昨年8月に米国で、低所得者に対する住宅ローン・サブプライムローンが破たんしていることが発覚。世界的な金融不安が始まった。発覚当初は、その影響範囲はそれほど大きいと思われていなかったが、同ローンは証券化され、あらゆるマーケット、金融商品にウイルスのように浸透しており、破たんの大きさがジワジワと各金融機関の経営に負担をかけていた。

米国の名だたる名門証券会社がふたつも消滅することになろうとは、誰もが予想だにしなかったことだ。15日にリーマン・ブラザーズが米連邦破産法11条の適用を申請。実質経営破たんをしたことは、バブル時代の同社の黄金時代を知っている人なら、驚きを禁じえないだろう。メルリリンチとともに、今回、2つの証券会社が消えたことは、まさに、日本でバブルが崩壊、山一証券が破たん、日本長期信用銀行・日本債券信用銀行などの名門行の名前が市場から消えたこととも重なる、金融不安ともいえる。

驚きから1日。今日の午前の東京株式市場では、日経平均が反発。上昇幅は200円を超え、1万1,800円台を回復した。市場はいったん、平静を取り戻したかのようにみえる。昨日が底で悪材料出尽くしという見方もある一方、次のターゲット金融機関はどこかといった"魔女探し"をする雰囲気も市場にはあり、まだまだ予断は許されない状況だ。

ただ、今週は世界的に政府や金融当局の重要会合がズラリと予定されている。昨日の中国の利下げの決断は早かったが、各国とも、これ以上金融不安が広がらないよう、さまざまな手を打ってくると思われる。

日本では16日と17日に日銀の政策決定会合が予定されており、米国でも現地16日からFOMCが始まる。米国では、16日にゴールドマン・サックス、17日にモルガン・スタンレーが決算発表をする見通しだ。これらを注視してから、自分の投資方針を考えても遅くはないと思われる。

また、楽天経済研究所チーフストラテジストの大島和隆氏は、今後のマーケットについて、以下のような冷静な判断が必要と、コメントしている。

「今回の状況について、きちんと現状把握をしておくべきです。第一はGMが国からの低利融資を受けられそうだということで、株価が10ドル割れとなっていた水準からすでに30%以上切り返しているということです。米国の景気減速の最大のきっかけはサブプライム問題に違いないですが、諸々含めて個人消費が落ち込んだことがその理由です。日本のそれほど米国における自動車産業の裾野効果は高くはないのですが、しかしミシガン州を中心にデトロイト自動車産業が抱える雇用は大きいです。そこが立ち行くか、行かないかの中心にいるのがGMですから展開を注視しています。第二は原油価格が100ドル割れとなってきたことです。人間の慣れというのは恐ろしいもので、原油価格が100ドルなんて10ドル台で低迷していた頃からすれば天文学的に高い気もしますが、あちこちの論調を見ても『100ドル割れは安い』という様に変化しています。これらは商品価格などにも影響し、着実に価格高騰というネガティブ要因は薄れてきています」。

これをみると、予断は許されないものの、株式市場についての明るい兆しもいずれはみえてくるのではないかということ。長いバブルのトンネルを抜けて、日本市場が復活する際は、まず新興マーケットが盛り上がり、そのあと、オールド銘柄を中心に重厚長大から復活していった。今週はそんな過去の振り返りをしつつ、来週に備えて、じっくり投資判断をしてみてはどうだろうか?