29世紀の遠い未来――。人類が、ゴミの山と化した地球を捨て、宇宙へと旅立ってから700年。巨大な廃墟となった地球で、ただひとり動いているのは、ウォーリーという名前のゴミ処理ロボットだけだった……。

本作のプロデューサー、ジム・モリス氏。ILMで『ジュラシック・パーク』など、数多くの作品に携わった後、05年、ピクサー・アニメーション・スタジオに参加

『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』『カーズ』など、ユニークで、しかも心温まる作品群を、続々と世に送り出している映画制作スタジオ、ピクサー。彼らの最新作『ウォーリー(WALL・E)』が、いよいよこの12月5日より全国で公開となる。

地球にたったひとり残された孤独なロボット、ウォーリー。飽きることなくただひたすら、ゴミの処理を続ける彼のもとに、ある日突然、ひとりの訪問者が訪れる。白くピカピカと光る、そのロボットの名前は「イヴ」。ふたりの出会いは、ウォーリーの運命を変えるだけではなく、とんでもない事態を引き起こすことになるのだが……。

キュートなオンボロロボット・ウォーリーの、胸躍る冒険を描いた本作。今回、映画の公開にあわせて来日したプロデューサー、ジム・モリス氏にお話を伺うことができた。映画館に出かける前に、ぜひお読みいただきたい。

ジム・モリス氏が語る『ウォーリー』製作ストーリー

――まずは、今回の『ウォーリー』の元になった、最初のアイデアについてお聞かせください

「記者会見でも話題になりましたが、この映画は、あの非常に有名なランチがきっかけでスタートしました。ちょうど『トイ・ストーリー』の1作目を撮り終わったあとの頃だと思うのですが、この映画の監督を務めたアンドリュー・スタントンとジョン・ラセター、そしてピート・ドクターの3人が集まって、一緒に昼食を取っていたんです。そのときの話し合いから『バグズ・ライフ』や『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』といった作品が生まれることになるわけですが、そのとき、話題に出たアイデアのひとつが"もし、非常に孤独なロボットがいたら……"というものでした。アンドリューがそのアイデアを何年も暖め続けて、その結果、今回の『ウォーリー』になったわけです」

――ジムさんはプロデューサーという形で『ウォーリー』に関わっていらっしゃいますが、そのアイデアを聞いて、どのようにお感じになられたのでしょうか?

「私がアンドリューに初めて会ったとき、ちょうど彼もまた、作品制作のパートナーとなるプロデューサーを探していたところだったんです。で、そのとき彼は、私に"もしも人間が地球を出なければならなくなったら、どうなるんだろう? そのとき最後の人間が、ロボットのスイッチを切り忘れたとしたら……"と、さきほどのアイデアを話してくれたんですね。そのアイデアが、ずっとわたしの頭のなかに残っていた。非常に素晴らしいキャラクター設定だと思いましたし、アンドリュー自身のことも気に入っていて。そこから、今回の『ウォーリー』に繋がっていくわけです」

――なるほど。今回の映画では、なによりも主人公であるウォーリーが、非常に魅力的ですね。ジムさんから見て、彼のどんなところが魅力だと思われますか?

「確かにウォーリーは、見た目はすごくゴツゴツとした、オンボロなロボットです。でも、私たちと同じような、まるで人間のようにさえ思える、そんなキャラクターでもある。何世紀にもわたって、とにかく言われた通りのことを日々、自分の仕事だと思ってやり続けている。人々が残していったものを、少しずつ集めたりとか、あるいは、『ハロー・ドーリー!』(※1969年に公開されたミュージカル映画。俳優のジーン・ケリーが監督を務め、バーブラ・ストライザンド、ウォルター・マッソーらが出演している)のビデオを毎日見たりとか……。しかも、その『ハロー・ドーリー!』を見ることで、彼のなかに『誰かと繋がりたい』という気持ち、願いや希望が生まれてくる。彼は、非常に孤独だけれども、同時に誰かと繋がりを求めているキャラクターなんですね。それはまさしく、私たち自身の姿でもあって、私たちの誰もが、ウォーリーになり得る側面を持っている。そこが、彼の魅力だと思います」

――ウォーリーの一挙手一投足は、非常に愛らしくもあり、また人間っぽくも感じられます。そんな彼の"人間っぽさ"が、一番よく表れているのは、やっぱり目ですね

「その通りですね。目というのは、キャラクターが魂を持っているか持っていないか、その決め手になるポイントだと思います。今回のウォーリーの目は、双眼鏡がモチーフなんですよ。監督のアンドリューが、野球のスタジアムに出かけたときに、双眼鏡で試合を見ている人を見ていて"喜怒哀楽の表現が、双眼鏡でできるぞ"と思った。それがきっかけなんです」

――なるほど。それは面白いエピソードですね

「と同時に――これがユニークなところなのですが――私たちは、ウォーリーをできるだけ機械、ロボットであるように見せたい、とも思っていました。例えば、彼にはヒジがなくて、身体はただの箱のようで、それに双眼鏡の頭がくっついている。そんな外見をしています。つまり、ひと目で"機械"だとわかるようなデザインになっているわけですね。それは、彼の動きに関しても同じことです。"機械である"という制約のもとで、いろんな動きを、アニメーターたちが試行錯誤するなかで――それは、ちょっとした頭の動きだったり、あるいはキャタピラの動きだったりするわけですが、そんなちょっとした動作で彼の感情を表現しよう、と試みました。そこに一貫してましたね。その結果、映画を見る人たちが"ああ、これは人間だったら、こんな感情なんだな"と、自分たちを投影できるようなキャラクターになった。そこが、ウォーリーの面白いところだと思っています」


「ちょっと恥ずかしいね」と言いながら「U-コマンド WALL・E」を操作する、モリス氏。初めて触ったにもかかわらず、なかなかの腕前でした

また『ウォーリー』の公開にあわせて、タカラトミーより赤外線コントロールロボットやアクションフィギュアなど、さまざまなキャラクタートイが発売される。なかでも注目は、前進や回転といった基本動作はもちろん、おしゃべりやダンスなど、劇中そのままの動作が再現できる「U-コマンド WALL・E」(価格:9,975円)。プログラムモードを使えば、好きな動作や効果音を自由に組み合わせて遊ぶことができる。

取材現場ではジム・モリス氏に、実際に動かして遊んでいただいたのだが「これは面白いね!」と、制作者が太鼓判を押すほどの仕上がり。このほか、劇中でウォーリーの憧れの存在となる、美しい未来型ロボット「EVE(イヴ)」を再現した「インターアクション EVE(イヴ)』(価格:6,300円)など、充実のラインナップ。映画を観たあと、あるいは観る前に、ぜひ遊んでみてほしいシリーズだ。