食品メーカーが値段を下げてきてないという話もあったが、であればなぜ消費者は値下げの恩恵を受けられるようになったのだろうか。特にイオン、イトーヨーカ堂、西友といった大手スーパーでは昨年秋以降、「円高還元セール」「生活応援価格」といった大型キャンペーンを展開している。例えばイオンでは、昨年末に食品を含むPB「トップバリュ」の主力商品100品目もの価格を最大で25%も値下げ。また、円高還元商品を含む衣食住の2,000品目を店頭価格から10~30%値下げする「がんばろう日本! とことん価格」キャンペーンも展開中だ。

この理由について、ある大手小売店の担当者は「不況で生活不安を抱えている方が多い中で、コストを削減しどんどん値下げをすることでお客様を応援できるということと、こちらも客足を伸ばすことができると考えています」と話す。「円高還元セールについては先取りした形のものもありますが、円高が長期的に続くと認識した上で近い将来に還元できると判断できるというものを値下げしています」。

一方中小の小売店は「大手が下げれば当然小さいところも下げていかないと生き残れない。コストをできるだけ削って値段を下げています。消費が冷え込むなか、大手も中小もお客さんに足を運んでもらおうと必死ですよ」(高坂さん)と内実を吐露した。

値下げの理由についてこんな指摘も……

それでは、今後はどうなるのだろうか、というところが知りたいところ。ファイナンシャルプランナーの安藤朋子さん(FPスピリット)は現在の物価について「数カ月単位の短いスパンでは(価格が)下がっているものが多く、今後しばらくは値下がりが続くのでは」と予測する。小麦の政府引き渡し価格の改定について農水省の担当者は「4月には昨年10月に上がった分(10%)ぐらいは下がる可能性はある」と回答。不況で消費者の節約志向が一段と強くなるなか、今月26日には乳業最大手の明治乳業が原料価格の下落を理由に市販用チーズなど25品目を値下げすると発表した。今後はこうした動きがどんどん増えてきそうだ。

一方で、実際は去年上がった分の反動に過ぎないという指摘も。「瞬発的に上がったり、下がったりする物価の動きにいちいち翻弄されないような家計にしておくことも大事」と安藤さん。

しばらく続きそうな食品の値下げ。消費者にとって朗報には違いないが、「赤札」の向こう側には、さまざまな"事情"が交錯しているようだ。値下げの恩恵はもちろんおおいに享受したいものだが、少し冷静に、少し離れて「赤札」を見てみることも必要かもしれない。