東武鉄道は、6月のダイヤ改正より、東京副都心の池袋と埼玉県寄居町・越生町を結ぶ東武東上線(85.9km)で座席定員制列車「TJライナー」の営業運転を開始する。これに先駆けて、同列車に充当される新型車両50090系が21日、公開された。
「TJライナー」は、同路線の夕方以降の池袋発下り列車に設定され、平日は小川町行き2本・森林公園行き4本の計6本、土休日は小川町行き2本・森林公園行き2本の計4本で運転される。座席定員制を採用し、同路線の「急行」よりも停車駅を少なくすることで、快適性・速達性を高めた列車となっている。
池袋発小川町行き「TJライナー」の途中停車駅は、ふじみ野、川越、川越市、坂戸、東松山、森林公園、つきのわ、武蔵嵐山の8駅で、池袋からの乗車には普通乗車券や定期乗車券のほかに、着席料金300円が必要となる。また、ふじみ野から先は着席料金が不要となるので、通常の立席で乗車することもできる。座席数は462席、そのうち発券される席数は、「優先席」などを引いた408席となる。
今回、報道陣に公開された50090系車両は、同路線で最新車両となる50000系がベースで、10両編成4本が新造された。注目したいのは、クロスシート(進行方向に向いた席)とロングシート(窓を背に横一列に並ぶ席)に転換できる座席だ。「TJライナー」時は、クロスシートとなり、座席を180度回転させることによって、2人向かい合わせ4人席にすることもできる。また、「TJライナー」以外で運転される場合、シートはロングシートとして固定されるという。
実際に中に入ってみると、クロスシート時のシートピッチは、特急車両のそれよりも大きくとられ、大柄な乗客でも余裕を持って着席できることがわかる。ホワイトを基調とした清潔感のあるシンプルなインテリアが優しい。シートは東武鉄道をイメージするブルーに統一されている。
すでにJRや大手民鉄で座席指定列車が運転されているが、「TJライナー」は、座席"指定"ではなく、座席"定員"であることが特徴的だ。特急車両を使用したJR東日本の「中央ライナー」(東京・新宿~八王子・高尾)のように、乗客が指定された席に座る列車ではなく、定員になるまで着席整理券が発券される「TJライナー」では、乗客は空いている席を探して自由に座れる。同社広報部課長補佐・新家章男氏は、「東上線の沿線の性格上、観光資源としての魅力と、通勤のお客様のニーズのバランスを考慮し、特急ではなく座席定員制列車を導入することを決定しました」と語る。同社関係者たちが口を揃えて語っていたのは、座席を指定して管理するシステムを導入すると、莫大なコスト増加につながるということだった。ニーズとコストの真ん中を、いいとこ取りした"東上線オリジナル"の列車の登場と言えるだろう。
ちなみに50090系10両編成1本の価格は約12億円。同系となる通勤型50000系は1本約10億円。およそ2億円ぶんが新サービスのために充てられたことになる。
池袋と川越を結ぶ路線には、東武東上線のほか、JR埼京線、西武新宿線が走っている。東武の新サービス「TJライナー」の運行は6月から。同時に東京メトロ副都心線も開業し、東武・西武・東京メトロ・東急の各社を介して、新たな都心縦断ルートができあがる。JR東日本の「湘南新宿ライン」などとともに、郊外から都心へのアクセスはさらに進化し続けている。