2009年1月より、フジテレビほかにてテレビアニメ『源氏物語千年紀 Genji』が放送される。放送に先立って11月18日、都内スタジオにて監督と主要キャストを迎えた合同取材が行われた。

『源氏物語千年紀 Genji』は紫式部が平安時代に記した王朝物語『源氏物語』を原作としたアニメ作品。『あしたのジョー』から劇場版『CLANNAD』まで幅広く手がけるベテラン、出﨑統監督の手によって、いまなお語り継がれる平安の世の一大絵巻がアニメとなって蘇る。合同取材には監督とキャスト陣が並び、古典の大作に参加する意気込みを緊張気味に語った。

櫻井孝宏(光源氏役)
大役ですし、出﨑監督とお仕事させていただくのも初めてなので、精一杯、光源氏役をがんばりたいと思っております。実際にアフレコしてみて思ったのは、出﨑さんが作られる『源氏物語』はすごく生々しさがあって、ギラギラしていて、ドキドキするイメージを抱きました。光源氏はいまで言うイケメンというやつで、女性から見れば女たらしであるとか、節操がないとかいろいろあると思うんですけど、どこかで絶対に真面目で純粋なところがあると思います。人間くさくて、ダメなところもいっぱいある。そういう部分を今回の源氏で作っていけたらなと思います。これも原作ものと言えば原作ものなんですけど、『源氏物語』のイメージみたいなのを塗り替えるぐらいのアニメーションになると思っていますので、ぜひ多くの方に見ていただけるとうれしいです。

杉田智和(頭の中将役)
『源氏物語』千年の重みを感じると同時に、やりがいも自分のなかで湧き上がっています。頭の中将はなにかまわりをつなぐ立場にある役ですね。源氏をほかの女性にたきつける役だったり、数々の女性との関係の合間に、ふと素に戻れる瞬間もつなぐ、とらえ方によってこの頭の中将という役の価値が変わってくると個人的には考えています。演出的に現代的な部分はふくまれていますので、そこをどう表現するかに気をつけなければいけないかなと。たまに横文字を言いそうになってしまいます(会場笑)。

玉川紗己子(藤壺役)
光の君と出会うのが、彼が9歳で藤壺が14歳。そこで運命的なものを感じるんですが、すごく早い時期に人生がいろいろ決まってしまうんだなと思ってとても興味深く思いますし、ピュアな気持ちでやりたいなと思ってます。藤壺は光のお母さんと面影が似ているということで、母性と恋心とがきっちり別れない、深遠なところを出せたらいいなと思ってます。出会ったときは14歳で、さすがにちょっと演じるのがつらくなってきた今日このごろですが(笑)、がんばります。

平田絵里子(葵の上役)
葵の上は光源氏よりも4歳年上の姉さん女房なんですけど、もともとはべつの方のお妃として育てられてきて、なかなか光源氏に素直になれないところもあったと思うんですね。光源氏とは仲が悪かったというふうに『源氏物語』では描かれていますが、でもきっと好きだったと思うので、好きなのになかなかその気持ちを伝えられない、仲良くできない複雑な女心を演じていけたらいいですね。現代では考えられない愛人をたくさん囲って、いろんな女の人のところに自分の夫が行っちゃうすごく苦しい思いを耐えて、その心の距離というのをうまく表現できたらと思います。

遠藤綾(紫の上役)
みんなが知ってる作品で、みんなが知ってる役というのが自分でもドキドキしています。本当に個人的にも楽しみなので、楽しみながらやっていきたいですし、紫の上と同じように素敵に成長していけたらとワクワクしています。小さいころに源氏と出会って見初められるんですが、小さいながらも女性らしいなにかを持っていたからこそ光源氏という人に捕まえられたわけで(笑)、それに合った気持ちでやっていけたらなと思います。普通の女の子というイメージなので、とくにお姫様っぽくとか気負わずやっていきたいです。

出﨑統(監督)
とりあえず『源氏物語』という有名な素材から「あ、こんなのが生まれたんだ」みたいなものを作りたいなと思ってます。『源氏物語』は旧約聖書みたいに人間のかっこつけていない部分、人間としてのタブーの部分に挑戦している、そんなイメージがありますね。着飾ってはいるけれども、実際には生の人間がそこにいるんだなというか。ですから光源氏に対しても「こいつどんな奴だろう?」というのを追い詰めていきたいなと思ってます。彼もどこかですごいピュアな、真面目な部分があるからこそ苦しんじゃうと思うんです。タブーを次々破っていく光源氏はそれだけ自由人で、しきたりとかをどこかで「それは正しくないぞ」って思ってる。そういう覚悟を持ってる人だと思うんで、自然と迫力が出てくるといいなあと思ってるんですけど。「これが源氏なの?」って怒る人もいると思うんですけど(笑)、少なくとも30分間見たこともない世界にいられるような、そういうドラマを作っていきたいです。

前列左より、光源氏役の櫻井孝宏、出﨑統監督、紫の上役の遠藤綾。後列左より、藤壺役の玉川紗己子、葵の上役の平田絵里子、頭の中将役の杉田智和

記者会見当日は出﨑監督の65歳の誕生日とあって、遠藤綾から出﨑監督に花束が贈られた

『あしたのジョー』で男の孤独を描き、『ベルサイユのばら』で歴史に翻弄される人々を描いてきた出﨑監督だけに、日本が誇る歴史的な大著を今回どうアニメ化するかには思わず期待が高まる。一方、光源氏役の櫻井孝宏も『コードギアス 反逆のルルーシュ』『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』ほか、多数の作品において美形の役柄を多く演じてきたとあって、今回のキャスティングにも納得という人は多いはず。『源氏物語千年紀 Genji』は2009年1月より、フジテレビ「ノイタミナ」枠ほかにて放送開始。

<作品データ>
『源氏物語千年紀Genji』
全11話(予定)

原作: 紫式部「源氏物語」
監督・脚本: 出﨑統
シリーズ構成・脚本: 金春智子
キャラクターデザイン・作画監督: 杉野昭夫
音楽監督: 鈴木清司
美術監督: 河野次郎
アニメーション制作: 東京ムービー/手塚プロダクション
放送局: フジテレビほか

2009年1月より フジテレビ「ノイタミナ」枠ほかにて放送