――おそらく、この20年くらいの秋葉原の街の移り変わりをリアルタイムでご覧になってこられたことと思いますが、そういった街の変遷を桃井さんは、どのように受け取めていらっしゃいますか?

「秋葉原は中野とよく対比されますけど、中野は心の忘れ物を取りに行く場所なんですよ」

――と、おっしゃいますと……。

「ヲタクだったら経験があると思うんですけれども、中学生ぐらいになると、それまで大事に持ってたロボットのオモチャとかを『ちょっと、捨てないとな』って思う時期とか、ありませんか」

――あります(笑)。

「私は『早く大人になりたい派』だったんですよ。今、みんなJ-POPは『大人になりたくない』って歌詞ばっかりですけど」

――(笑)。

「『トランスフォーマーとか好きだけど、大人にならなきゃダメだ』とすごく思って。でも結局、むちゃくちゃ恋しいんですよ。『あの重たいコンボイが欲しい』ってなったときに、中野に行けばショーウィンドウ越しに再会できる。それが中野ですよ」

――なるほど(笑)。

「逆に秋葉原には最先端のものがあるんですよ。それが秋葉原の魅力だと、ずっと思っていて。例えばウォークマンとか、毎日、何か変わってるわけですよ、秋葉原に並んでるものって。そこが秋葉原のいいとこだし、常に日本の最先端、イコール世界の最先端」

――そうですね。

「だから変わるのは、逆に秋葉原らしいと私は思ってるんですよ。なので、メイドさんのブームとかも私は大納得」

――それは、時代の変化とどうつながるんでしょう?

「学生のころ秋葉原に来ていたのは、例えばインディーズのアイドルのCDが秋葉原に来れば必ず買えるとか、失くしちゃった特殊な形のアダプタがラジオセンターに行けば必ずある、とかだったんですよ」

――はい。

「そういう、なかなかない物が秋葉原に行けばある、というのがいいところだったんですけど、今、ネットのオークションで家に届いちゃう時代じゃないですか。そう考えると特殊な物があるというのは、珍しいことじゃなくなっちゃったのかもしれない」

――そうですね。

「そうなったときに『ネットで買えないものって何?』っていったら、サービスは買えないわけですよ。メイドさんのサービスはネットで買えないし、アイドルのイベントの楽しさもネットでは買えないですよ。だから、変わり続けても全然オッケーですよ」

――といいつつも、一抹の淋しさもおありになるわけですね。

「私が中学・高校生ぐらいのときって、秋葉原に来ている女の子なんていなかったんですよ。でも、今は女の子にも人気じゃないですか。量販店とかレストランとかできて。だから、モテなかった幼なじみの男の子が高校に入ったらモテちゃって、みたいな(笑)」

――(笑)。

「『なによ、アキバ君。いい気になっちゃって』みたいなのはあります。『私だけのものだと思ってたのに、なんかアキバ君、イケてる感じになっちゃったな』っていうジェラシーみたいなのもあるんですけど(笑)。でも、基本的にアキバ君が幸せなら……(笑)」

――(笑)。

「『だって、わたし、アキバ君のなんでもないんだからね。私、ただ、アキバ君とは家が隣だっただけだし』(笑)」

――ツンデレですか(笑)。

「そういう感じに、今なってるんですよ(笑)」