肝心要の味は、というと。7月にボージョレ地区を雹が襲ってかなりの打撃を受けたニュースを耳にし、「今年はダメか」と思ったものの、その後9月には晴天が続いた。しかも気温は低く推移したため、酸の乗ったよいブドウが収穫された模様。
9月15日にブドウの収穫が公示されたが、収穫は10月第1週まで続き、造り手はブドウが熟すまで辛抱強く待った。それでも収穫量は少なく、上限収穫量にも届かないほど。この少なさは1975年以来のことだという。
個人的な予想としては、「そういう難しい年は造り手によって出来不出来が分かれるだろうな」とは思っていた。しかし、それがそうでもなく、どれもうまくまとめていたのには正直驚いた。今回初来日し、自らが造り手でもあるAOCボジョレー・AOCボジョレーヴィラージュ統制委員会会長のダニエル・ビュリア氏は記者会見にて、「ボジョレーらしいボジョレーができた」コメントした。
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写真右がAOCボジョレー・AOCボジョレーヴィラージュ統制委員会会長のダニエル・ビュリア氏。左は、フランス食品振興会日本代表のシャルル・デュラン氏 |
ボジョレーらしいとは
ところで、ボジョレーらしいとはボジョレーとは一体どういうものをいうのであろうか。それは、「とにかくフルーティであること」である。そして今年の特徴は、「すばらしいフィネス(繊細でまとまりがよく、果実実がしっかりとしている)」のだそう。試飲会会場には、69種類ものヌーヴォーが並んでおり、さすがに全てを試飲することは無理だったが、私の印象としては次の通り。
色は薄めでクリアなルビー色、イチゴやラズベリーといったチャーミングな香りと、涼しい年だったのできっちりとした酸が感じられるのはどれも共通しつつ、"しなやかなシルクのような滑らかさを持つヌーヴォー"と"コショウのようなスパイシーさを持つワイルドなヌーヴォー"の2タイプ。
解禁後しばらくは、スーパーやデパートの店頭などで試飲できる機会も多いので、好みのヌーヴォーを見つけてみるのも楽しいだろう。
会場にはロゼもあった。不覚にも私は初めてお目にかっかったのだが、今回の69種類の中に3種類のロゼがあった。ブドウは赤と同じガメイ種だという。早速ビュリア氏に確認してみると、ヌーヴォーとしてのロゼは2006年から。ただ全世界を60万本でカバーしているので、なかなか出回らないのだそうだ。冷やして飲むとすっきりとさわやかな味わいで、これはこれで十分ありだと思う。
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ジョルジュ・デュブッフ氏 |
先のビュリア氏は、ヴィニュロン(ブドウ造りをする人)としての仕事を、「まずいいブドウを造る(畑)、いいワインを造る(醸造)、そしてそれを世に広めることだ」といい、「それは造り手によって違うノウハウを持っている」と。
その後、(誰が名付けたか)ボジョレーの帝王、ジョルジュ・デュブッフ氏は付け加えた。「大事なのは瓶詰め。瓶詰めにはワインのエスプリ、叡智が込められている。したがって決していい加減ではいけない。その瓶に詰められたものがワインの(我々の)すべてなのだから」。