この日最大のヤマ場は追走ベスト8の第3戦

ベスト8は、日比野vs熊久保、上野vs川畑、斉藤vs今村、末永vs古口。第1戦は、2本目で日比野にプロペラシャフト破損のトラブルが出てリタイアとなり、熊久保がまたもラッキーな勝利。ちなみに日比野の「サンライズアイオン86」は、今シーズン限りとなる可能性があるということだ。第2戦の上野vs川畑は、川畑が勝利。上野の「TE3006ソアラ」は前述のとおり今シーズンで引退が決定しており、ここで最後。上野は、来シーズンはBMWの現行車で挑むという。

日比野vs熊久保。1本目は勝負に

2本目で駆動系のトラブル。異音を立てて惰性で走り、ヘアピン出口のアウト側で止めた

上野vs川畑。「TE3006ソアラ」のラストランとなった

そして第3戦、斉藤vs今村。2008年の王者を決める、直接対決の大一番だ。斉藤が勝てばその瞬間に王座決定、今村はここで勝った後に決勝に進出できれば王座獲得だ(斉藤が負けた場合は最高でも5位で13点+「+1点」の14点止まりのため)。斉藤の先行でスタート。斉藤の「チーム22 フナッツ マークII」の最大の特徴は、やはり800ps(今回はさらに1000ps近くまで上げてきたという)。大馬力にものをいわせ、コーナーだろうがストレートだろうがところ構わずホイールスピンさせ続け、常時タイヤスモークを上げっぱなしにできるところ。先行した際は、特に強敵が相手の時は特にその傾向がある模様で、視界を奪うニンジャ戦法ともいうべき走り。今回も、1本目で斉藤は今村の前に濃い煙幕を張っていた。普通ならここで、後追いは視界が奪われる恐怖で引いてしまったり、ドリフトに失敗してしまったりするところだが、今村も「技の引き出し」と呼ばれる職人だけある。インには食い込めないものの、なんとか食らいついていく。しかし、斉藤にアドバンテージだ。攻守入れ替え、今村の先行で2本目を開始。斉藤が今シーズン大躍進を遂げたのが、昨シーズンまでは苦手としていた後追いに開眼したこと。後追いは、いかに相手の走りにシンクロさせられるかもポイントなのだが、斉藤は300Rからヘアピンへの途中の切り返しなども今村に遅れることなくピタリと決め、グイグイと懐に飛び込んでいく。D1風の表現でいうところの「ビタビタに」インに寄せ、斉藤にアドバンテージ。結果、斉藤の勝利となり、その瞬間に今シーズンの王者が誕生した。

続く第4戦の末永vs古口は、末永が勝利。準決勝第2戦では新チャンピオンと末永のバトルが決定した。

1本目は斉藤が先行。今村はやや遅れた

今村先行の2本目では、ヘアピン入口で斉藤が抜きかけ、角度も斉藤が上

2本目のクリッピング。1本目よりも確実に両車間が詰まっている

勝利した斉藤と、破れた今村が審査席と観客の前でお互いをたたえ合う

末永vs古口。一歩も引かぬファイトとなったが、末永に軍配

準決勝は熊久保vs川畑と斉藤vs末永

準決勝まで来るとさすがに誰が勝つかわからない顔ぶれで、第1戦は06王者対07王者。一時のシード落ちから復調しつつある熊久保に対し、シード落ちこそないものの上位に絡めない川畑は、強敵を前に少々焦ったか。熊久保先行でスタートした時、川畑がまさかの追突。熊久保の「YUKE'Sクスコ チームオレンジ ランサー」に深刻なダメージはなかったようで、応急処置で2本目へ突入。熊久保は後追いも決め、決勝に進出した。

熊久保に追突してしまった川畑。ランサーのサイドスカートが歪んで外れかかっている

熊久保vs川畑の2本目。熊久保に凱歌

そして第2戦。新チャンピオンの第7戦の優勝も期待がかかるところだったが、「チーム22 フナッツ マークII」は主に王座を与えたところで力尽きてしまう。なんと、今度は斉藤のマシンがトラブルでスタートできず、末永の不戦勝。この事態があと1戦早く起きていたら、今村が王者だった可能性もありえる。薄氷の戴冠だったようだ。

優勝は復調の熊久保かD1最強ロータリー使いの末永か

決勝戦は、すでに夕闇に包まれつつある時間帯。準決勝の時点で、記者のカメラではこの速度をとらえるには難しい光量となっており、荒い画像しかないがご了承いただきたい。熊久保、末永ともに甲乙つけがたい勝負を展開し、ヘアピンで見る限りはサドンデスにもつれると思われた。しかし、300Rでの飛び出しの角度が2本とも上回っていたということで、末永の勝利。優勝は今シーズン初勝利の末永正雄となった。

戦いが終わり、授賞式とインタビュータイムに。まずは、決勝を戦った熊久保と末永が囲まれる。第7戦を制した末永は、今シーズンの初勝利を喜ぶとともに、応援してくれたファンに感謝の言葉を述べた。その後、シャンパンファイトで大騒ぎに。メカニックのひとりが、10月も下旬で日の暮れた富士スピードウェイで、背中にシャンパンを流し込まれていた。

熊久保vs末永。バトルするにはギリギリの明るさ

バトルが終わって審査席前にマシンが集結

今シーズン初勝利となった末永は、かなり嬉しかった模様

本日の優勝マシン、「トラスト雨宮with TOYO D1-7」

次は、新チャンピオンの斉藤。やはりあのトラブルのタイミングが非常に幸運だったと感じていたようである。来年のことを聞かれ、「来年はもっと凄いことができるよういろいろと考えていますので、期待していてください」とファンに向けてコメント。若き新チャンピオンが、D1グランプリの08シーズンを締めくくり、終了となった。

早くも王者らしい風格漂う斉藤

お立ち台でインタビューの後、シャンパンファイト

王者トロフィー

愛機に腰掛けてトロフィーとシャンパンを掲げる斉藤

D1イメージガールの「D Sign」。彼女たちも今回が最後

TOYOタイヤイメージガール。大きな手をつけて応援するのが特徴