"スピリチュアルな存在"がなぜ奥菜恵だったのか
――奥菜恵さんのキャスティングについては、どのようにして決まったのでしょう?
落合「一瀬さんとぼくで何人か名前を出したうえでオーディションをしました。『リング』の貞子もそうですが、"長い黒髪で白い服を着た女性"というのが今はアメリカではパロディになってしまっていて、出てくるだけで笑いが起きる可能性があるんです。そこで日本の幽霊像のイメージを少し変えたいというところから総合的に判断して、奥菜恵さんに決めました」
――奥菜さんの演技は監督から見ていかがでしたか?
落合「彼女も相当悩んだと思います。この役で難しいところは二つあって、ひとつは化けて出るということの自虐性。化けて出てくるってことは相手に対する断ち切れない愛情がありながら、恨みもあるわけですよね。言うのは簡単だけど、それをしゃべりもせず、感覚でなりきらないといけない難しさがある。僕なんかは想像するだけでもじんましんが出てきます」
落合「そしてもうひとつは、日本とアメリカの幽霊像の違い。日本の場合、死んだ人がそこに立っているというだけで怖いわけですよね。でも西洋はそれだけじゃ終わらずにものを壊したりする。今回はアメリカ人から見てわかる幽霊であるために、時には歩き、ポルターガイスト現象を起こしたりするんです」
――本作の一番の見どころ、監督が一番見てほしいポイントを教えてください。
落合「ただ脅かすだけの映画じゃなくて、サスペンスであり、スリラーであるということ。物語が二転三転して、登場人物の立場まで変わってしまうという展開の面白さ。そして、罪を犯したらそれは一生消えることはないという怖さを体験してほしいですね」
二つの国の異なるカルチャーを見事に融合させた落合監督。インタビューでの淡々とした口調からは想像もつかないが、日米両方に通用する娯楽映画を完成させた裏には、おそらく相当な苦労があったことだろう。スピリチュアル・スリラーという新しいジャンルを引っさげて、次回作でもぜひハリウッドを席巻してほしい。
(c) 2008 Twentieth Century Fox
インタビュー撮影:石井健