすい新設設計

写真を見るとお分かりになると思いますが、真ん中のステージ部分にはヨーロッパテイストの絵画が描かれたカーテンが吊り下げられており、これが演出上かなり効果的な役割を果たしていました。どんな演出なのかは書きませんので、ぜひ皆さん自身の目で確かめてみてください。

演目はその日のコンディションや演出の都合で変わることがあるらしい(公式サイトより)のですが、基本的な物語の設定としては、主人公であるマウロが死ぬ間際に見た夢と魔法の世界をサーカスの華麗な技で表現していく――というもの。

……というのは僕の解釈であり、正直セリフのほとんどが外国語だったためプロローグ以降のストーリーはさっぱり理解できなかったのですが、はっきり言って細かいストーリー部分については考えなくても問題ありません。

むしろあの詩的な世界を"ストーリー"なんていう枠に当てはめる必要はないし、それこそ野暮というものでしょう。

いちおう日本公演ということで、ところどころ各キャラが日本語で小ネタを挟んできたりするのですが、よくわからずに言わされてる感じが何とも微笑ましかったです(ちなみに演者の中には日本人もいて、彼が日本語で解説してくれる演目もあります)。

『コルテオ』の公演時間は約2時間。途中30分の休憩が入ります。演者のアクロバティックな技はもちろん、計算された光と影の演出、幻想的な雰囲気を醸し出す衣装とセット、そしてコルテオの世界を盛り上げる美麗な音楽(もちろん生演奏!)にもぜひご注目いただきたいところ。

マウロが寝ていたベッドも、あっという間に華麗なショーの会場へと変貌

ではここから、僕が感動のあまり思わずユニクロのストールを振り回しそうになった演目をいくつかご紹介しましょう。

つい女性の方ばかり見てしまいますが、男性もすごい動きをしていました

アクロ・デュエット。普通のダンス……と思わせておいて、いきなりアクロバティックな動きを見せ始めるびっくりカップル。これほどまでに息の合ったパフォーマンスを見せられると、もはやカップルに嫉妬の視線を向けさせたら随一と謳われた僕も白旗を揚げざるを得ません。

平和な演目ではありますが、心配性の筆者は「もし風船が割れたら……」と手に汗握っていました

ヘリウム・ダンス。その名の通り、ヘリウムバルーンに乗ったクラウネスが空中をふわふわと漂う幻想的な演目。"風船で飛ぶ"という誰しも一度は夢見たであろう光景を間近で見ることができて感動しました。

シーソーのボードの幅が狭いのがまた恐ろしい

ティーターボード。3人の青年がシーソーを使って華麗なジャンプを見せる演目。最初は「まああれぐらいなら僕でも……」とか思っていた筆者でしたが、途中から「あれぐらいなら高校時代の僕なら……」「あれぐらいなら高校時代の僕が10年ぐらい練習すれば……」とだんだん言い訳も苦しくなり、最終的には「100年特訓しても無理!」という結論に達しました。ジャンプっていうか、それもう完全に空飛んでるレベルですもん……。

これぞサーカス!

パラダイス。いわゆる空中ブランコ。スリリングな技の数々と、それを危なげなくこなす安定感には鳥肌が立ちっぱなし。また、白のコスチュームが男女ともに幻想的で美しく、鍛え抜かれた肉体はそれ自体が芸術的でした。僕も筋トレ……しようかな(明日! 明日からやります!)。

観客席からはどよめきが

ラダー。はしごを使ったアクロバティックな演目。竹馬にさえまともに乗れない僕からすると信じられないバランス感覚で、次々と難度の高い技を決めていく様は圧巻。それでもまだ途中までは理解できる範疇だったのが、最後には「あそこだけ重力ないんじゃ?」とまで思ってしまうレベルに到達します。必見。

……ということで、ほんの少しですが印象に残った演目をご紹介させていただきました。

予想通り、いや予想以上の内容で、最後はちょっと放心状態になってしまうぐらいすごかった『コルテオ』。

TVでの猛烈なプッシュや芸能人の応援メッセージなどを見ていると逆に行く気が失せる――という僕のようなひねくれた方もいると思いますが、そんな些細な反発を一気に吹き飛ばしてくれる最高のエンターテインメントでした。

もっと見たい――素直にそう思いました

チケットはちとお高めですが、値段以上の興奮と感動をお約束します。

「ダイハツ コルテオ シルク・ドゥ・ソレイユ」東京公演は、原宿・新ビッグトップで上演中です。